第2話 豪運少女と不憫な男

祝福を受けどう使うか悩みながら教会を出ると先に祝福を受けた3人が俺を出迎えてくれた。


「あ!アズマも出てきた!これで4人揃ったことだしどんな祝福受けたか見せ合いっこしようよ!」


「そうしようか。僕とアズマがいれば魔法やアイテムについての解析も多少はできるしね。」


「おう!俺はそういうの苦手だからありがてえ!」


「ほんじゃ誰からいく?」


俺のは解析とかしてると長くなりそうだからできるだけ後がいいんだが。


「じゃあ最初は私から!私のはジャジャーン!通常型の火魔法とフライパンだよ!」


え?大当たりじゃないか?


「ティオラ見事に欲しいものもらってない?僕たちみたいに戦闘職になりたい人がもらったなら泣いていいと思うけど料理のお店開く上でその2つならとてもいいと思うよ。ね、アズマ?」


「ああ、俺もそう思う。火魔法がどれだけ料理に使えるか分からんがそれでも心強いことには変わりないだろ。」


「なあティオラ、ちょっと今ここで使ってみてくれよ!」


「いいよー!ほいっ!!」


ティオラの掛け声とともにボッと火の玉がティオラの手元に姿を現す。


「「「おぉー!!」」」


「見て見て!できたよ!頭の中でイメージした通りの火の玉!」


「それふよふよできるか?」


「やってみるね!」


ティオラが火の玉に手をかざして手を上下に動かすと、それに着いていくように火の玉も空中を移動し始めた。


「できたー!!」


「ティオラ、それ手かざしてないとできないのか?」


正直そのためだけに片手塞がるのは致命的だと思うんだが。


「え?これ?できないことはなさそうだけど練習がいると思うー。」


「ま、ティオラの検証はこのあたりにして次いこうか。他のも気になるしね。次は...そうだね!アズマいこう!」




ここで俺か。つーかマズちょっとテンション上がってないか?気持ちは分かるけどな。


「俺のちょっと複雑そうだから後に回して欲しいんだが...」


「いいよいいよ!どうせみんなの見るんだし!私もアズマの気になるから!」


「俺も複雑ってのが気になるな!早く見せてくれ!」


「そこまで言うなら見せるか。ほいよ!俺のはこの籠手と通常型の金属魔法だ!」


これでどうやって攻撃をするのかまだあんまり分かってないけどな。殴る?無茶を言うな。


「え、すごい!アズマ殴って戦うってことじゃん!!」


「漢気に溢れたいい武器だな!」


「籠手は近接として金属魔法はどう使うんだろうか...?」


やっぱり?やっぱり殴るしかない...?


「流石に殴って戦うのは避けたいんだが?」


「それはアズマの魔法次第だよ。金属って名前からして近接っぽいけど。」


「使ってみりゃ分かるだろ。アズマ、試しに何か作ってみてくれよ。」


「え、そんな急に言われても。何作ればいいんだよ。」


「何でもいいんじゃない?じゃあ10センチくらいの鉄の玉を作ってみてくれない?」


「分かった、そんくらいなら作れると思うぞ。」


玉にするだけならイメージするのも簡単だしな。


そう考え手のひらに玉が生み出されるようにイメージする。


すると手のひらに鉄の玉が生み出され、自分の中にある魔力を感じると共に...


「あ!出てきた!」


「手から生えてきたかのような出方だったね。」


その半分近くが失われる感覚に襲われた。


「は?」


「どうしたアズマ?」


「めっちゃ魔力持ってかれた。」


「そんなに?具体的にはどれくらい使ったの?」


「体感4割くらいだな。だいぶ使ったわ。」


「えぇ?アズマそれで4割使うの?戦えなくない?」


「まあまあティオラ、結論はもうちょっと検証してからにしようよ。アズマはその玉操作したり変形させたりできる?」


操作?浮かせたりできるかってことか?それはどうやってやりゃいいんだよ。


「なあティオラ、さっきどうやって火の玉浮かせた?」


「え?普通にふよふよってイメージしたらふよふよしたよ?」


イメージ?鉄の玉イメージするだけでふよふよしてくれるか?空中でゆらゆらしてても不思議じゃない火の玉とどっからどう考えても浮かぶ未来の見えない鉄の玉じゃ色々と違うと思うんだが。


「ほらアズマはそうやってすーぐ考えるんだから!実践だよ実践!やってみて損はないでしょ?」


「それもそうか。ならやってみるからちょっと離れててくれよ。」


何か危険なことが起こらないとも言えんからな。俺は3人が離れたことを確認して鉄の玉へと意識を向ける。ふよふよする鉄の玉をイメージして...


「ふよふよ...ふよふよ...」


「「「......」」」


「ふよふよ...ふよふよ...」


「「「......」」」


「あほらし、止めよ。」「だね。」「おう、止めとけ。」


「えぇ!?なんで!?」


「できる気がしねえ」


無理だろこれ。なんでティオラは浮かせれたんだよ。やっぱ属性で何か違ったりすんのかな?


「浮かせるのは無理だとして他には?さっき言った変形とか。」


「あ、それ試してみるか。テニトちょっと玉貸してくれ。」


「あいよ。」


テニトからさっき俺が生成した鉄の玉を貸してもらい形を変えるようにイメージしてみる。すると


「おお!?」「え!?すご!」「それすごいね!」


「できたな...面白いわこれ。」


見事変形させることに成功し箱の形になった鉄がそこにはあった。


「本当に面白い魔法だねこれ...。アズマ、魔力はどうだった?」


魔力?そういえば持ってかれるような感じが全くなかった気が...さっきと比べて減った感じもないし。


「あんまり使ってないかもしれん。もう1回試していいか?」


「いいけど俺ちょっと家帰って来るわ!そのままやっててくれ!」


ん?テニトのやつ急にどうした?なんか忘れてたことでもあったんか?


「まあまあテニトのことだしすぐ帰って来るって言ってたから検証進めてようよ。」


「そのままやってとも言ってたし再開しよう。」


「あ、待って!」


「ん?」


今度はティオラか。


「どうした?」


「アズマ変形させるときずっと鉄を触ってたよね?次は触らないでやってみてくれない?」


「それいいね、今度は元の玉の形に戻すようにやってみてよ。」


なるほど、次は鉄に触らずにか。確かに試してなかったやつだわ。


「よし、じゃあ試してみるからまたちょっと離れてくれ。暴走したりすると危ないしな。」


「りょーかい!!」「おっけー。」


2人がもう1度離れたことを確認してから鉄の箱を触れずに玉に戻すようにしてみるのだが...



なんか思っているように変形できんな。全く変形できないわけじゃないけど...きれいな玉にできるかこれ?


そう、先ほど鉄に触れていたときとは違って圧倒的に変形し辛いのだ。結局その後もう少し粘ったのだがきれいな玉にすることはできなかった。



「だいぶ不恰好な玉になったね。これでもちゃんと元に戻す気でやったんでしょ?」


「ああ、それもだいぶ真剣にな。」


まさかこんなに苦戦すると思わんかったが。ただ全く変形できないわけじゃなかったから触れてないと変形できないわけじゃないと。だとしても今は俺の練度が足りてないのかそもそも向いてないのかが分かんねえな。もし練度の問題ならこういう練習も必要になってくるか。


「じゃあ今度はしっかり触って玉にしてくれる?たぶんアズマ魔力を使うかどうかってとこ忘れてたと思うし。」


「あ。」


言われて気づいたわ。そういや変形させるのに集中して魔力の消費に意識割いてなかった。


「んじゃ今度は魔力に意識を割いてやってみるわ。」


俺は不恰好な鉄の玉に触れながらきれいな鉄の玉をイメージする。するとでこぼこが目立っていた鉄の玉は生成したときと同じようなきれいな玉に戻り魔力は...


「やっぱりだ、感じとれるほど消費されてない。」


「それじゃやっぱりアズマは金属を変形させるのにほとんど魔力を使わないで済むってことなの?」


「そうかもしれないね。さすがに全く消費しないってことはないだろうし本当に消費量が少ないんだと思う。」


変形に使う魔力が限りなく少ないとなるとこれをメインに戦うのがいいのか?ただそうなると籠手を全く生かせない気が...


「おーい!!アズマー!!」


そんなことを考えていると家に帰ると言っていたテニトがシャベルを持って戻ってきた。もしかしてそれ取りに帰ったのか?


「家に帰ってシャベル持ってきた!これ前使ったときに先がちょっと欠けちまってよ!ちょうどいいと思ったからその金属動かすやつで直してくれねえか!」


「確かにそれは金属魔法の正しい使い方かもね。壊れた道具の修復か...面白いこと考えるね。」


「ああ、俺もそう思ったわ。どうやって戦いに生かすかしか考えてなかったからな。本当に面白い考え方だと思うぞ、テニトが考えたとは思えないくらいに。」


「だろ?俺もいいこと考えたと...今俺遠回しにアホって言われなかったか?」


「いやほぼ直球って言っていいレベルだったよ?」「だね、逆になんであれを遠回しだの思ったの?」



「さ、テニト弄りはこの位にしといて。テニト、このシャベルの先直すとしても別に鉄の量が増えるわけじゃねえから掘るところ一回りくらい小さくなるけどいいか?」


「それはしょうがないし全然いいぞ!」


テニトもそこは気にしないということでシャベルの修復に取りかかるためシャベルに触る。


「ん?」


「どうしたの?アズマ?」


「魔力減ってんだけど。」


さっき変形させたときより明らかに減ってるな。鉄を生成したときみたいにごっそり持っていかれてるほどではないが。


「え?どれくらい減ってるの?」


「めちゃくちゃ減ってるってわけではない。たださっきと違って減ってるのが明確ではあるな。」


「テニトが変なシャベル持ってきたんじゃないのー?」


「それはねえよ!?家にそんな怪しいもんないくらいティオラも知ってるだろ!?」


「ホントにー?」


「本当だって!」


「見当違いなあの2人はほっといてマズ、お前はどう思った?」


「考えられるのはやっぱりアズマが生成した金属とそのシャベルに使われてる金属の違いかな。自分で生成した金属は変形するのにほとんど魔力を使わないけど他の金属の変形には魔力を使うってのが有力だと思うよ。」


「俺も同じ考えだわ。そうなると戦い方がだいぶ狭まるな...。大量の金属を準備してそれを操って攻撃するのはかなりの魔力を使うと思う。だからといって操るのに魔力を使わない金属を自分で生成したとしても量が絶対足りねえ。それに...もうそろそろだろ。」


「え?あーまあね。」


そう言って俺とマズは未だにテニトとワイワイやっているティオラの持つ鉄の玉に目を向ける。そしてそのまま20秒ほど見ていると...。


「あっ、消えちゃった...」


手にあった玉が粒子となって消えてしまったのだ。


「やっぱ消えるか。」


「だね、別に期待してたわけでもなかったでしょ?」


「ああ、当たり前だろ。魔法で生成されたものはおよそ5分経過すると消えてしまう。俺たちですら知ってる常識だ。」


これがあるから事前に大量に鉄を生成しておいて操って戦うというのもできない。もちろん売って金儲けも。


「そうするとアズマは必然的にその籠手を使わざるを得ないということになるね。」


はあ...やっぱそうなるよな...。リスク高えなぁ...。


「そんな落ち込まないで!私いいこと考えたからさ!」


「なんだよいいことって?」


つーかティオラ話聞いてたのか。


「その籠手から鋭いとげを生やして殴ればいいんだよ!!それなら籠手に元々ついてる小さいとげよりも威力も出るでしょ?」


「マジで言ってんのかよそれ。」


「大マジだよ!ね、マズ!良さそうだと思わない?」


「とげをどれだけ上手に扱えるかは大事になってくるけどそれでも意外といい使い方かもね。」


「殴る勢いで急所にとげをブッ刺すってのはあんま簡単じゃねえぞ。」


「それはアズマが鍛えてどうにかするしかないね。でも現にそれ以外に良さげな戦い方はないよ。それに繊細なことを豪快にやる。アズマらしくていいんじゃない?」


煽ってんのかお前。


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