宝石オパールは語る_9 ~闇夜に光るホタル~

色石ひかる

第1話 問題編

 私は倉木くらき彩香あやか、20歳の女性。ルースコレクター初心者の社会人。ルースは宝石の石単体で裸石ともよばれている。中でもオパールが大好きだった。


 宝石や鉱物を販売するミネラルショーにきた。最初にオーストラリア産オパール専門店へよった。店主の川畑かわばた芽衣子めいこさんを見かけた。20代後半のお姉さんだった。


「彩香ちゃん、今回も来てくれてうれしいです。思う存分ルースをみてください」

「すてきなルースとの出会いが楽しみよ。気になるところがあれば質問するね」

 展示されている手前のルースから眺めた。今日もオパールを堪能できる。


 最初に興味をもったルースはブラックオパールだった。色合いやかがやきを堪能してから、ボルダーオパールを眺めた。まるで絵画を思わせるような、芸術的なルースが多くある。ホワイトオパールのやさしい色合いも好みだった。


 となりのガラスケースに移動した。珍しいルースに目が留まった。

「たまに見かけたけれど、メキシコ産ルースもあるのね」

「オーストラリア産オパール専門店ですが、少しだけほかの産地もあります」

「メキシコ産以外もあるの?」


「ほとんどがメキシコ産ですが、エチオピア産もわずかに販売しています。ただ今は手元にないので、オーストラリア産以外ではメキシコ産のみです」

 オパールといっても、いろいろな産地があるみたい。


「あまりメキシコ産は見なかったから、今日はじっくり見てみるね」

「興味があるルースがあれば、ルースケースから取り出します」

 芽衣子さんにお礼を言ってから、視線をメキシコ産オパールへむけた。


 全体的に赤色か青色のルースが多かった。ただ透明感があって、花火や紙吹雪を見ているような感じ。小さな色が顔を動かすたびに別の色へと変化する。オーストラリア産とは異なる幻想的な表情だった。


 色の変化を楽しみながら、となりのルースへと視線をむけた。さきほどとは別の意味で驚くルースだった。オパールではほとんど見たことのない多面体カットで、さらにクリスタルのような透明感があった。顔を傾けても色の変化はない。


「芽衣子さん、この透明なルースには色が見られない。これもオパール?」

 クリスタルのようなルースを指さした。


「少し変わっていますがオパールの仲間です。見た目以外にも特徴があります」

「私の知らないオパールは、まだまだたくさんありそう」

「オーストラリア産とは異なる珍しいルースです」


 もう一度、透明なルースに視線を戻した。何度みても不思議な感じだった。透明なクリスタルのルースと言われても納得できる。

「特殊なオパールなのね。何が変わっているのか知りたい」

 芽衣子さんの発言をまった。

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