第2話
「仕方ねえだろう?フルーツを乗せた荷台が魔獣に襲われたんだからよぉ、それも2回だぜぇ?文句があるなら騎士団に行って魔獣を退治してくれよ。俺らは命からがら逃げだしたんだからな!」
運搬やのおやじはすり傷はあるものの五体満足で逃げ出せたようだ。外国産のフルーツは香りも強く、森に住まう魔獣も好物なようである。ただいつもならば数人の護衛で事足りていた事が今年に限り、魔獣が多く出現して荷台を置いてくるしかなかったと説明している。
「騎士団には報告しとくよ…とにかくフルーツを持ってきておくれよ」
「今、近くの農場に当たらせているよ」
「頼んだよ」
「期待しないでくれ」
「ああ、困ったねぇ」
舞踏会には珍しい高価なフルーツが付き物だ。お酒やフルーツをつまみながら男女が見定める場でもあるのだから。
「ウィスタリア、今日はもう上がりな。フルーツがないなら今日は仕事がないよ」
「はぁ~い」
「困ったねぇ」
マリアが困った困ったと言いながら、城の調理長や執事頭と相談すると言って出て行った。
日付は刻刻と過ぎている。それでもマリアからフルーツの話はない。
「マリア、フルーツは確保出来たの?」
出来ていないと分かっていても聞いてみる。
「そんな訳ないだろう?ああ、あと3日だっていうのにリンゴ、オレンジとレモンくらいしか用意出来てないんだよ。レモンをハチミツ漬けにするから手伝っておくれ」
マリアはここ数日、街までフルーツを求め走り回っていた。リンゴやオレンジ、レモンは珍しくもなく市場に行けば普通に売っているフルーツだ。普段であれば舞踏会に出すものではない。
「はぁい。あ、マリア。城に畑があるでしょ?その畑をベゴニア様が借りたいと言われているの。マリアの許可がいるって言われていて…ベゴニア様の所に来て欲しいって」
「は?」
畑がなんだってっと言いながらマリアはベゴニアの所に向かった。ウィスタリアはその間にレモンをハチミツ漬けにしていく。
城の裏には花や薬草が栽培されている。その一角に畑があるのだがもしもの時の為に少しの野菜を作っていた。
マリアは訳が分からず、ベゴニアがいる城の裏とは別にある植物園に向かった。
「ベゴニア様、畑が必要なようでどうされましたか?」
「ああ、女中頭のマリアだっけ?」
「はい、そうですが、植物園の管理者であるベゴニア様が一体あの小さな畑になんの御用で?」
「ああ、実は以前からちょっと実験してみたい事があったから丁度いいなって」
「丁度いいとは…?」
「それで畑はすべて借りていいの?今は野菜を植えてなかったみたいだったけど。まぁ実験が上手くいくか分からないから詳細は伏せるよ」
「はあ…」
マリアはフルーツの事で忙しいのだ。そんなどうでもいい理由で呼び出されて貴族とは呑気なものだと思いながら、戻っていった。
「舞踏会が等々明日になっちまったよぉ、フルーツが確保出来てないのにねぇ、もういっそ酒だけにしたらいいのにねぇ…」
執事達が慌てているのを見てマリアも事の重大さが分かって来たようだ。
「ねぇ、マリア。ベゴニア様が畑をどうのって言っていたのはどうなったの?」
「あっそうだった。なんか実験するみたいな事言っていたね。こっちはそれどころじゃないんだけどねぇ、ウィスタリア、あんたが畑に見に行ってもおくれ。私は料理長と相談しないと…」
「マリアも一緒に行きましょうよ。どうせフルーツがないとする事は無いわけだし、焦ってもしょうがないでしょ?」
「あんたも呑気だね。まぁそれもそうだね…」
二人は畑に行った。
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