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snowdrop

第1回のお題「本屋」

「本屋」と聞いて連想される話は三つ。

 本屋を舞台にしたもの。

 本屋にまつわるもの。

 本屋の思い出。

 カテゴリーなら、恋愛もの、ラブコメ、SF、ホラー、ミステリー。ファンタジーもあり得る。

 実際本屋で働いている、もしくはバイトした経験があれば書きやすい。思い出なら、古き良き時代を懐かしむものや、本屋にまつわる失敗談などが考えられる。

 これらは誰もが思いつく話なので、あえて外さなければならない。もちろん、秀でた作品が書ける自信があるなら選べばいい。

 そもそも字数制限が777文字以上だからといって、長編を書けるほど時間に余裕はない。なので多くの人が短編を書くはず。

 あえてカクヨムが「777文字以上」としているのは、一発ネタやショートショートではなく、読み物として楽しめる短編を求めての事だろう。

 一番書きやすいのが体験談や思い出話。

 だが、よほど珍しいものでなければ人の目を引くのは難しい。


 わたしはよく、本屋のはしごをしていた。

 自転車に乗って、ぐるりと本屋巡りをし、読みたい本を見つけては図書館で探す。どうしても手元に置いておきたい本は別だが、そうでないものは借りて済ます。県立や市立、町立、橋を渡って隣県の図書館へと足を伸ばせば多くの読みたい書籍が読めるためだ。ほしいからと購入していたら、本に部屋の占有権を奪われかねない。


 この話を当初思いつくも、図書館ネタな気がして却下した。

 本屋巡りができたのは、近場に書店がたくさんあった頃の話。

 現在、本屋は大型ショッピングモール内にしか存在せず、はしごをするなど無理なのだ。あの頃はよかったと締めくくれば読後感が悪く、高齢者でもないのに年寄りじみてしまう。

 説教と自慢話をしても気持ちいいのは本人だけ。ウザがられるだけなのだ。

 今の本屋の話を書き、なにか一つでも「読んでよかった」と思えるものがなければならない。でなければ、誰が他人の話に興味を持つものか。

 斜陽産業の出版業界の現状を調べ、本屋を経営するにはどれくらい費用がかかるのだろうと疑問が浮かぶ。

 経営にはどんな困難があり、なぜ閉店に追い込まれていくのかを調べるうちに、試行錯誤しながら続けている店舗に目が行く。

 現状を打破するには、無茶だけど可能性の高い方法を選択していくしかない。そんな内容にすれば、読後わずかに希望が持てるものになるのではと書きはじめた。


 以前、百人の客を招くには百とおりの方法をしよう、みたいな啓発本を読んだことがある。

 店を開けているだけで客が入る時代は、随分前に終わっている。

 本屋のみならず、あらゆる業種、カクヨムをはじめとするネットで小説を公開している人たちにも同じことがいえるだろう。などと思い至りながらも、そこまでは盛り込めなかった。

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