第4話 本当に『好き』?
最近はだいぶ学校にも慣れてきた。
全科目の授業とも、とりあえず初回は終わってるしね。
しかも、まだ最序盤だからどの授業もかなり簡単な内容ばっかりで、ちょこちょこ話聞いてノート取っていれば後はぼーっとしてても付いていけてる。
そんな感じで今日も両手で頬杖をついて授業を受けていると、急に背中をすうっとなぞられる感触。
あまりに急だったのでびくっと反応してしまったけど、これは
私が大して反応もしないで、さっきまでと同じようにしているとまたなぞってきた。
今度は直線ではなくて、どうやら文字みたい。だいぶ単純な動き。
んーと……『ス』……『キ』……かな。
あまりに子供っぽくて、単純過ぎて思わず笑みがこぼれる。
いや、どっちかと言えばニヤけてる……なのかな、千賀本人に見られる訳じゃないからどっちでもいいけど。
というかそういえば小中高と数えて今で学生生活10年目だけど、よく考えてみれば同じクラスで席が前後って意外とあるようでないんだよね。
だからこういう子供っぽいやり取りもすっごい久々で、懐かしいような新鮮なような感覚を覚えながら、なぞられ続ける……ってさっきからずっと『スキスキスキ』って一生なぞられてるんだけど!?
女子小学生とかがたまにやる、好きな子の名前とかをノートに書きまくったりする黒歴史じゃないんだからさ!?
流石に長いよ!と思った私は振り返りながら、小声を聞き取ってもらいやすいよう口元に手を添えて告げる。
「もう、分かったから」
そう言うと、千賀は一瞬びっくりしたような顔をしてから──。
あろうことか唇が一瞬触れ合うキスをしてきた。
「ばっ──」
か!このばか!と授業中に声を発しそうになったのを堪えながら、ぎゅんっと前に向き直って顔を伏せる。
流石に私ら後ろの席だし見られてないよね!?急になに!?
心臓はバクバクうるさいし、顔ももの凄く熱い。
今までこんな大胆なことする子じゃなかったのに(いや入学早々されたな?)どうして急にキスしてきたのか気になった私は『なんでいきなりキスしたの!』とメモに書いて後ろに回す。
……数秒経って、メモを読んだであろう千賀が、ガバっと顔を伏せたであろう音が聞こえてくる。
3分くらい経ってから、背中をつんつんされてようやく返事が来た。
『てっきり周りに見えないようにだったらキスしてもいいよってことかと思った。ごめん』と。
待って待って、そもそもなんでキスしていいに思考が行きついた!?
そう思って急いで返事を書き始めた私はふと気付く。
最初に私の背中に『スキ』となぞってきて、その後ちょっとしてから『スキスキスキ』ってなぞってきて……。
いや、後半は私余計なこと考えてたからどうだったか曖昧なんだけど……もしかして『キス』だった、とか?
いやいやいや、でもそんなのミスリードって言うか手口が悪いというか!
そんなのもうちょっとちゃんと確認とってからするべきでしょ!私ただ振り返っただけなんだし!
……ちなみに千賀視点だとどうだったんだろ。『キス』って背中になぞってたら、『わかった』って言いながら口元を隠して私が振り返ってきたわけで。
あー……じゃあしょうがないかぁ……な訳あるかあ!
あれで『見えないように隠してるからキスしてもいいよ♡』になる訳ないでしょーが!
次の休み時間……は流石に周りに聞かれたらまずいので、放課後お説教だ!
◇
という訳でいつもの帰り道。
「あの場でキスしていいよになる訳ないでしょ!?」
「いや、ほんと自分でもあり得ないなって思ってる。ごめん……」
いきなりしおらしくされると怒りゲージがぐんぐん減る。
「いや、まぁ、その、良いんだけどさ」
めちゃくちゃ歯切れの悪い許し方をしてしまう。
「ていうか、千賀ってそんな都合の良い解釈するタイプだった?」
「そんなはず無いとは思ってるんだけど、キスしたい気持ちが溜まってて溢れてきてたというか……」
なにそれ、初めて聞いた。我慢してたのかな。
「時と場さえ弁えてれば、別に我慢しないで好きなだけしてもいいのに」
「いや、今回は単にこないだほっぺにした分で気持ちが上がったままだったというか……」
「ほっぺ?」
ほっぺにされたことあったっけ?……ないよね。
さては私が先に寝たらキスしてるな?(大正解)いじらしい幼馴染め、可愛いなこの!
「あ、いやなんでも。それより好きなだけしていいって本当に言ってる……?この後帰ったらしてもいいの?」
「あ、好きなだけは流石にウソ。するのは良いけど、私がもういいって思ったら止めるから!」
結局、この日は寝落ちるまでキスした。
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