第2話 それくらいは付き合うとか関係なくいつだってしてるよ!?

◇前書き

え~、概要には「1000~2000字を目指して」と書いてたんですが、2話目にして3500字オーバーになりました。

しかも「基本2人しか出てこない」とも書いてたのに、今回たくさんキャラが出てきます。詐欺師かな?

まぁ1話目の流れを完結させるためなので!3話目からは当初の概要通りの話になります!

ではよろしくお願いします!

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「誠に遺憾だけど」


 入学式の帰り道。千賀ちかが自己紹介の時に爆弾発言するもんだから、明日からどうしようって考えてた。


「政治家みたいなこと言ってる。彩朱花あすかもんね」

「民主主義的には窮地に立たされてるけどね!」


 きっとこれからクラスメイトに白い目で見られて、根も葉も無い噂を流されて、もしも街頭演説のように『付き合ってません!』と訴えかけたところで、誰も応援してくれないんだ!って挫けたくなるとこだけど。


「それで、どうしたの?」

「今日ね、千賀がいきなりあんなこと言い出したでしょ?」

「あれさ、弁解するって口実でクラスの人に話しかけて友達作れるんじゃないかなって思って」

 我ながら名案だと思う。ピンチをチャンスに!ってやつ。


「そんなの必要ないんじゃない?」

「高校デビューに友達が必要ないことあるかぁ!」

「あ、弁解の方もね」

「私と既成事実で付き合おうとしてる?」

「ソンナコトナイヨ」

「……」


 千賀は表情の起伏があんまりないタイプだけど、白々しい態度が手に取るように分かる。


 1つ目の質問で答えを導いた(と思われる)、アキネイターをも上回る頭脳。私頭いいかもしれない。


「とにかく、明日はちゃんと誤解をといて、友達作り頑張るから!」

「しょうがない、見守っておくね」


 この夜、私はスマホのメモ3行にも及ぶ『誤解を解きつつ友達を作る作戦』を練り上げ、眠りについた。



 翌日、登校と共に早速を作戦を実行に移す。

 ターゲットは……最初からグループが出来てるとこ!なるべくコミュ強っぽい人がいるとベスト。


 クラスの前の方で割と仲良さそうに話してる3人組を見つける。ちょっと大人しそうな2人とギャル……とまでは行かないくらいの陽キャ1人だ。


「おはよう!」

「あ、おはよう。えぇと……」

「私は佐倉彩朱花さくらあすかだよ!!それとこっちは汐留千賀しおどめちか!これから1年よろしくね!えっと、みんなは中学から同じ学校だったの?」


 探るように行き過ぎると警戒されちゃうから、まずは無難な話題でアタックする。


「そうだ、佐倉さんだ。ごめんね〜まだ名前覚えられてなくて。私は山井優やまいゆうで、こっちが寺谷空てらたにそら、そっちは浅田美幸あさだみゆき。よろしくね。私たちは3人とも同じ学校だったよ」

 山井さんはなんていうか、ツンとしてないタイプのクールな感じの子。


 めっちゃ丁寧に自己紹介してくれる。良い人そうだ!


「てか昨日の自己紹介、超ヤバかったじゃん?あたし同性カップル初めて見たし!って言うかいきなりぶっちゃけるの勇気あり過ぎでしょ!」


 いかにも陽キャっぽい雰囲気の寺谷さんが、いきなり切りこんでくる。

思った通り、人見知りしなさそうなこの子が即座にこの話題に触れてきてくれた。

 ここまでは作戦通り。これが私が頭がいいと周りから(千賀からのみ)言われる所以だ。


 多分気になってるクラスの人たちもきっと聞き耳を立ててると思う。ていうかお願いだから立ててて。

まとめて誤解を解くから!


 と思ってたら。

「そこはやっぱり、愛の力、ってやつかな」

 千賀が恥ずかしそうに会話に混ざる。このばかぁ!っていうか!

「今日は見守るんじゃなかったの!?」

 私も私で、反射的にツッコミを入れてしまう。ちゃんと話題に乗らないと。


「私たちはね、別に同性同士だからって偏見とか差別とかしないからね。むしろ微笑ましいなって、応援してるね?」

 物腰柔らかそうな浅田さんが理解を示してくれる。気持ちは有難いけど、違います!


「あのね、それ実は千賀が場を和ませようと言っただけで、私らはほんとはただの幼馴染なんだよね。だからカップルでもなんでもないんだよ。千賀が昨日言ってたことは忘れてさ、3人と友達になれたら嬉しいな〜、と思って!」

「そうなんだ?にしては……ううん。まぁなんにせよ、こちらこそ友達が出来るのは嬉しいから、仲良くしよう」

 ん?なんか微妙に引っかかってるような?ま、一応仲良くはしてくれそうだし、ヨシ!


「あたしもよろしく!応援してるからさ」

 バチッとウインクする寺谷さん。

「うん。付き合ってるかどうかは置いといてね、2人はきっとには違いないと思うから、陰ながら推してるね」

 浅田さんもすかさず乗ってくる。この子たち、雰囲気バラバラなのに息ぴったりそうでいいなぁ!


「それはそうなんだけど、推すってなに!?」

 3人の言葉がどことなーく引っかかる。私の説明が足りてなかったりする……!?


「やったね、友達出来たね」

「うん……?うん」

 千賀が、『満足した?』みたいな感じで微笑んでくる。

 なんだろう、誤解も解けて?友達もできて嬉しいはずなんだけど、この生暖かい空気が気になる……



 それからというもの、毎朝3人に挨拶したりたまに話しかけたりしているうちに、少しずつクラスのみんなと挨拶を交わすくらいは出来るようになっていった。


 ……しかし、入学から5日ほど経った今日の昼休み。

先にお弁当を食べ終わった千賀がトイレに行ったので、私が1人でスマホを見ながら食べているとだ。

 離れた席でコソコソと2人で話している男子が『はやく行けって』みたいなやり取りをした後、その片方──伊藤いとう君。浅田さんのすぐ後ろの席で、男子2人でよく喋っている。浅田さんが会話に混ざってるところも見たことある──が私の方へ歩いて来た。


「あ、あのさ」

「?……どうしたの?」


 珍しいイベントが起きたもんだから、他の人も何人かこっちを見てる。

 伊藤君は少し身を乗り出して耳打ちするように


「佐倉と汐留ってさ、結局付き合ってんの?」

と言ってきた。誤解、解けてない……!?


「つ、付き合ってないよ!ほんとに!ただ仲が良いから一緒にいるだけだって!」

 手をぶんぶん振りながら否定する。


「知ってるかは分かんないけど、一応前に否定はしたから、あんまり噂とか広めたりしないでくれたら嬉しいんだけど……」

「あ、すまん!それは聞いてたんだけど……だってさ、女子って男子よりも結構スキンシップが多いのは知ってるけど、それにしても2人って絶対その範疇を超えてずっと感じするからさ……」

「えっ?」


 思わず素っ頓狂な声が出た。私、普段通りにしてたんだけど……。

 意外過ぎる理由に私がぽかんとしていると。


「……いっつも朝に教室に入ってくる時とか、移動教室の時、そういえば入学式の移動の時とかも、立ってる時ずーっと汐留が腕絡めてきてるだろ?あとは休み時間とか、佐倉ずっと汐留の机の方向いて手繋いで喋ってるし、昼飯食ってる時だってしょっちゅう『あーん』とかお互いしてさ」


 ……めちゃくちゃ心当たりがある。そういえば私らってスキンシップめっちゃしてるな!?(無自覚)

でもただスキンシップ激しいだけだし!カップルの誤解は早く解かなきゃ!


「いやいやいや、全然(私らにとっては)普通だって!家が隣同士だから、学校帰ったあとだって大体どっちかの部屋に一緒にいるし、ていうかそのまま泊まるからほとんど自分の家みたいな感じだし!もう何年もそうやってずっと一緒だから、それくらいは付き合うとか関係なくいつだってしてるよ!?」

 まくし立てる様に弁解する。……まって、これ本当に弁解になってる?


「あー……そうなんだ?」

 やばい。めっちゃドン引きされてる。終わった?あー、終わった。

「え、えーと……とにかく付き合ってはないので……信じてほしいっていうか……」

「そっか……いや、信じるよ。信じるというか、もはや付き合ってるかどうかなんて次元の話はどうでもよく感じてきたというか……」

 次元……?私の知らないうちに別次元に話が飛んでいってた……?

「そ、そうなの……?じゃあいいんだけど……」


 気まずい空気が流れる。ていうかクラス中がこっちを見てる気さえする。気がしてるだけだけど。

 どこかから『尊い』って聞こえてきた気がした……なにが……?

あと今『推しててよかった』って言ったのは絶対浅田さんだ。


 千賀が教室に戻って来たところで、まるで時間が戻るみたいにスーッと元の空気に戻る。

 伊藤君が爽やかな顔して私に手を上げて去って行った。誤解解けてるんだよね?


「なにかあった?」

 千賀が首をかしげて聞いてくる。

「いや、なんでも……」



 翌日からの私は、千賀とのスキンシップを、というよりも、周りの目を意識せざるを得なくなったんだけど、だからって急に学校での態度を変える訳にもいけないので、恥ずかしい気持ちを隠しながら千賀とくっつくのだった。


 クラスメイトたちも良い人ばっかりなので、私らを好奇の目で見る訳でも腫れ物みたいに扱う訳でもないんだけど、なんだかずっと生暖かい雰囲気を感じたりして。


 誠に遺憾だけど

なぜかクラス内での支持率が上昇した気がする。

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