第2話:包まれたクイズ

 仮に相談者を吹和ふくわ 一刻いっこくくんとしようか。

 彼に相談を受けたんだ。

 相談内容は『プレゼントをちゃんと受け取りたい』。


 僕の元に来る相談は、実はかなり特殊なものもよくあって、僕自身最初に聞いた時は、彼が何を喋っているのか分からなかったよ。


 それでもよくよく話を聞いてみると、彼には友達以上恋人未満な女友達がいて、その子に誕生日プレゼントをもらったんだそうだ。


『ライブ見てて、思いついたんだ。包みを開けて、絶対使ってよね!』


 そう言われて、もらったのが可愛いクマのぬいぐるみだったそうだよ。大きな赤いリボンを背負っていた。最初は可愛いぬいぐるみをもらって、困ったそうだ。一体どうやって使えば良いんだろうって。


 へぇ。ライブって言いましたよね。軽音楽部に所属していたんですか?


 いや、ベントリロクイズム部だよ。


 べ、ベントリ……クイズ? クイズ部ですか?


『ベントリロクイズム』……腹話術のことだね。彼は腹話術部に所属していたんだ。寒空の中、鍔迫り辻公園で、曲芸部との対バンで、一芸を披露していたそうだよ。



 対バンって、曲芸の世界でも使われるものなんですね〜。

 はぁ〜、腹話術だから、仮の名前が『吹和 一刻』なんですね。ふくわ、腹話術。


 まぁ、分かりやすさが一番だからね。説明は。


 でも、バンドの人がぬいぐるみを使うのは難しいですけど、腹話術の人がぬいぐるみを使うのは簡単じゃないですか? 腹話術の人が使う人形を、ぬいぐるみで代用すればいいんですから!


 そう思うだろう?

 吹和くんもそう思って、クマのぬいぐるみをプレゼントした子、仮の名前として町張まちばり ボビンさんとしようか。彼女にもらったぬいぐるみを片手に、次のライブで腹話術を披露したんだ。


 もしかして、町張さんって、裁縫部に所属してたりします?


 よく分かったね。


 まぁ……、名前が分かりやす過ぎますよ。


 分かりやすさが一番だからね。彼女は裁縫競技部に所属していたよ。


 裁縫競技部……、ほんとツバコーは色んな部活がありますね。


 うん。そのクマのぬいぐるみも、きっと彼女が作ったんだろうね。

 でも、そのライブを見て、彼女は言ったそうなんだ。

『私の言ったこと、聞いてくれなかったんだね。もういい!!』って。


 え! ちゃんとライブでクマのぬいぐるみを使ったんですよね? うーん、女心は難しいなぁ……。


 言っただろう? 恋愛相談も、人間関係も人と関わる限り切っては切れないものだよ。いちばん大切なのは、相手の気持ちを思いやることだ。

 棒田くんも、もう一度思い出してあげて欲しい。彼女、町張さんが何を言っていたかを。彼女の想いを、汲み取ってあげてくれないかな。


 おおぅ。一応ボクもラジオDJのはしくれ!

 リスナーの気持ちに寄り添う者として、ボクにも考えさせてください!

 彼女が吹和くんに、何をプレゼントしたかったのか?


 彼女は何を言っていたかをもう一度思い出して……。



『私の言ったこと、聞いてくれなかったんだね。もういい』



 いやいや、そっちじゃないよ。


 違いましたか。



 町張さんは、

『ライブ見てて、思いついたんだ。包みを開けて、絶対使ってよね!』


 って言っていたんだよ。


 でも、クマのぬいぐるみを腹話術の人形として使うのは、違っていたってことですもんねー。


 それも彼にとってはひとつの愛情の表現だったのかもしれないよ。ただ、二人の想いはすれ違っていた。

 だから彼の相談は、『プレゼントをちゃんと受け取りたい』。彼女の想いをちゃんと受け取りたかったんだ。

 でもね、彼女の想いは、『くるまれて』いたんだよ。


 うーん、とっても気になりますね!

 ここで購買部からのCMを挟んで、解決編と洒落こみましょう!


 購買部のおばちゃんオリジナルの、新作焼きそばパン!

『煮込みうどんピザ』!!


 もはや焼きそばパンではない!

 焼いてないし、ソバじゃないし、パンでも無い!


 でも美味い!!!!

 ぜひ一度ご賞味あれ。


 では、解決編、よろしくお願いします、鶴見先生!!






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る