心からのプレゼント

りり丸

心からのプレゼント

 僕の最愛の妻の誕生日まであと三日だ。

 ケーキを予約して、プレゼントに欲しがっていた小さなダイヤのネックレスを用意した。

 そのネックレスは小さい粒ながら光り輝き、明るく照らしてくれるだろう。

 ネックレスの箱をぬいぐるみに持たせてプレゼントする予定だ。

 そのぬいぐるみを選ぶため、仕事終わりに雑貨店に来た。

 僕は器用に縫物なんてできないから売り物を買うしかない。

 でも、妻の喜ぶ顔を見たくて一生懸命に選ぼうと思う。

 ぬいぐるみの種類はクマ、ネコ、イヌといった動物が多い。

 僕は優柔不断だ。


「無難にクマか……でも、ネコ派だったよな……」


 周りを見ると手を挙げているようなポーズをしているカワウソがいた。

 まるで「俺を採用してくれ~」と言っているようだ。

 前に妻と水族館に行ったことが頭に浮かんだ。


「カワウソ君、君にしよう」


 挙手をしてまで僕の背中を押してくれたカワウソを手に取ろうとしたが、その売り場には無数のカワウソがいる。

 全て同じ形に見えるが少し違う気もする。


「どれにするか……」


 一つ一つ手に取って比べてみるが、見れば見るほど悩む。

 あるカワウソはかわいい感じが強いし、またあるカワウソはおっとりしている感じが強い。

 ずっと悩んでいると店内から閉店十分前のアナウンスが鳴った。

 長い時間悩んだが決まらなかったが、ふと手に取ったカワウソと目が合った。


「君に任せてもいいかな?」


 このように呟いたが当然返答はないが自信を持った顔をしている。

 そのカワウソと共にレジへと向かい、会計をする。

 長い時間選んだことが相手に完全に伝わることはないだろう。

 それでも一生懸命に選んで買ったこの心は伝わると信じる。


「一点で、三千円です」


 財布の中を覗くと最後の一万円だ。

 給料日前でお小遣いが残り僅かであるが、会計を済ませ店を出た。


「喜んでくれるといいな~。でも誕生会終わったら、お小遣い交渉しようかな?」


 包装用紙の中のカワウソは自信満々で「無理だぞ。誕生日で機嫌がいいからって便乗値上げしてくれるわけないぞ。笑顔見せてくれるだけで十分だろ?」と笑われているだろう。

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心からのプレゼント りり丸 @riri-3zuu3

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