ORIGIN

@mogura0708

第1話 旅立ち

AREA:焼けた村


 「とりあえず、殺せばいいんじゃない?」

彼――ぼくの双子の兄といわれる人物の指示に従い包丁で刺す。

「すごいや! やっぱりクロと旅に出ようと考えたのは正解だったよ!」

歯を見せて笑う彼。その頬は返り血で染まっているが、気にすることもなく楽しそうに話す。

「もう、おれの指示がなくても戦えるでしょ?」

ぼくはうなずいた。彼は満足そうに微笑む。彼は魔法でぼくの傷を癒しながら話す。

「それじゃあ一応最終試験。1人でここら辺にいるモンスターを倒してきて。それができたら、一緒に行こう」

失敗したら? そう目で訴えると、冷たく言い放った。

「足手まといはいらないんだ」

相変わらずの笑顔だが、その裏に隠れた心は、僕にはとても冷たく、機械的に思えた。置いて行かれても居場所がない。そう思ったぼくは駆け出した。

「5分くらいで戻ってこないと、一酸化炭素中毒になっちゃうかもよ」

焦らせる言葉が、ぼくの背中に刺さった。



危険はなく、無事に倒せた。モンスターがなぜか持っているお金を拾うと、彼のもとへ戻る。

「見てたよ。完璧だね。それじゃあ、旅立とう!」

彼は、ぼくの頭をくしゃくしゃと撫でてくれた。時々感じられるこの優しさ。ぼくは彼が持ち合わせる怖さとのギャップに惹かれていた。

「っとその前に……クロはまだ魔法を覚えてないよね」

どうしようかな、と呟きながらぼくの眼を見つめる。

「まずは傷を治すやつから覚えようか。こうやってね」

そう言って宙に何かを描く。ぼくが怪我をしているときに描いてくれるやつだ。

「さっきのを描けばできるんだ。ほら、指先に魔力を込めて真似してごらん?」

記憶を頼りに描く。指は動くが魔力が安定しないのかぼやけてしまう。役立たずと思われてしまっただろうか。

「いいや、まあ予想どおりだったよ。それじゃあこれならどうかな?」

彼は手から炎と水をそれぞれ出してみせる。今度は指先で描かないみたいだ。赤い炎が辺り一帯を照らし、足下には水溜りを作った。水面に揺らめく炎が美しかった。

「炎と水の魔法だ。たぶんクロならすぐに使えるはずだよ」

ほら、手を出して。と彼はぼくに言う。

「おれの言葉通り想像してみて」

言われた通りにすると、本当に扱えた。しかし、両手から同時にはできない。不思議そうな顔をしていると、彼はくすくすと笑った。

「そんな簡単なもんじゃないよ、練習あるのみってね。闘ってれば身体のこともわかるし、魔法の幅も広がると思うよ。それじゃあ、魔力も無くなっちゃうし、出すのはここまで。あとは実戦でやってみようか」

そう言うや否や彼は歩き出した。ぼくは、モンスターによって崩壊した故郷――と彼が言っているだけで本当かは知らないが――に心の中で別れを告げ、彼のもとへ走った。

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