奇跡再び
ざわざわ…。ざわざわ…。
いつもならみな野草を取りに村を出る時間だ。しかし今日はみんな広場に集まっている。
ノアに声をかけてもらった。
1週間前を思い出し、手にじんわりと汗がにじむ。
ここの暮らしをよくするんだ。決意を胸にみんなに語りかける。
「今日は集まってくれてありがとう!」
目線が俺に集まる。
この1週間でいろいろ変わったな。みな色とりどりの服を着ていて少し目がチカチカするくらいだ。しかしみんなの顔は活気で満ちている。
日常にも彩りが加えられた結果だろう。
「みんなも感じているが、最近この村は変わってきている!」
ざわざわ…
「ここでもう一度私にチャンスをくれないだろうか。前に私が話したことを覚えているだろうか?」
(なんだっけ?)
(お腹いっぱいにするとかじゃなかったか?)
「そうだ。みんなを満腹にするという約束だ! 1週間で生活に変化が起きただろう? どんな現状であっても私たちの力で生活は変えることができるのだ! みな想像してみてくれ。お腹がいっぱいになる生活共に目指していかないか?」
(変わりたい、いや俺たちで変えるんだ。なあみんな!)
(そうだ、どうするか分からないかが目指してみようじゃないか)
みんなが俺をまっすぐに見ている。前回のかわいそうな人を見る目ではない。ましてや死んだ魚のような目でもない。何かをしてくれるのではないかと期待している目だ。
体の奥から力じんわりとみなぎってきている。
俺は深く息を吸い、皆に聞こえる声で叫ぶ。
「さあ、奇跡を見せてやろう!」
今度は絶対に上手くいく!
「
石が光輝く。
……………
!?
「おい、何か石ころが変わったぞ」
「なんだこれは? 見たことがない」
「これはジャガイモという食べ物だ。栄養価も高く、育てやすい。そして……すごく上手い」
そういうと、アスカが前もって蒸かしておいた小口に切り分けたジャガイモを持ってくる。ちょっと熱そうだ。そしてそのジャガイモをノアに渡す。
「そしてこれはそのジャガイモ蒸かしたものだ。これは食べたらやみつきだぞ」
そういうと、ノアがジャガイモを頬張る。
「ん~!」
目を閉じて頬を触りながら体を小刻みにゆらし、声にならない声を出す。
本当に美味しいそうに食べるな……
「お、俺にも食べさせてくれ!」
ダンが立ち上がりジャガイモを頬張る。
「う、うまい! なんなんだ、これは……もう一個くれ!」
(わ、わたしも…)
(ぼくも!)
初めて見る食べ物にみなが群がる。
「「おいしい!」」
「もっとくれ……もうないのか?」
「みんな注目!」
返事がない。みなジャガイモに夢中だ。
「ちゅうもーく!」
広場が静まり返る。
我に返りハヤトの言葉を待つ。
「ごほんっ、えー今食べたものがジャガイモだ。これは土に植えることで、育てることが出来る。これがどういう意味かみんな分かるだろうか」
ざわざわ……。
「つまりだ。これを育てることで今後ジャガイモを毎日のように食べることが出来るようになる」
ざわざわ……
「それも……腹一杯だ!!」
「「う、うおおおおおおおおおおおおお!!!!!」」
広場に歓声が響き渡る。
(ハヤト様――!)
(ハヤト! ハヤト! ハヤト!)
どこからか始まるハヤトコール。
全身に力がみなぎってくる。お尻に力を入れるが、力が強すぎて制御できない。
(うおー!!)
(何かハヤト光ってないか?)
ババババババババ!!
全身が光輝く。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
ボルテージは最高潮に達する。
歓声と比例するように自分の力が増大していくのを感じる。ダメだ、制御できない!
ヤバい。このままだと、体が爆発しそうだ。
「
ゴゴゴゴゴゴ!
「な、なんだ、大地が、揺れてる?」
「立ってられねえ!」
「あぁ、木々が倒れていく?」
………………
「収まったか?」
「みんな怪我はないか? あと家は大丈夫か?」
「みな無事だ。家も倒れていない」
「ハヤト、何をしたんだ? っておい、大丈夫か!? 倒れているぞ!」
「大変だーー!」
「どうした?」
「か、か、川が近くに出来ました。」
「「はっ!?」」
「これが奇跡か……」
信者数30人 村人全員
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