神様はじめてみます
やぁ。俺の名前は神木ハヤト。よくいる普通の高校生だ! おっと、こんなあいさつ何回も聞いたことあるんじゃないかな。まぁみんなが「イメージする高校生」でOKさ。そんな俺だがひょんなことからいきなり神様になれとか言われているんだ。けっこうキテルだろう!!
はっはっはっはっは………………
「ってすぐに納得できるかーい!!!!」
俺は近くにある机をひっくり返した。
となりでアスカがお茶を吹き出しむせかえっているがそれは無視した。
ここは天国。神様たちが地球を見守る場所らしい。生物と神には密接な関係があって命あるもの必ず神の存在は必要らしい。ムズカシクテヨクワカンナカッタヨ!
「とりあえず俺が神になるとかは置いといて、分からないことばかりなんです。ちゃんと説明してください」
神ってなんだ? ってかセカンドアースってなんだ?
「こほん。ではまずはセカンドアースについて説明しますね。詳しいことはまたにしますが、私たち神は担当の星の生物の信仰心によって力を得ています。その力を使って私たちは星をより幸せに導くわけです。地球で奇跡と呼ばれる現象はたいていこの力ですね。そして今の地球はですね……すごく信仰心が強くて……その、私の力は日に日に増していく一方でした」
マリアさんが頬を紅葉させ体をくねらせながら話しを続ける。
なんかエロい。
「ハー」
「そして私の力が最高潮に達したときです。私の体がさらに光り輝いたのです。私は感じました。あ、生まれると」
「ホー」
「そのとき生まれたのが、セカンドアースとアスカでした」
「へっ?」
アスカの方を見るとひとりで、再びお茶を飲んでいる。我関せずといったところだ。
ズズズとお茶をすすっては声を漏らしている。なんてマイペースなんだ。
「えっと、つまり地球をもう1つマリアさんが作ってしまったんですか?」
「はい、そうです」
「そしてその地球の神としてアスカが誕生したわけですね」
「はい。そこからはアスカが、セカンドアースの神様としてあらゆるものを創造していたのですが……」
ここまでは無理やりだが理解は出来た。ここからだ。
「なんでアスカは神様を辞めたんですか?」
「アスカはとても純粋で慈悲の心も持っています。ですが神としては優しすぎたのです」
当の本人はというと今度は一人でつみきを器用に積み上げていた。ってかすごいな! もう自分の身長こえてるやん! あっ!? アスカが飛んだ!!?? じゃなくて。
「命には必ず終わりがきます。アスカは毎日命あるもののために祈り、そして涙を流していました。その姿はまさに神様そのものでした。しかしそれがアスカをずっと苦しめていたのです」
マリアさんが初めて悲しそうな顔をした。
「そこで私はアスカに提案しました。神様を信頼をおけるものに譲りなさい。と」
静かに聞いていたが、あと1つ大きな疑問がある。
「その……なんで俺なんですか?」
「どうしてハヤトさんかというと……」
やはり話したがらない。バツの悪そうな顔をしている。
このままじゃ埒が明かないな……
「おい。アスカ!」
急に呼ばれたアスカがびっくりしてつみきを崩してしまったがそれは知らない。
「な……なに?」
つみきショックを隠しきれていないままのアスカがおずおずと答える。
「どうして俺なんだ?」
アスカに近づきしっかりと目を見ながら俺は聞いた。
「えと……あの……地球を観察していて…………その………………」
頬を赤らめながらもじもじとしている。
もしかしたら俺には神にしか見えない特別な力があるのだろうか。それとも俺の思想が神様になりうる高僧な考えなのであろうか。はたまたこれが天命とでもいわれるのだろうか。
俺は覚悟を決めてアスカの言葉の続きを待った。
「………………………なんとなく?」
アスカがサッと目をそらした。
「えっと……あの……ハヤトさん? なんでそんな顔をしているんですか? 怖いですよ? ちょっと!? 嫌ですよ。さっき痛かったんですよ!! やめて! カミサマ!! 助けてー! いやぁぁぁああああ!!」
*********************
「だいたい事情は分かりました。それで神様って何したらいいんですか」
アスカは体育座りをしながら目に涙を浮かべている。
「地球を見守って世界を幸せに導くのです。実際にやってみれば分かると思いますよ」
そう言ってマリアさんが手を前に出した。すると何もない空間に突然、地球儀のようなものが2つ現れた。高さは俺よりも少し高いくらい。半径は1mくらいだろうか。片方は俺でも見たことがある形だ。これが日本で……
もう片方は全く知らない形だ。
「ここの前に立って目をつぶってみてください」
俺は言われるままに目を閉じてみた……
*********************
驚いた……。俺は今世界を上から見ている。これはまさにグーグルアース。すごい! 誰がどこで何をしているかもはっきりと分かる。声までは聞こえないが一人ひとりの顔が表情まではっきりと見える!
**********************
「どうでしたか?」
くすくすと笑いながらマリアさんが聞いてきた。
「なるほど。見守るってのは分かりました。でも幸せに導くっていうのは?」
「あそこの地方を見てください」
ごもっともという感じでマリアさんがある地方を指さした。
ひどい有様だった。そこは乾燥地帯で明らかに水不足に困っているようだった。作物は枯れ、井戸も干上がり、人々の頬も痩せこけていた。
「ここの地方は現在深刻な水不足に悩まされています。今なら彼らを救うことができます。ちょっといってきます!」
マリアさんが強く輝き始めた。まぶしくて目を開けてられない……
再び目を開けるとそこにマリアさんの姿はいない。
何が起こったんだ?
――――――ちょっといってきます――――――――
そういえばマリアさんそんなこと言っていたな……
俺は例の村を見てみた。
いた。
日光がさんさんと降り注ぐ中、この村には似つかわしくない美しい格好の神様が地上に降臨したのだ。
マリアさんがまわりをキョロキョロし始めた。周りに人がいないか確認しているみたいだ。
確認し終わったのか何かを唱え手を天にかざした!
ゴロゴロゴロゴロ…
雷鳴の音と共にこの村の上空が突如、雲に覆われ始める。
まさか……
程なくしてこの村に雨が降り始めた。この雨は長く続きそうだ……
なるほど、こうやって人々を幸せに導いているのか……
ふと村に目をやると村人たちが外に出てみな踊り狂っていた。何かの儀式だろうか。しかし俺の目に映る人々の顔はみな笑顔だった……
「どうですか?」
いつの間にか戻ってきたマリアさんは幸せいっぱいといった表情でまっすぐと俺のことを見つめている。
知らなかった……雨1つでこんなに喜ぶ人がいることを。
知らなかった……世の中には奇跡を起こさないと助からない人がいることを。
知らなかった……笑顔ってのがこんなに心を暖かくしてくれることを。
「神木ハヤトさん。神様やりませんか?」
マリアさんは今までとは違う真剣な眼差しで俺を見ている。
ふと隣にアスカが立っていることに気づいた。この光景を一緒に見ていたのだろう。後ろを向いていて表情は分からないがきっと……
――――――――アスカは優しすぎるのです。――――――――――
俺はマリアさんの言葉を思い出していた。
「仕方ないな……」
誰にも聞こえないような声でつぶやく。
大きく深呼吸をし、まっすぐとマリアさんを見つめ返す。
「神様はじめてみます」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます