この星では人間が下等種族だったので二代目神様に任命された俺が神の奇跡で導こうと思います。しかし誰も神を信仰していないため力が出せません。

SHO

バトンタッチ

ようこそ天国へ

「ようこそ天国へ」


 心地よい声が頭の中に響き渡る。かといって決して大きな声ではない。

いつまでも聞いていたいような透き通った声だ。


ずっとこの声に包まれていたい……


そんなことを思いながら俺は目を覚ました。


静かだ。


いつも聞こえてくる車の音などの生活音が全くしない。


 ここはどこだ? 


 混乱した頭を落ち着かせながら俺は辺りを見渡した。


「あっ」


 俺は目の前にいる女性に気づき、息をのむ。


 神様だ……


 神など信じていないのだが、彼女の存在がそう俺に告げている。腰まで届きそうなブロンドの髪。出るとこはしっかりと出て引っ込むとこ引っ込んでいる理想的なフォルム。今まで見てきたどの女性とも違う雰囲気。なんか彼女自体が光っているような……


 白い羽衣をしっかりとまとったその女性はというと、俺のことを歓迎するような、しかしなにか申し訳なさそうな顔で俺のことを見ている。


 本当に美しい。しかし聞き間違えでなければ天国とかいったか?


「あの、天国っていいましたけど……俺って死んだのですか?」


 少し声が裏返ってしまったが、仕方ないだろう。


「えっと、そのですね……」


 やはりなにか煮え切らない表情のまま言葉を詰まらせている。困っている顔も美しい。


 その時、女性の後ろに隠れながらこちらを覗いている少女がいることに気づいた。


「その子は……?」


 少女は肩を震わせ、半分隠れたままこちらを見ている。今にも泣き出しそうな顔である。


「神木ハヤトさん……ですよね……?」


 少女が今にも消え入りそうな声でたずねてきた。


 なぜ俺の名を知っているのだろう。不思議に思いながら俺はうなずいた。


「あの……本当にごめんなさーーーーーーーーーい!」


*********************


「話をまとめると、第二の地球セカンドアースを創造したが、そこの神がもう辞めると」


「はい」


「そして次の神に俺が選ばれたと」


「「はい」」


「うーん……」


 神様って継承制なんだな……ってか他にも突っ込みどころ満載だが……


 そもそもなんで俺なんだ?


 とりあえず元神に会ってぶっ飛ばしたい。


 俺は深くため息をついた。


 話しを一通り聞きはしたが、正直実感はない。もしかしたらたちの悪い夢なんじゃないか……


 冷静にもう一度辺りを見渡す。凹凸も何もない同じ風景がずっと続いている。上を見上げても太陽や照明らしきものは見当たらない。それなのになぜか明るい。こんな場所地球上には存在しないだろうしなぁ……

 

「あの……」


 少女の方がおずおずと話しかけてきた。


 俺はじっと少女を見つめる。年は中学生くらいだろうか。サラサラで艶がある黒髪が肩にかかっている。服はどちらかというと今風で、膝上10cmくらいのスカートを履いている。今はこわばった表情だがかなりかわいい。


「すみませんが二人の名前を聞いてもいいですか」


「そうでしたね。申し遅れましたが、私はマリア。地球の神様です」

                  

「私はアスカです。えっと……第二の地球セカンドアースの神様でした」



「マリアさん。アスカさんね。よろしくお願いしま…………」


 ちょっと待て。聞き間違いか?


「もしかして……第2の地球セカンドアースの神様ってのは……」

 

「はい……」


 少女がおびえた顔のままうなずく。


「よし。アスカ、こっち来い」


 こいつ……


 「嫌です!! だってハヤトさん怒ってます!!その握りこぶしやめてください! あっ!? こっちに来ないでください! ほんとに!! 暴力反対! 助けて! カミサマ!! いやああああああ」

 

********************


「それで、神様ってのは具体的に何をするんですか?」


 このダメな元神様がなぜか頭をおさえて号泣しているのを無視してマリアさんに俺はたずねた。


 「えっとですね、世界を創造するときはまずは光と闇を作ります。その後………………………………

……………………そして最後に生物を創造し、命を吹き込むんです。ちゃんと聞いていましたか?」



「はい……よく分りました……」


 ムズイ! こんなん絶対無理!!


「つまり、俺が生物を創造するんですか?」


「いえ。それはもうアスカがやってくれました」


 安心してとでもいうようにマリアさんの口角が上がる。


「えっ!?じゃあ俺は何をすれば……」


 マリアさんは満面の笑みでさも当たり前のように答えた。


「見守れればいいんです」

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