スリング
「いいか?こうやって使うんだ」
メイソンは手頃な石を拾うとスリングに挟み込み、勢いよく振り回し始めました。
しばらく旋回させてから片側の紐を離すと、放たれた石が正面の木へと命中し、「コーン」という高い音を周囲に響かせます。
「おー、うまいもんだな」
旅の途中、アイザックはメイソンからスリングのレクチャーを受けていました。
「スリングのいいところは弾の補充が容易なことと、携帯性に優れているところだな。もっとも、石を狙い通りに操るにはそれなりの訓練が必要になるが」
「当たれば確かに痛いかもしれねぇが、真剣勝負の最中に石を投げつけるってどうなんだ?それに、鎧兜で武装した相手じゃさすがに分が悪いだろ」
「それは使い方次第だ。それに石も馬鹿にしたもんじゃないぞ。うまく頭を狙えば兜の上からでも
話しながらメイソンはニヤリと笑います。
「でもまぁ正直、戦場でスリングを使ってるヤツってのはあまり見たことがないな」
「だよな」
アイザックが笑うと、メイソンは神妙な面持ちで茂みの奥を見つめました。
「どうした?」
「――おい、今日の昼は保存食じゃなくて肉でも焼いて食うか?」
そう言いながらメイソンは再びスリングを取り出し、今度は少し大きめの石を拾いました。
メイソンはアイザックから離れると、真剣な表情でスリングを振り回し始めます。
その旋回音は先程とはまるで別物であり、空を裂くような轟音がアイザックに恐怖すら与えました。
放たれた石は茂みに吸い込まれ、同時に激しい衝突音が辺りに響きます。そして、石の後を追うかのようにメイソンは茂みの中へと入っていきました。
メイソンが茂みから戻ると、その手には大きな野兎が握られていました。
「スリングもなかなかだろ?」笑顔のメイソンが野兎をアイザックのそばに放り投げます。
アイザックは派手に頭を吹き飛ばされた野兎を見つめながら、投石の恐ろしさを心に刻みつけました。
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