CHAPTER.27 予想しなければ、予想外のものは見出せない
駅からすぐ近くの商店街の路地裏に、ひっそりと佇む『武器屋』。ジェントルは普段通り、店の奥で自分が生み出した発明品を愛おしそうに眺める。
しかし、そんな平和な静けさは蛮骨な男の来店によって破られることになる。
「おいおい、随分とカビ臭ぇ店だな」
背の高い、青年というには退廃的な雰囲気をまとった若い男は文句を言いながら足でドアを開けた。
「いらッッッしゃ……っ!?」
そんな無礼な男に気を悪くすることなく、ジェントルは歓迎の意を述べようとしたが、それは叶わなかった。男は店に入るなり直ぐに、両手にあるなみなみと水が入ったバケツをぶちまけたからだ。
ジェントルは慌てて、入り口のドアのすぐ上に取り付けてある『能力封じ』に水が掛かっていないかチェックする。『能力封じ』も電気を動力としている、水には弱いのだ。しかし、幸い男は店の奥に向かって水を撒いたので濡れてはいなかった。
が、ホッと胸をなでおろすジェントルを見て男は邪悪な笑いを浮かべた。
「あー、ここにあったのか」
ジェントルの視線を読んだ男は、そう言って背後に隠していた三つ目のバケツを『能力封じ』に浴びせた。
「仕方ッありませン!
ジェントルも対応早く、手元に真っ黒な銃を出現させ、さらにオリジナルの消音機能付き暖簾で路地を包囲する。
「更にッ
「まだッまだッ、
ジェントルは甲冑を着ているとは思えない俊敏さで壁を蹴って、男を囲むように、次々に手から溢れ出るグレネードを撒き散らす。が、それを黙って男も見てはいない。
「来いっ、スライム!」
男の掛け声とともに、空から現れたスライムに路地が全て呑み込まれた。
◇◇◇
「くそっっ、全部ッ
ジェントルは独り、空っぽの店の床を殴る。そう、空っぽなのだ。彼が全てを懸けて生み出してきたものは跡形もなく姿を消していた。
「あの男ッ……。いや、良いでしょう、徹底的に痛めつけてやりマスとも、彼が後悔するまで、ね」
怒り、ただそれだけが心を支配した。
◇◇◇
『武器屋』襲撃のすぐあと、誉の部屋で。
「……えっ」
プロ子は誉に勧められて登録した『ナラザル』で早速その事件を知った。
「誉と惣一に知らせなきゃ」
学校はもうすぐ終わる。出てきた二人に事情を伝えるためプロ子は急いで向かった。
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