ぬいぐるみのお茶会

真夜中のお茶会

　月明かりの差し込む窓辺の棚。

　今日はお月様が真ん丸で綺麗だな。

　静まり返った部屋の中で、ヨイショヨイショと柔らかい体を一生懸命動かす影が五つほど。

　今夜はみんなでお茶会だ。

　棚からカーテンへ飛び移り、消防団ごっこをしながら華麗に着地。

　家の主がすやすや眠る今のうちにパーティーだ。

　満月の夜にだけかかる魔法の力でお茶会だ。

　最近ご主人様がずうっと起きてたから久々に開けるお茶会だ。

　ご主人様が疲れていないか心配だったのだけれども、ぼくたちゃただのぬいぐるみ。

　心配することしかできないのさ。

　心配も大事だけれど、できることをするっきゃない。

　なので久々のお茶会が楽しみで仕方がないのさ。

　ウサギとクマとアザラシと、タヌキにキツネのぬいぐるみ。

　さあさあ、みんなでお茶会だ。

　森の仲間に海のお友達を加えてみんなで仲良しお茶会だ。

　どこからきたのか関係ない。

　僕らは自由で差をつけない、争い苦手な仲良しこよしの平和主義。

　お茶会お茶会はしゃいじゃいるが、ぼくたちゃただのぬいぐるみ。

　お茶を飲めばじんわり染みて、模様がついて、さあ大変。

　空のカップと空のポットでお茶会気分を味わうのさ。

　中身が空でも美味しいのさ。

　みんなで楽しく思い出話をいっぱいいっぱい話し合う。

　不幸や寂しさ御法度よ。

　ここで話すは楽しい思い出。

　ぎゅうっと抱っこしてもらえたお話、仲良く手をつないでお散歩したお話、優しく微笑みかけてもらったお話、車で一緒にどこかへ旅したお話、一緒にベッドで夢を見たお話。

　思い出いっぱい詰め込んで、みんなで一杯一気飲み。

　ぬいぐるみたちの秘密のお茶会。

　愛と夢と幸せいっぱい、乾杯しながら感謝しながら楽しむのさ。

　いつもいつもありがとう。

　あなたに出会えてみんなと出会えて、ぼくたちゃ幸せいっぱいさ。

　ぼくたちゃただのぬいぐるみ。

　ぼくたちから何もできなくても、ずうっとあなたの味方だよ。

　寂しい時にはハグしてね。