ぬいぐるみというプレゼント

アキノリ@pokkey11.1

天使の翼

俺の世界、君の世界

俺は追いつけるだろうか。君の世界のスピードに

長門優(ながとゆう)17歳。

成績普通。

鈍感、長い髪の毛。

俺には才能が一切無い感じだ。

そして付き合っている女の子も誰も居ないしクラスメイトからは良い認識を得てないと思われる。


どれぐらいかと言えばまあクラスメイトに笑われるぐらいにボッチだった。

そんな俺だが.....ある日の事。

お金が必要になったので静かにでもアルバイトをする羽目になった。

うちの両親が持病持ちでそれなりの貧乏だったから。


男なのにぬいぐるみを俺に贈る様なお婆ちゃんだがそのお婆ちゃんの入院の為の資金集めだ。

俺はお婆ちゃんの為に、両親を養う為に。

求人情報と睨めっこをずっとしていた。

しかし良いバイトがなかなか見つからない。

うちには金持ちも居るっていうのにな。


「.....世の中理不尽だよな。全く」


俺は学校帰りでそんな事を呟きながら自販機で買ったコーヒーの入っていた空き缶を潰しながら.....空を見上げる。

何事も無く晴れている空を見ながら半ば腹を立てながら悪態を吐く。

そして歩いていると.....目の前に外車が停まる。

俺はその車を一瞬だけ見てから歩くと。


「待って」


そんな一言の声がした。

俺は?を浮かべて背後を見る。

丁度.....外車から誰かが降りて来る所だった。


俺は???と思いながらその姿を見る。

それは碧眼の美少女だった。

金髪でもあるが日本人らしい顔。


クォーター.....ってかうちのクラスの女子だよな?

確か.....クロバ・ユメール・結奈。

そんな名前だった様な.....まあ単に記憶していただけだけど。

もしかしたら名前が間違っているかもしれない。


「長門くんだよね」


「.....え?あ、うん.....そうだけど.....」


「貴方はもしかして.....今、仕事を探しているの?」


「.....え?何でそれを知って.....」


「いつも私が帰宅途中に求人情報の看板と貴方が睨めっこしていたのを見ていた。.....だからそうなのかなって思ったの」


「.....ああ。まあ.....そうだな。.....がめつい最悪な部分を見られたな。すまない」


確かに俺は求人情報を探しているよ。

でも.....それで.....どうしたの?、と聞いてみる。

するとモジモジし始めた結奈。


それから俺を赤くなって見上げてくる。

今更だけど.....本当に今更だけど。

私の元で働い.....てみない?、と言ってくる。


「.....え?.....それは.....えっと。どういう意味?」


「.....私の屋敷で.....働かないって事だよ」


「.....え?!.....き、君の屋敷って.....お金持ち.....まあそれはそうか。そんな外車に乗っているから.....」


その。

複雑な思いを抱き始めた。

何だかあまりにその姿に.....あまり良い気がしない。

まあその.....俺を馬鹿にしている感じがしたから、だ。

金持ちなりに見掛けていたから馬鹿にしているのだろうきっと、と俺は思いながら結奈に向いてみる。


すまない。残念ながら俺は君の屋敷では働けないよ、と言った。

驚嘆する顔を浮かべる結奈。

そして俺は立ち去ろうとする。

すると結奈は信じられない行動をとる。

俺に背後から抱き着いて来たから.....はぁ!!!!?


「その。その。.....お、覚えてない.....?わ、私の事.....結婚しようって。将来.....この前転校して来て昨日やっと見つけたの.....私の.....私の大切な婚約者を」


「.....は!?!?!そんな馬鹿な!?ひ、人違いじゃ!?」


「私は記憶の誤差は無い。.....君は間違いない。私の生まれた時から約束されていた婚約者だよ」


「へぇ!?そ、そんな馬鹿な!?」


記憶に無いぞ?

どうなっている.....!?

思っているとでもちょっと理由があって私が貴方の前から去ったんだ。


だからその後ずっと探していて.....貴方をようやっと見つけた。

結婚して下さい、と言ってくる結奈。

嘘だろ!?夢じゃないのか!?


「私は好きな人と一緒に居たい。だから貴方を屋敷で働かせたい。貴方の家族を救いたいの。お婆ちゃん.....大変なんでしょ?」


「.....!.....その。一つだけ聞いても良いか」


「.....何?」


「生まれた時から.....ってそれってマジ?」


「マジだよ?私は.....ずっと彼氏も居ない。貴方を待っていた」


何でこの子の記憶が無いんだ?

こんな事になるとは.....。

俺は考えながら抱き付いたままの結奈を見る。


そして結奈はギュッと俺を抱き締める。

俺は動けないので.....溜息を吐いた。

それから、分かった。そこまで言うなら屋敷に勤めさせてくれ、と言ってみる。

そして質問してみた。


「.....何故俺は.....記憶が無いと思う?」


「.....うん。知ってる。記憶が無いのは.....貴方が事故に遭ったからよ。幼い頃に」


「.....え.....確かに事故には遭ったけど.....」


「.....記憶が飛んでいるんだと思う。幼いからまだあまり浸透してなかったかもしれないけど。親御さんも隠していたんじゃないかな」


「.....!」


約束の時が来たの。

優。だから今言うね。

私は貴方の結婚相手です、と告白してくる。

俺はボッと赤面しながら結奈を見る。

そして慌てた。


「.....ゆ、優って言うのは止めてくれ。俺は君の事.....覚えてないんだから。今でも衝撃なんだ。申し訳ないけど」


「.....そうなんだね。.....でも私は思い出を覚えているからこれで大丈夫だね」


「.....」


こうして.....俺は結奈の屋敷で働く事になった。

しかし.....何故こうなった!?

俺は思いつつ.....結奈を見る。

そして俺は結奈の屋敷にやって来る。



1週間が経った。

大きさに圧巻されていたが何とか気を取り戻していた時。

結奈がニコニコしながら俺に寄って来た。


それから見上げてくる。

俺は?を浮かべて結奈を見る。

そう言えば.....うーぬ?


「ずっと練習ばかりだったから。.....俺は掃除.....何処からしたら良いかな」


「それは勿論。最初は私の部屋からだよね」


「.....え」


「.....え?なの?だって私達将来結ばれるんだから。共通な事は覚えておこう」


「.....いや.....恥ずかしいって」


「そっか。恥ずかしいか。.....でもその恥ずかしさも経験だからね」


それから背中を押される。

そしてそのまま結奈の部屋にやって来た。

結奈の部屋は相当な.....女の子の部屋の香りだ。

俺は真っ赤になった。


「あはは。優ったらかなり面白いね」


「いや.....これは無理があるから。.....異性だぞ俺達。だからこうなる」


「そっか。.....そう言われると何だか私も恥ずかしいな」


「.....そうだよねぇ.....」


でも私は優に見られて嫌なものは何も無いから。

と言いながら俺を見てくる結奈。

俺はその姿に!と思いながら寄り添って来る結奈を見る。

また俺は赤くなってしまった。


「.....結奈.....」


「私は優が好き。優はどうかな。私が好き?」


「.....い、いや.....今はそんなゴリ押しでは.....」


「そう。じゃあ好きになってもらわないとね」


「.....え?.....好きになってもらうって?」


「とっておきの魔法」


そして見上げてくる結奈。

それから.....赤くなる結奈。

何かをしたい様だが.....なにをす.....。

そこまで考えた所で俺は思考が奪われた。

何故なら結奈は背伸びをして.....俺にキスをしてくる。


「.....はぃ?」


「私は優が絶対に好き。.....だからこんな事も出来るから」


「.....!!!!?」


ヤバい.....心臓がバクバクする!

なんて事をするんだ!?いきなり!?

キスってこんな容易くて良いの!?

俺は混乱しながら結奈を見る。

結奈は、わ、私だってビッチとかじゃ無いからめっちゃ恥ずかしいから!、と言いながら顔を赤くする。


「.....だから.....優に伝わってほしい。この気持ちが」


「.....!」


「.....優。大好きだよ」


「.....」


俺が.....あの場所で。

つまり.....求人情報に目をくれなかったらこんな事にならなかった。

親も貧乏で人生が破綻しているものと思っていたのだ。

だが.....光はあったんだ。

この場所に、だ。


「.....なあ。結奈」


「.....何?優」


「.....お前に渡したいものがある」


「.....?.....それは?」


「ゴメン。感謝の印として.....俺、貧乏だから。.....これゲーセンで暇つぶしで取ったんだけど.....婚約指輪のおもちゃを嵌めた熊のぬいぐるみだ。高級そうなぬいぐるみばかりだから受けない.....と思うけど」


「優.....」


「.....俺を見つけてくれて有難う」


渡すと結奈は、どんな宝物よりも嬉しい、と言いながら胸に抱き締めた。

それから俺を見上げてくる。

涙が溢れていた。

俺はその姿を驚愕しながら見る。


「.....婚約指輪さ。.....これにしない?」


「.....え!?しかしこれは.....おもちゃ.....」


「私にとってはダイヤモンドよりもプラチナよりも貴金属よりもこの婚約指輪に価値がある」


「結奈.....」


「.....価値がありすぎて.....価値が付けれない。貴方からの最初の贈り物だから」


「.....結奈.....」


そして結奈は、ねえ。優。嵌めてくれない?、とモジモジしながら手を差し出してくる.....。

俺は赤くなりながら、良いの?、と聞くが。

優だから、と言いながら結奈は俺に左手の薬指を差し出した。


「.....優。絶対に幸せになろうね」


「.....ああ」


これは本当に不思議な縁だ。

俺は考えながら.....そのまま結奈と一緒に屋敷で過ごし。

季節が巡った。

無事、入院していた懸案の婆ちゃんが結婚式に出席してくれて俺達は20になって結婚したのだが.....今に至る。

今、俺達は25歳になりそして.....結奈の妊娠が分かった。



「.....子供ってとても可愛いね」


「俺達の子供だしな」


「.....エヘヘ。幸せすぎて本当に次元を通り越しそう」


そんな言葉を言いながら俺達は寄り添いながら目の前の峰(みね)を見ていた。

峰ってのは俺達の子供の女の子に付けた名前だ。

名前が峰という。

将来この子がどんな成長していくのか。

それを見守るのが楽しみで仕方がない感じだ。


「.....ねえ。優」


「.....何だ?」


「この先だけど子供2人目どうしようか?」


「.....」


ニヤー、としながら見てくる結奈。

俺は真っ赤に赤面しながら、そ、それはまた考える、と回答した。

すると結奈は、そっか、とニコッとする。

そして俺の唇を塞いだ。


「.....エヘヘ。愛してるよん」


「.....いや結奈。お前な.....」


俺は苦笑いを浮かべながら結奈を見る。

結奈は、でも本当に愛しているから、とニコニコしながらまた寄り添う。

それから俺達はいつまでも.....峰を見ていた。

峰は俺達にそっくりな笑顔で寄って来る。

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