【KAC20232】わたしと女神様

かなめ

クレーンゲームしてきた話

「プレゼントだよ! 絢ちゃん」

「……確かに欲しいとうっかり言ったことあるけど」


 満面の笑みで綺麗にラッピングされたを手渡そうとしたのに、大きさにも限度があるのよと、同じ制服を身にまとった高い位置で結んでなお背中の真ん中まである艶やかな長い黒髪の少女が視線をそらしながら呟いた。


 黙って立っているだけなら冷たくて近寄りがたく涼やかな印象が先立つけれど、本当はふわもこの可愛いものを愛でることがとても好きだと知ったのはお弁当を一緒に食べてくれるようになってからだった。すっごい可愛いお弁当セットに可愛いキャラ弁を自分で作ってひとりで楽しんでたんだよ。知ったときはきゅんきゅんした!

 皆は知らない、私だけ知ってる女神様の秘めやかな好み。なんだか私だけトクベツって感じがするって思ってるのは、恥ずかしいから内緒にしてる。


「この子、とってもふわふわもこもこで可愛いでしょう?」

「……そうね。ふわもこで可愛いわね。そこは同意する」

「だからね、絢ちゃん! いつも勉強教えてくれるお礼にプレゼントするために頑張ってみたの!」

「千紗さんや。気持ちはありがたいんだけど、それを抱えて持ち歩く勇気は私にはないんだわ」


 それに、確かクレーンゲームでしか手に入らない商品だった気がするんだけれど気のせいかな? と弱々しく呟いてる。

 もちろんクレーンゲーム限定品だし、ちゃんと自分で取ったんだよ。凄くない?って続けたら、更に弱々しい声で問題はそこじゃないってうめき声になった。ひどくない?

 世間一般的に可愛いの部類に入るらしい私は、肩まで伸ばしている茶色に限りなく近い黒茶色のふわふわした猫毛を華美にならないリボンやバレッタで飾るだけでふわふわしてて可愛いねと言われることが多い。真顔というのが上手く出来なくて、対外的には笑っているように見えることでにこにこしててエラいねぇとかもよく言われる。


 けれど、と私の沈めていた気持ちに気がついてくれた。

 嬉し涙ではないと悔しいや悲しいと思うこともあることを隠さなくてもいいと抱きしめてくれた私の大事で大好きな女神様。

 みんな彼女をとても冷たいとか、私のことを可哀想とか色々言ってくるけれど、彼女はちっとも冷たくなんてないし、私は彼女が彼女でいてくれるならそれで良かった。


「じゃあ、私が絢ちゃんと一緒に持っていくのは? あり? ありでしょ?」

「……………ありです」

「やったあ! 絢ちゃんと放課後デートだ!」

「………でーと」

「んー? なぁに? どうかした?」

「なんでもない。無自覚こわい」


 ぐったりしながら小さく呟いてた言葉ははっきり聞こえなかったけれど、声音はちょっとうきうきしてるのが分かったので取れるまで粘って頑張って貢いで良かった!ってなった。

 二人で肩を並べて歩いてるとき、可愛いふわふわもこもこを抱きしめてる可愛い私をちらちらと堪能してた女神様に、お家についたらじっくりと堪能してもらおうと決めたのだった。




終わり

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