ボクはパンダのぬいぐるみ

ヤギサ屋

ボクはパンダのぬいぐるみ

ボクとトウカはいつも一緒。

朝起きる時も、ご飯を食べる時も、夜寝る時も。


トウカが、ボクのお腹に顔を擦り付けてくると、くすぐったくて、安心するんだ。


トウカも、ボクがいないと寝れないなんて言って、、、ふふ。何だか、こそばゆいね。



ある日トウカが泥だらけになって帰って来た事があった。玄関からまっすぐに部屋に来て、泥だらけの顔をボクのお腹に埋めた。学校で喧嘩でもしたんだろう。撫でてあげたかったけど、それは出来ないから、トウカが泣き止むまで、そっと見守っていた。



その後、ボクを洗濯し干していたママが、喧嘩した相手と仲直りしたって、パパに言っていたのを聞いた。良かったね。



トウカは中学生になった。

部活を始めた。バスケ部だって。いつもボクと部屋で遊んでばかりでって思っていたけど、運動神経は良かったみたいだ。



高校生になった。

塾に行き始め、忙しくなった。だけど変わらずに勉強や寝る時はボクを抱きしめる。

一緒にいる時間は減ったけど、そうしてくれる事がとても嬉しかった。



ある時、部屋に男の子を連れて来た。きっと恋人なんだろう。彼の視線はボクのトウカを見るそれと、とても似ていた。優しそうな男の子。



そして、トウカは社会人になった。

家に結婚相手を連れて来た。パパやママに挨拶をしている。高校生の時に部屋に遊びに来た、あの男の子だ。トウカの嬉しそうな顔に少し寂しさを覚えたが、それより喜びのが勝った。



トウカが家を出て行く。引っ越しの荷物として、段ボールにボクは入れられた。一緒に連れて行ってくれるんだって。嬉しいね。ずっとトウカを見守っていれる。箱が閉まると、暗闇になった。日が当たる所にばっかりいたから、あんまり暗い所には慣れてないんだ。

少しだけ、ほんのちょっとだけ、怖い。



それから、ボクはずっと暗闇にいる。箱はいつ開けられるのだろうと、ずっとずっと待っているけど、一向にそんな気配はない。もう、いらなくなっちゃった?


月日が流れ、ある日、箱が空いた。開けてくれたのはママだった。あれ?トウカは?ボクはママに連れられていって、別の箱に入れられた。箱の中にはトウカがいた。やっと会えた。トウカ、ボクだよ。パンダのぬいぐるみだよ。ボクを見て。

だけど、トウカは天井ばかりを向いていて、ボクを見ることはなかった。


引っ越しの日、交通事故に遭って、トウカはずっと病院にいたんだって。

集まっている人達の誰かが言っていた。



箱が閉じられる。また暗闇だ。でも、今度はトウカと一緒。



包まれる炎と一緒にボク達は光となって、共に駆けていった。



ボクはパンダのぬいぐるみ。トウカとボクはいつも一緒。

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