第19話 日常1


その後。

本格的に一度経験のある小林先生、篠原先生、山下先生を初めとした教師陣に性的な目で見られながらも、俺はオフィスワークに勤しみ、19時に帰宅した。俺がパソコンに向かってカチャカチャしている間、皆バタバタと忙しなかったとだけ言っておこう。……コーヒーを入れたら喜んでくれた。


ポストには入っていた手紙や荷物を検分しながら俺は着替えを済ませる。

夕食は基本近所のスーパーで買う一つ500円の弁当で、別にお金が無いわけでも無いが割引シールが貼られる時刻に買いに行く。前世から続く習慣だ。


風呂の掃除を行った後は自動のお湯入れボタンをポチッと押す。

大体風呂が沸くまでは30分ほど掛かるので、その間に本日の弁当を買いに出発する。


「――いらっしゃいまっ?!……せ……え、?」


研修中と書かれたネームプレートを首から提げた女子大生と思わしき女性は、来店の挨拶の後に二度見三度見繰り返しながら目を擦っていた。


「どうも」


新しい店員が入る度に同じ事が起きるので慣れていた俺は、軽く返事をして買い物に進む。


野菜コーナーからサラダに必要なキャベツやレタス、炒め物に使うニンジンやタマネギ、ジャガイモを等を物色しながらいくつか手に取った後、俺は本日のメインである弁当コーナーにたどり着く。


そこには、一人の店員がいた。


「た、玉城さん仕事お疲れ! ――はい、唐揚げ弁当!」

「いつもありがとう鈴木さん。助かるよ」

「お、お礼はいらないよ! これがだから!」


鈴木さんから残してもらっていた唐揚げ弁当を受け取ると、野菜を隅に寄せてから斜めにならないようにカゴに入れる。


初めこのスーパー(地元系)に来たときは、いろんな種類の弁当があって値段も安かったのでちょくちょくお世話になっていた。

しかし、何故か最近は弁当の売れ行きが激しく、俺が買いに来る頃には100個近く並んでいた弁当が全て売り切れてしまっていた。


ある日、そんな事実に夕食どうしようかと悩んでいた俺のところに現れたのが、弁当コーナーを担当している鈴木さんだった。

店員の鈴木さん――20代前半で同年代――は、俺から話を聞いた後、何かに納得する様子を見せてから、今後俺の分の弁当を一つ残してくれるようになった。


俺がいつ来るか分からないし食べたい弁当も決まってないはずなのに、どうやって俺の分の残してもらっているかと言えば、それは、メッセージアプリの連絡先を交換しているので買い物に行く日に、事前に食べたい弁当を伝えている。


初めはわざわざ申し訳ないと思ったんだけど、向こうは『全然いいよ……むしろ……ゴニョゴニョ』と言ってくれたし、それに話している内にすっかり仲良くなれた。


時折向こうの好意で休日にご飯を作ってくれるので一人暮らし独身の俺からすれば非常に助かってる。

彼女はスーパーの弁当コーナーを担当なだけあって料理が上手なんだ。


それに、料理の作り置きもしてくれるので、俺が普段弁当と共に食べているポトフやミネストローネ等のスープ系や、サツマイモサラダやコールスロー等のサラダ系は彼女の手作りだ。


俺は、彼女に胃袋を捕まれていると言っても過言では無い。




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