第7話 帰宅

入店前は空がオレンジ色で綺麗な夕焼けだったが、22時を過ぎた現在はすっかり辺りが暗くなり、空には夜道を照らすように星々が煌めいていた。


飲み会では、途中から俺が席を移動することで参加者全員と話すことができ有意義な時間を送ることが出来た。しかし、どうしても全員仲良くとはいかず、中でも一緒の卓で長く過ごした二年二組担任の小林先生、三年三組担任の篠原先生、養護教諭兼スクールカウンセラーの山下先生とは他の人と比べて冗談を言い合える仲にまで深まった。


今回のことで俺は軽視していた『飲みにケーション』に脱帽するのみだった。恐れ入った。普通なら数日、数週間、数ヶ月掛けて仲良くなる行程を一気に飛ばしてしまった。

もちろんそこには、彼女たちが皆20代前半で若かくこの世界の女性は皆男に飢えていたり、俺が鴨ネギポジションであったり、四人とも年が近かったことも関係しているとは思う。

しかしそれでも、先人の教えには脱帽するのみだった。



「三人とも家まで送ってくれてありがとう……飲み過ぎたから助かったよ」


席を移動する度にお酒を勧められた結果、俺が酔ってしまった。

女性陣は何故か理事長以外酔っていなく、弱いと思っていた小動物系女子の小林先生ですらピンピンしていた。……はめられた?(意味深)


「玉城君引っ張りだこだったもんね!」


「私たちでもこんなに出会いがなくて辛いんだから、年上の先生達の反応も分かるけど」


「男性を一人で家に帰すなんて一女性としては見過ごせませんから!」



上から小林先生、篠原先生、山下先生。三人ともいつの間にか俺のことは君付けで呼ぶことになった。俺は先生呼びだけど。

彼女たちは俺が普段通りに家まで帰ろうとしていたところを『何かあったら危険』だとわざわざ夜も遅い中送ってくれた。……チラチラと俺の身体に視線を送りながら。


果たして、女性三人に家まで送って貰うのと一人で暗い中家に帰ったときとで、目の前のように男の家の玄関で女性三人が目をギラつかせているのを考えると、一体どちらの方が安全だったのか。気になるところだ。



「えっと……お礼もしたいし上がっていって」


俺にとっても彼女たちにとってもwin-win。

俺は『え?!』『ちょ、ちょっと!』『わわわわ!』と慌てふためく彼女たちを見ながら内心、どんな悪戯――途中で断りを入れてシャワー浴びドギマギ or 眠くなったと言って縺れるように横になる――をしてやろうか、高まる気持ちを感じながら考えていた。



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