外では陰キャで家ではギャル〜俺の前で見せる義妹の本当の姿に色々耐えるのが大変です~

みょん

二つの顔を持つ妹

 俺には妹が居る。

 中学三年の終わり頃、父さんの再婚によって出来た血の繋がらない妹……所謂義妹というやつだ。

 新しい家族とはいえいきなり家の中に新たな存在が増えるというのは気まずいなんてものではなく、彼女の母親であり今では俺にとっても母さんになる人とはすぐに打ち解けたものの、妹とは会話も成り立たなかった。


『よ、よろしく……お願いします』


 妹は……こう言ってはなんだが地味だった。

 長いボサボサの髪とオドオドした姿、そして喋り方もハキハキしない子でとにかく暗い子だった。

 ただスタイルは抜群というか、大きな胸と大きな尻は見事の一言――そんな彼女を抱いたら気持ち良さそうだと言っている同級生も居るらしく、その辺りに関しては何かされないだろうかと不安ではあった。


『お兄ちゃん、この本貸してくれる?』

『お兄ちゃん、お風呂空いたよ』

『お兄ちゃん、勉強教えてよ』


 そんな慣れない義妹との日常は気付けば普通のモノになっていった。

 彼女の見た目は変わらないし外では変わらずオドオドしているし、学校では陰キャなんて呼ばれていると笑っていたが……それは大丈夫なのかと兄としてはやっぱり不安になった。


『ちょ、ちょっとお兄ちゃん!?』


 男女の兄妹だからこそあり得ることなのかもしれないが、ボーッとしながら風呂に向かった際にまだ彼女が入っていた……なんてこともあって、幸いにもバスタオルを巻いていたおかげで全部を見ることはなかったけど、近い年頃の女性の肉体を見るといったハプニングもあった。


『あ、お兄ちゃん……っ』


 でも……ある時に俺は気付いた――妹の元気が段々と失われていったことに。

 どうしたのかと聞いても大丈夫だからと強がるだけで教えてくれず、父さんも母さんも心配には思っていたが何も彼女は言わなかった。


『……これは何かあるだろ絶対』


 俺にとって、あの子は血の繋がらない妹で……出会って少ししか経っていない。

 それでも同じ家族であり大切な妹と思うのは確かな感情だった……俺は妹に隠れて彼女と仲の良い友人から話を聞いた結果――妹はイジメを受けていることを知った。

 そこからの行動は早かった。

 俺はすぐに父さんと母さんに事情を説明し、妹の友人たちの力も借りることで担任さえも隠そうとしていたイジメの証拠を全て掴んだ。


『ごめんなさい……怖くて……ごめんなさい!』


 妹の友達は何も出来なかったことを謝っていた。

 もちろんイジメの標的にされたくない気持ちは理解出来たが、それでも学校の外の関係者である俺みたいな存在に伝えることは出来ただろうと文句を言いかけたが、自分よりも下の女の子に強くは言えなかった。


『お兄ちゃん……どうして?』


 どうして? そんなの決まってるだろ。

 兄は妹を守る存在だ――ましてや、ようやく仲良くなって家でも普通に話が出来るようになって……地味とは思っていたけど、意外と整っている顔立ちなんかを見て可愛いと馬鹿みたいに妹上げを心の中で繰り返す俺を甘く見ちゃいけない。


『なんで黙ってたんだって言いたいことはある。でも……もう大丈夫だぞ――もう大丈夫だから。何があっても俺が守ってやるから』


 それはただのかっこつけでもあっただろう。

 けどずっと耐え続けていた妹の変化に気付けなかった俺自身への戒めでもある……彼女はきっとそこまでのことは望まないはず。

 でも、俺は彼女をその時から強く守りたいと思ったのだ。


『っ……うぅ……!!』


 耐える必要がなくなった、ちゃんと頼りになる存在……守ってくれる存在は居るんだと認識したのか妹はしばらく俺の胸の中で泣き続けた。

 その後は妹の心の修復に時間を充てるため、妹は通信制という形になった。

 当時の俺が目指していた高校がそれなりに偏差値の高い高校でもあったせいか、妹もそこに通うんだと勉強を頑張り始め……そして彼女の努力は実り、妹も俺と同じ高校の生徒になった。


 ただ……ここまでは普通に良い話ではないだろうか。

 自分で言うのもなんだけど、本当に良い話だと思う……けど問題はここから――俺が彼女を助けた日から妙に視線を向けられるようになり、俺の部屋に来ることも増えボディタッチもかなり増えた。

 そして俺が高校二年で彼女が一年のこの時期……俺は色々と耐える日々を送ることになったのだ。


▼▽


「兄さん……? 起きてる? 兄さ~ん?」


 朝、眠っている俺を起こす妹の声が聞こえた。

 まだ眠たい……まだ寝ていたいと俺は掛け布団に包まるかのように体を丸めた。


「もう……今日は休みの日なのに。どうせ遅くまでゲームしてたんでしょ?」


 ご名答だ……昨晩は友達と一緒にオンラインゲームを遊びまくった。

 だから眠たいんだ。というか今、休日だと言っただろ……なら良いじゃないかもっと寝かせてくれよ頼むから。

 そう思う俺を他所に、妹が傍で屈んだ気配を感じた。


「どうしても起きないのならぁ……あたしが悪戯しちゃうぞ~?」


 掛け布団の隙間を作るようにされたかと思いきや、同じように掛け布団を被るようにして妹が入り込んできた。

 甘い柑橘系の香りが鼻孔をくすぐり、目を開けると綺麗な女の子の顔が盛大におはようございますしている。


「おはよ、兄さん♪」

「……おはよう――美羽」


 暗闇の中でもしっかりと彼女の顔は見えていた。

 俺はしばらく彼女と見つめ合った後、仕方ないとため息を吐いて起き上がった。


「ったく、今日は休みだろ?」

「良いじゃんか。兄さんと一緒に過ごしたいの!」

「……………」

「にしし。兄さんだって悪くないって思ってるでしょ?」


 そう図星を突かれて俺はまたため息を吐いた。

 短いスカートだというのに目の前で体育座りをしているせいで、俺に苺模様のパンツを丸見えにしている彼女は俺の義妹である久遠くおん美羽みうだ。

 眩しく染め上げられた明るい髪と整った顔立ち、挑発するかのような雌を思わせる自信に満ち溢れた表情と……そして、胸の谷間が見える非常に目に毒な服装。


「兄さんったら妹のおっぱいを見ちゃうなんてエッチぃ♪」

「お前が見せてるんだろ!」

「あ、バレちゃった?」


 とはいえ……顔を赤くしている自分が本当に恥ずかしい。

 目の前でニヤニヤとしながらも、このやり取りそのものに楽しいと感じている様子の美羽を見ていると思うことは多くある。

 何がどうなって彼女はこんな風になってしまったのかと。


(……高校に入学してからだよな。美羽がこうなったのは)


 元々美羽はとても地味な女の子だった。

 だが高校入学を機に地味な姿から一転し、垢抜けた美少女へと変貌を遂げた――ただ、彼女のこの姿は学校では披露されない。

 彼女がこんな風にいつもと違う姿になるのは家の中だけ……つまり、俺と両親の前だけだ。


「ねえ兄さん、デートしようよぉ。どうせ暇でしょ?」

「……まあな」


 高校生にもなった今、中学校のようにイジメられたりはしていない。

 ただ外での地味な格好は変わらないので彼氏は当然出来ていないし、学校の友人も限られている。

 ただこうして普段と違う自分になり切るのは面白いらしく、Twitterなんかに今の自分の自撮りを上げたりして反応を楽しんだりも彼女はしていた。


「……はぁ」


 また大きくため息を吐く。

 彼女を助けてからというもの……本当にボディタッチというか、一気に距離が近くなったのだ。

 父さんと母さんは俺たちの仲が良くて微笑ましいと思っているようだが、年頃の男に美羽のようなダイナマイトボディの少女から齎される多くの行動はとてもじゃないが心臓に悪い。


「美羽、着替えるから外に出てろ」

「え? 良いよ別に。ここに居るよ」

「良いから出なさい!」


 妹は大切だ……しかもとても可愛いし、スタイルも良くてドキドキする。

 性格も良いし最近では母さんに料理を習っているようでメキメキと上達してて、彼氏が出来たらその相手は幸せなことだろう。

 そんな風に外とプライベートで二つの顔を持つ妹に俺は今年からずっと揶揄われている。


「……よしっ!」


 パシッと両頬を軽く叩いて気合を入れる。

 今日も一日、妹に付き合ってみせる……そう俺――久遠彩人あやとは意気込むのだった。

 でも、そんな俺にも一つだけ悩みがある。

 それは妹のことを最近、エロい目で見てしまうことがあるんだ……これは非常にマズイ、由々しき事態だと割とマジで危機感を持っている。



【あとがき】


とりあえず、最近抑えていたものを解放して書きます。

心機一転、頑張ります。

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