第205話 100万人突破記念配信 凸待ち編
土曜日の朝9時45分。
今日はVtuberになって初めての3DLIVE配信。
3D配信が始まるのは今から6時間後くらいになるが、すぐに6時間経ってしまうんじゃないか、と思うほど緊張している。
心臓が高速で鼓動している。
なのに思考は冷静だ。
声の調子も問題ない、体を少し動かしてみるが異常はない。
緊張で体が強張るものかと思っていたけどそうでもないようだ。
朝食も問題なく喉を通ることができた。
その時に来夢に言われたのが「お兄ちゃん、緊張と完全に無縁で羨ましい」だ。
流石にそんなことはないと反論した。
本当に緊張と無縁の存在だったら、受験結果発表当日に僕は自分の目で見に行っていた……かもしれない。
「……なんでこんな日に受験当日のことを思い出したんだろう。でも、あの日が神無月ヤマトの始まりだったなー」
まだ数ヶ月前のことなのに、1年以上経ったかのように思える。
恐らく、それだけ今の生活が濃いということだろう。
僕自身、今の日常に不満なんてないし、高校受験に落ちたことに今更何も言わない。
今の僕があるのはあの時、義姉さんの話を受けたのがきっかけ。
今日はその集大成の1つに過ぎない。
「よしっ! 今日の配信、なにがなんでも絶対に成功させるぞ!」
***
待機中……
もうすぐだ!
何とか仕事終わらせることで来た
夜勤明けだが、俺の目はビンビンだぜぇ!
おい、始まるぞ!
「おはようございます、ご主人様。あなたの神無月ヤマトです。今日は僕の100万人突破記念配信に来てくださり、ありがとうございます」
おはよう!
楽しみに待ってたで!
ウチのヤマト~、100万人突破おめでとう!
いやいや、俺のヤマトだ!
100万人突破おめでとう!
いや、僕のヤマトだ!
違う! 100万人突破したのは皆のヤマトだ!
100万人突破おめおめ~!
おめでとう、というコメントがたくさん飛び交う。
視聴数は既に5万を超えていた。
「改めまして、ご主人様がたのおかげで100万人突破することができました。本当にありがとうございます。今日は現在の予定では6時間。楽しんでいきましょう!」
楽しもう!
6時間ずーっと見てるよ!
今日のヤマト様テンション高いな
危険そうなコメントあって草生えるw
「ではさっそく今日のタイムテーブル表をお見せします! 今日のタイムテーブルは…………こちら!」
言い終えるタイミングでタイムテーブルは配信画面に載せる。
【100万人突破記念配信 タイムテーブル
10:00~ 凸待ち
11:00~ 神無月ヤマトの軌跡
12:00~ お昼ごはん料理配信
12:30~ 実食動画 (恋夢も出演!?)
13:00~ 視聴者参加型『Vtuber育成学園』バトル
14:00~ ヤマトの企画 (内容は時間が来てからのお楽しみ)
15:00~ ヤマト3DLIVE配信
16:00 終了
最後まで楽しんでいってね!】
いきなり凸待ちw
凸待ち最初かよ!
凸待ち後の方がよくない?
ヤマトの企画が気になる!
「ということで、今から凸待ちを始めたいと思います! コメント欄には最初から凸待ちということに疑問の声もありますね。まず初めに言っておきます。今回誰にも凸待ちすることを言っておりません。ので、僕も誰が来るのか全く想像がつきません」
え、誰にも?
知人に話したりもしてないの?
普通じゃないの?
告知すらしてないん?
「今回、告知すらしてません。凸できる人は僕のこの配信を見ている人に限りますので、今回ばかりは僕史上初の凸0の可能性があり————」
『ヤマトン、来たよ~』
「…………」
言ってる途中でwww
凸0の可能性がどうしたって?
いきなりこの人かよw
最初に凸るのは親衛隊の誰かかと思ってた……
最後まで言おうとした直前に早速凸してきた人がいた。
親衛隊の人ならもしかしたら、と思っていたけど、1番最初がこの人というのは完全に予想外だった。
「えー、お名前と職業の方お願いします」
『漫画家をしている一ギャイ。よろしく』
「ということでギャイ先生が来てくれました! ありがとうございます」
『ヤマトン、100万人突破おめでとー』
「ありがとうございます! ギャイ先生には夏休みお世話になったのでね、いつの日か一緒にお絵かき配信ができたらねって……あれ?」
少し話を伸ばそうとしたら、すでにギャイ先生は通話グループから退室していた。
名前を名乗って一言喋ってからの退室は僕の凸待ち史上初となる。
流石にこれには驚きを隠せない。
退出早っ!
一言言ってそのまま帰っていった……。
喋ってる途中に退出されてて笑ったw
ヤマトの凸待ちで初めてじゃない?
コメント欄も先ほどのギャイ先生の行動に対して大いに盛り上がっていた。
「えーっと、驚きの凸ではありましたが、気を取り直してのんびりと次の凸者を————」
『ヤマトさん! クイズ大会ぶりですね! 100万人突破おめでとうございます!』
『ヤマトくん、100万人突破おめでとう!』
待ちたいと思います、といおうとした瞬間、新しい人が凸してきた。
今度は2人。
当然のことながら、僕の顔見知りだ。
お、誰だ、誰だ?
聞いたことあるような声だけど、思い出せない!
クイズ大会……もしかして!
おお! この二人か~
「では、お2人とも、お名前の方お願いします」
『はい、ごろろっくスクール卒1期生の白馬リオンです!』
『イラストレーター兼Vtuberのミネルバです。ご主人様たち、初めまして!』
「ごろろっくクイズ大会で【リトルボーイズ】として同じチームになったリオン様とミネルバさまが来てくださいました! 今日はありがとうございます!」
『改めて、ヤマトさん。100万人突破おめでとうございます』
『本当におめでとう!』
「ありがとうございます」
ショタ系!
攻め受け妄想がはかどる!
リトルボーイズの他メンバーとミネルバ、ヤマトのコラボ見てみたいっ!
クイズ大会面白かったよ!
「今回は時間が限られているため、凸してくださった方からNG無しで質問に答えたいと思います。ギャイ先生は早々に抜けてしまいましたけど……」
『え~、急に言われても何聞こうか……』
『僕はもう決まったよ』
「ではミネルバさまから、質問どうぞ!」
『ヤマトくんは今後、性別を明かす可能性はありますか?』
「おぉ」
直球w
そこを聞いていくか!
これは性別戦争に再び火をつけるぞ!
確かに気になるな
直球すぎる質問に、コメントは大盛り上がり。
対する僕は予想していないところの質問に少し驚いてしまった。
「今後性別を明かすかどうかは分からない、ですね。もし僕が凛音さまやリューティー様といった方々と結婚すれば明かすかもしれませんが、今のところそのような予定はありませんので……」
『じゃあ結婚したら明かすの?』
「ですね。……結婚したら明かします!」
『言質取ったよ!』
言い切った!
ヤマトの性別を知れるのはヤマトが結婚した時か……
早くて後2年と4ヶ月くらいだな
知りたいようで知りたくない!
言ってしまった。
ノリと勢いで言い放ってしまったが少し後悔している。
僕が男の子だと言ってしまった時、ご主人様の態度が変わったらどうしよう、という不安がある。
だから今回は逆で考えることにした。
僕が結婚しなければ性別を公表しなくてもいいんだ。
『よし、僕の質問決まりました!』
ついにリオン様の質問は決まったようで、話題を逸らしたい僕はこの流れに乗った。
「お、ではリオン様、どうぞ」
『実は僕、現在のチャンネル登録者数96万人なんですけど、100万人を突破するにあたって何か気を付けた方がいいでしょうか?』
「……ぐふっ!」
『ぶふっ!』
僕は予想外の攻撃で10,000のダメージを受けた。
その質問は今の僕にものすごく刺さってしまう。
『や、ヤマトさん? 大丈夫ですか?』
「だ、大丈夫です……」
ヤマトに大ダメージw!
この質問はヤマトには効くw
もうやめて! ヤマト様のHPはもう0なのよ!
や、ヤマト様~!!
「そ、そうですね。常にチャンネル登録者数を確認して、今のうちに100万人突破待機配信の時に何をするか、考えといたほうがい、いいと……思います」
『なるほど』
リオン様はしっかり納得してくれたが、僕はアドバイスしながら心の傷を広げてしまった。
「ということで、白馬リオン様とミネルバ様でした。今日は本当にありがとうございました」
これ以上ダメージを受けないためにもリオン様とミネルバ様には退出してもらった。
流石に直球で聞かれるとは思っていなかった。
よく耐えた!
今のヤマトは立派だったぞ!
これは100万人突破を完全に忘れてたヤマトが悪い
おもろw
「言いたい放題ですね。まぁもう大丈夫です! 次に誰が来てもこれ以上ダメージを食らうことはないでしょうから!」
この時はこれ以上問題ないと思っていたが、この後、僕はこれ以上のダメージを何度も食らうことになるのだった。
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