第10話 初配信 #2


『質問に関してなのですが、トリッターで返信してくださったご主人様、ありがとうございます』

『今回質問の数が多く、配信中のコメントからも質問を受け付けたいと思い返信してくださった皆様の質問に答えることはできないのですが、よろしいでしょうか?』



いいとも!

分かった。

質問の内容が気になる。

超楽しみ!



なかなかの好感触。

念のためにトリッターの質問に全部答えろと言われた時のために、予備の質問も用意していたけど反論がなくてよかった。


『それでは質問に答えていきます。まず初めに「ヤマトと神無月撫子さんの関係を教えてください」ですね。正直います。これが一番多かったです。多分トリッターに来た質問の中で3分の1がこれだったと思います?』



それはそう!

それは気になる!

それが見たくてこの一週間仕事を頑張ったまである。

どうなんですか⁉


『これはですね正直言おうか悩んだんですけど、嘘をついてもそこまで意味ないし、何なら嘘を貫き通すのってつかれるので言いますね。僕は神無月撫子の実の子供です』



おおっ!

マジか!

撫子ママの息子キター!

いや、娘だよ!?

普通に考えればわかるやろ。



コメントには驚きの反応が流れていく。中には「分かってた」風にコメントをする人も見えるがほんの一握りの人数だけしかいない。


『それで僕とのお約束なんですが、僕のことを誰かに勧めるときはできる限り「神無月撫子の子供」として進めるのではなく、「このVtuber面白いよ」という風に勧めてください』



分かった!

どうして?

ヤマトが言うなら……

理由が知りたい!



『理由としてはいくつかあるけど、一つはお母さまではなく僕を見てほしいからかな。やっぱり、お母さまの名前が出ると、どうしても僕のことを「神無月撫子の子供」としてみてくる人がいます』


僕は中学校生活と同じ思いをVtuber生活でしたくない。

だからこそ、この願いだけは絶対に守ってほしい。


『だけど、僕としては僕自身を見てほしいのでお母さまの名前を使って広めるのはやめてください』



分かった!

いい心がけだ!!

新人のくせに調子乗んなってコメントしてごめんなさい!

俺はヤマトを友達に進める!



リスナーの皆さんはどうやらわかってくれたようだ。

少ししんみりした雰囲気になってしまったから、空気を換えよう。


『もう一つは、お母さまの影響力を知ったからですかね。初動画でチャンネル登録者数千人越えした時は驚きました』



それはそう

撫子ママの影響力なめすぎ

リアル話してるけど身バレとか大丈夫?



コメ欄の雰囲気がだいぶ明るくなってきた。


いい感じになってきたと思うと、気になる質問がコメ欄に出てきた。


『「身バレ大丈夫?」あー、せっかくですしこれも話しましょうか』

『身バレに関しては全然大丈夫じゃなかったです。近所の人にばれました』



バレたW

ドンマイ!

大丈夫なんですか?



『大丈夫ですよ。一応僕がVtuberやっていることは広めないでくれとは言っておきましたけど。じゃないとお母さまの子供がVtuberやってるってバレそうでしたし。いつかばれるとは思ってましたので。まさか声でばれるとは思ってませんでしたけど』



声で⁉

そんなことってある?

地声なんですか⁉



『はい、地声ですよ』


地声というとコメ欄はさらに盛り上がりを見せる


『そろそろ次の質問に行きましょうか。「どうしてVtuberになろうと思ったんですか?」ですね。これはなろうと思ったというよりもそれしか道がなかったといった方がいいですね』



どういう意味?

説明求む。

それしか目指さなかったならわかるけど、道がなかってどういう意味?

教えて、ヤマト君!!



『説明すると一ヶ月くらい前にさかのぼるんですけど、実は高校受験に失敗しまして』



え、ヤバない?

勉強できない俺でも高校は受かったぞ……

そういえば中学で三十点以上取れなかったって言ってたような……

ということは15歳!?



あ、やっぱりバレた。

まぁ元から配信内で年齢については公開するつもりだったので遅いか早いかの問題。しいて言えばもう少し楽しんでほしかったというのが本音です!


『年齢についてはあとで言うとして、結果が分かってすぐにカナママに呼ばれて家に行ったんだけど、その時に「Vtuberにならない?」と言われてVtuberになりました』



カナママから呼び出し!?

どういう関係?

花村カナ:

ヤマトちゃん、声真似止めて~!

カナママいる。どういう関係なんですか!?



やっぱりリスナーは僕とカナママの関係が気になるみたい。

念のために義姉さんに許可をもらっといてよかったー。


『カナママに許可をもらったから言いますけど、カナママは僕の兄さまと結婚しているんです。なので僕にとって義理の姉さまにあたる人になります』



え! 結婚!

初耳!?

この配信、ヤバいほど知らない情報が飛び交ってるんだけど!

普通の初配信じゃねぇぞ。

花村カナ:

もう、ヤマトちゃんったら姉さまだなんて、いつもみたいにお姉ちゃんって呼んでもいいのよ~。



『呼んでないので誤情報をまき散らさないで下さ~い』


コメ欄の大荒れ、さすがにそろそろ見慣れてきた。

時間も限られているし、急いで進めていくことにしよう。


『次の質問でトリッターからの質問は最後になります。「ヤマトは男の子? それとも女の子?」ですね。これに関しては秘密、としか言えませんね』



えー!

教えてくれよ!

ご主人様のお願いですよ!

男の子に決まってますよ!

いや、俺にはわかる。女の子だね!



『いい感じにコメント欄も温まってきましたね。それではこれからはコメントからの質問に答えたいと思います。ジャンジャン送ってきてください』


その一言ですごい量のコメントが流れていく。

あまりの速さに、マウスで流れてくるコメントを一度止めてから質問を探さないといけなくなってしまう。


『速い、速い! みなさん送りすぎですよ!』



いやいや、そりゃ送る

気になることがいっぱいありますよ。

私たちはヤマトくんのこともっと知りたいので

これくらい普通でしょ



流れていくコメントを見ながら、ひとつの質問を見つけた。

これはトリッターにはなく、母さんとの関係を話したら出てくる質問と思っていただけに目に留まりやすい。


『……最初の質問はこれで行きましょう。「演技が得意と言っていましたが撫子さんと同じ役者をになろうと思わなかったの?」ですね。これに関しては目指そうとも思いませんでしたね』



なんで?

意外……

説明求む!



『理由としてはものすごく単純で、両親とおなじ道に進みたくなかったからですね。両親には両親の人生があるように、僕には僕の人生がありますので。お父さまは、すぐに認めてくださいましたがお母さまは演技の稽古を毎日欠かさないという理由で認めてくださいました』



親に許可貰うとか偉っ!

私なんて親と喧嘩して家を出ていったよ。

さすが撫子さん! 親の鏡や

中学生で人生の話を親にするとか、早くない?



『早くないですよ。あと、僕が中学生かどうかは分かりませんよー。高校生かも知れませんし』



いや、それは確定

正確には中卒

高校生なわけが無い。だって高校行ってないから……

ボロ出過ぎ笑



やってしまった!

高校受験に失敗したのに高校生なんてあるわけないじゃん


完全に僕のバカが露呈してしまった。


『次に行きましょう! えーっと『好きなタイプが知りたい』ですね。好きなタイプ。そうですね。性格は明るくて面白い人が好きですね』



俺だな!

いや、俺だ!

私よ!

残念。僕だ!



次は見た目に関して言いたいけど、ここはぼろを出すわけには行けない。


『見た目に関して男性の場合は、そうですね』


少し考えこむ。


僕が女の子だった場合一番心に来るのは誰か。

女の子の気持ちになって考える。


『男性の場合は筋肉質にスキンヘッドの方が好みですかね。かっこよくないですか? スキンヘッドって』



スキン……ヘッド?

今から美容院に行ってきます。

ヤマト君の好みなんとなくわかる!

さらば、僕の髪の毛



何かおかしかったかな?

でも、僕に同意してくれる人もいるし大丈夫! ……だよね?

でも念のためにみんなを止めないと!


『ご主人様、落ち着いてください。あくまで見た目です。僕は中身を重視しますのでたとえ太っていても細くても、ロン毛でも気にしませんよ』



おお!

信じてたぞ!

やっぱり中身だよなぁ!!

女の子の見た目は?



『女の子はそうですね。たとえを出すなら飛鷹凛音さまですね。というよりも、僕、中学時代はボッチだったので、テレビに出てくる凛音さまばかり見ていたら、見た目の好みが凛音さまになった感じですね。ちなみにですが、凛音さまのことなら一、いや、二時間語れる余裕があります!』


少し熱く語ってしまったことで、コメント欄が爆速で流れていく。


もう少し行けると思ったけれど、目に入った時計を見ると、残りの時間が少なかった。


『そろそろいい時間ですので、次の質問にしたいと思います。どれにしようかなー。……これだ! ……えっ』



ん?

どうした?

変な質問でも引いたか?

巻きでお願いします

俺の質問こい!



ランダムで選んだ質問を見て僕は苦笑いを浮かべながら待ってくれているリスナーのために話を続けた。


『最後の質問ですが、これマジですか。「ヤマト君へ、好きです。ガチ恋してもよろしいでしょうか?」です』


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