ぬいぐるみとランドセル

ぐらにゅー島

入学

 僕は未だにランドセルを買ってもらった時のことが忘れられない。


 小学校に入学する前、黒いピカピカのランドセルを買っても貰った。僕の体にはまだ大きすぎるランドセル。僕の小学校への期待はぐんぐんと大きくなっていったものだった。

 ランドセルを買った時に、小さな人形のストラップをおまけで貰った。そのランドセルの会社のイメージキャラクターらしく、ほとんどの人が捨ててしまうようなものだった。どんなキャラクターかははっきりとは思い出せないが、大きな赤い鼻が付いたものだったことだけを記憶している。

 男の子が人形なんて、当時は珍しかった。ランドセルは男の子は黒、女の子なら赤、と決められていた頃のことだったから。なのに、なぜか僕はそのぬいぐるみのキーホルダーをランドセルに付けて登校したんだ。きっと、僕にとってはそのぬいぐるみも併せてランドセルだったんだ。

 小学校の校舎は、ランドセルみたいにキラキラしてた。


 入学して三年が経った。

 そのぬいぐるみもだんだんと薄汚れていった。そして、小学校にもだんだん慣れてきた。勉強は難しかったけど、友達もできて毎日が楽しかった。

 楽しかった。本当に楽しかったんだ。それなのに、僕にはもう校舎は輝いてなんか見えなかった。ランドセルもところどころ傷がついていた。


 卒業式の日になった。

 あのぬいぐるみはもう、ランドセルには付いていなかった。別に外したつもりは無かったのだけれど、ただ無くしてしまったみたいだ。

 ランドセルももうボロボロで、金具も取れてしまった。


 もうすぐ僕は中学校に入学する。

 中学校のカバンは布製だったから別にピカピカはしていなかったけど、なんかカッコよく見えた。そう、小学校に入学する時と同じだった。

 だから、僕はあのぬいぐるみが忘れられないんだ。僕は何処かに大切なものを落としてしまったに違いないから、そして、もうそれは元には戻らないから

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