第25話 二人の出会いは果たして

「おや? 貴方とは初めて会いましたね!」


 声をかけたのはガラハッドこと聖斗まさとだった。そして目前にいるのは……。


「そうですねー? 君は……盾ってことはガラハッドってとこですかねー?」


 そう言って彼の呼びかけに答えたのはモルドレッドもとい霧彦きりひこだ。彼は鋭い目つきでクラレントを構える。その様子を見て、聖斗の口角が上がる。


「えぇ! 正解ですよ――百瀬川ももせがわ霧彦さん?」


「……へぇ? オレの名前を知っているのはなんでですかねー? そこ含めて、訊かせてほしいですね?」


「勿論ですよ! 戦いの中で、語り合いましょう!」


 楽しげな聖斗の様子を訝しむ霧彦は、クラレントを構えつつ距離を取る。聖斗の動きを見極めるためだ。


「では、殺し合いましょう、か!」


 そう告げると、聖斗が盾で突進して来る。それをギリギリでかわすと、霧彦がクラレントを聖斗に向け、斬りに行く。


「せいっ!」


 振りかぶった剣を盾で防がれる。その盾を足蹴にし、霧彦は一端聖斗から距離を取った。


「ねぇ? そっちだけ名前知っているのってズルくないですー? オレにも教えてくださいよー」


「いいですよ! 自分は新居にい聖斗と言います! 質問は以上ですかね! さぁさぁどんどん殺し合いましょう! 生を実感するために!」


「うっわー中々サイコパスですね? アンタ。まぁいっか……?」


 含んだ言い方をすると、霧彦が再度攻撃体勢に入った。それを見て、聖斗は嬉しそうにする。


「いやー嬉しいですね! つまり同胞みたいなものというわけですか! これはますます気合が入りますね!」


「それはどーも? そんじゃま、ちゃちゃっとりますかー」


 そう告げると、霧彦が能力を解放し始める。それを見て、聖斗はさらに嬉しそうに微笑んだ。


「お! 能力の解放ですか! いいですね!」


 霧彦の能力解放の動作を見ても微笑みを絶やさない聖斗の様子に、霧彦はハッキリとした違和感を覚えた。


(コイツもしかして……この殺し合いゲームについて何かを知っている? いや、もしかしたら……)


 日が暮れてきて、辺りは闇に染まり始めている。今二人がいるのは城内の長廊下だ。灯りはあるが、場所が狭すぎる。


「盾相手に、この場所は不利でしょー? というわけで、追いかけっこスタート? なんっつってー!」


 そう言うや否や、霧彦は猛スピードで聖斗から距離を取って行く。目指すは、城内でももっとも広い……ホールだ。

 霧彦の狙いに気づいていないのか、聖斗は素直に後を追いかけてくる。


 (随分と素直ですねー? 怪しい、これは怪しい……どーしよっかなー?)


 急に走るのを止めると、霧彦が自身の魔女・モルガンに声をかける。


「モルガン」


『なんでしょう、モルドレッド』


「アイツ、関係者でしょー? そいで、っちゃそうなんでしょ? ならさぁ……ちょっと普通に話せたりしない?」


『そうですね……それはかと。ここは逃げることをお勧めします』


(難しい……ねぇ。そう来ちゃうかー。じゃ、まぁここは言うこと聞いておくかな?)


「じゃあモルガン、逃げるためのルート確保、よろしくお願いしますよ?」


『イエス、モルドレッド』


 モルガンが半透明な女性の姿を取り、霧彦の背後へと回る。そして、彼の翼となったモルガンの力により、霧彦は空を飛び、窓を強引に割って外へと逃げた。

 それを見た聖斗が、がっかりした顔で自身の魔女・ティロノエに声をかける。


「逃げられちゃいました! モルドレッドの魔女はモルガンでしたね! どうやらだいぶ――原典の関係に引っ張られているみたいでしたけど、大丈夫なんですか?」


 そう尋ねれば、ティロノエが少し沈黙した後静かに答えた。


『そうですね、計画外です。これは……厄介なことになったかもしれません』


「あーやっぱりですか! どうするんです?」


『王を決める選定式が始まっている以上、ワタクシではどうしようもありません。全ては――選定式の流れのままに』


 ティロノエの回答に、聖斗はゆっくりと盾を床に突き刺すと、右手を顎に当て考え始めた。


「でしたら……そろそろケイ卿にお会いしたいですね! なにせ、我らの王、アーサー王の兄君なのですから! あ、伝承では義兄でしたっけ? まぁそんな違いは些細なことです! さぁ、あんなにをお願いしますよ!」


『承知しました、

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る