掌編・すたーがすと

海猫ほたる

すたーがすと

 αケンタウリ星系にある惑星、プロキシマbの衛生軌道上にある宇宙ステーション、ケンタッリー3の中にある宇宙ファミリーレストラン『すたーがすと』はいつもは寂れて人気が少ないのだが、今日はいつになく賑わっていた。


 それもそのはず、今は、年に一度の宇宙蟹工船がプロキシマbに戻って来ていた。


 プロキシマbへの降下前に立ち寄った宇宙ステーションに下船した乗組員たちがディナーを食べに押しかけているのだ。


 壁面一面をに据え付けられたガラスの向こうには、惑星プロキシマbが見える。


 そんな、眺めの良い窓際の4人がけのテーブル席には、宇宙蟹工船から下船してきた若い女性3人組が座りんでいた。


 チャコ、クラウディア、サラ・ジェーンだ。


 3人はそれぞれ故郷の惑星は違えど、共に蟹工船の船員にしては若い同じ十代という年齢の近さ故に、すぐに打ち解けあい、休みの日にはいつも一緒に過ごしている。


 そんな3人の元に、エプロンを着た年若い女性の店員が、タブレットを手に近づいてきた。


 店員の胸元には、ミーコと書かれたネームプレートが付いている。


「いらっしゃいませ、ご注文は何になさいますか?」


「じゃ、ケンタウリ焼きを3つちょうだい」


「1人3つでよろしいですか?」


「3人で3つだよ。ワタシらそんなに食べられないって」


「かしこまりー」


 注文を取り終え、去っていこうとしたミーコであったが、ふとある事に気がついた。


 チャコ、クラウディア、サラ・ジェーンが座っている4人掛けのテーブル席の空いているイスに、大きな宇宙クマのぬいぐるみが置かれているのだ。


「あの……そちらのぬいは……」


 おずおずとミーコは3人に聞いた。


「ああ、これかい?」


 チャコはぬいぐるみを手に取り、抱きしめながらミーコに言う。


「これはね、ワタシらのもう1人の仲間、エリーなのさ」


 クラウディアとサラ・ジェーンも頷く。


「エリー?」

 

「ああ。ワタシらは前は4人組だったんだ。エリーは歌が上手くて、ダンスも凄かった。だから、アイドルになるために船を降りて地球に行ったんだ」


 そう言うと、チャコは窓の向こうの宇宙空間を眺めた。


「このケンタウリ星系からは、地球まで4.2光年……光の速さで行っても、4年は掛かる距離だから……エリー、次に会えるのは何年後かな」


「そうなんですね。エリーさん、アイドルになれてると良いですね」


 ミーコはそう言って軽く微笑むと、厨房に戻って行った。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

掌編・すたーがすと 海猫ほたる @ykohyama

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ