ぬいぐるみ

内藤 まさのり

ぬいぐるみ(縫い包み)

 私には愛玩するぬいぐるみはいない。だが毎日就寝している布団の横には猫科の動物と思われる二つのぬいぐるみがいつも横たわっている。妻が幼少の頃から可愛がっている「クタちゃん」と「ライラ」の二匹だ。妻曰く、40年以上にわたる親友とのことだ。


 先にも述べたが私には現在愛玩するぬいぐるみはいない。過去にも正確な意味においての〝ぬいぐるみ(ぐるみ)〟つまりキャラクターに似せて布を縫合し、綿などを中に詰めたもの、を可愛がった記憶はあまりない。ただ形のあるキャラクターおもちゃで遊んだ記憶はある。その代表格がウルトラマンシリーズのウルトラマンと怪獣たちだ。いわゆるソフトビニール製の人形だが、戦わせたりして遊ぶ為どうしても複数の個体が必要であり、両親に頼んで何体か買ってもらった記憶がある。そして毎日のようにそれら人形を戦わせて遊んでいた。そういえば息子たちもテレビゲームで遊び始める前は、ソフトビニール製のポケモン人形で頻繁に遊んでいた。しかし今それらは押し入れの中に眠っている。そこでふと疑問が湧いた。何故男の子は、いや女の子もそうだが、多くの子たちが歳を重ねるとぬいぐるみや人形で遊ばなくなってしまうのだろうか。


 私が考えるに、現実の中でさまざまな経験を積むにしたがって、物事の先が少しづつ読めるようになる。それによって逆に身の回りで想像力を働かせる機会が無意識のうちに徐々に削られ、次第に想像力が乏しくなり、ついには人形に魂があるかの如く扱って遊ぶことに抵抗を覚え始めるのではないだろうか。


 そして色々と考える中で、もう一つ疑問が湧いたのだが、その疑問に自分なりの答えを見つけることが出来なかった。それは〝ソフトビニール製の人形〟に比べると、妻がそうであるように〝縫い包み〟の方が長く、場合によってはその持ち主が亡くなるまで愛され続けるという点についてだ。


おわり

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ぬいぐるみ 内藤 まさのり @masanori-1001

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