呪いのぬいぐるみ
むーが
呪いのぬいぐるみ
やった! ついにアレを手に入れたぞ!
手にあまり可愛げがないウサギのぬいぐるみがある。素人が作ったのか左右の目の位置がおかしいし、全体的に形が歪だが、ただのぬいぐるみではない。呪いがかかった代物なのだ。
どんな呪いがかかっているのかは教えてくれなかったがそれはどうでもいい。重要なのは俺が呪われることなのだから。
俺は苦しんで死なないといけない。だから手っ取り早く苦しむ為、このぬいぐるみを買った。
あの時を思い出す。
あいつと俺は二人で家に帰っている途中だった。だが後ろの車がこっちに来てあいつだけが轢かれてしまったんだ。
今なら救急車を呼ぶなり周りに助けを求めるなり出来ただろう。
だが、あの時! 俺はぼーっと突っ立っているだけでただあいつが死んでいくのを見ているだけだった!
周りに俺は悪くないと言われたが、そんな事はない! 助かったかもしれないのに、何もしなかった俺が見捨てたようなものだ!
だから、あいつを見捨てた俺がのうのうと生きてて良い訳がない!
早速、ロープを縛りぶら下がっていても足が届かない高い位置にロープをくくった。
早い話、首吊りをしようと思う。足元の近くにぬいぐるみを置く。
苦しんで死ねますようにと願いながら、首をロープの輪に通し踏み台にしていた椅子を蹴って退かした。
一瞬、首が締まったがロープが切れて足がついてしまった。
おかしい。ロープはさっき買ってきたばかりの新品なはずなのに。
まだだ! ロープは残っているんだ。まだ焦る時じゃない。
もう一度縛って首吊りを試みる。
駄目だった。またしてもロープが切れて首が締まらない。
その後何度か首吊りしようとしたが毎回ロープが切れ、使い物にならなかった。
仕方ない。今日は諦めて寝るしかないか。
風呂に入り、寝る時にも苦しむようぬいぐるみを枕元に置いて寝た。
悪夢は見ないで安眠だった。
なんでだよ!
次の日は包丁で切って死のうとしたが、上手く切れず、また次の日も電車に轢かれて死のうと試みたが近くの人に止められてなかなか死ねない。
どうして駄目なんだ!
机に勢い良く叩き付けた拳が痛む。
まるで死ねない呪いにかかっているみたいじゃないか!
はっ! 死ねない呪いだと?
……まさか、そういうことだったのか!
じゃあこのぬいぐるみを捨てればいいんだな?
ぬいぐるみを捨てようと外に出た時だった。スピードを出した車にはねられて意識が朦朧としていた時にあいつの声が確かに聞こえたんだ。
「あの時の事は怒っていないから僕の所にまだ来ちゃ駄目だよ。あのぬいぐるみを僕だと思って大切にしてね」
目が覚めたら病院だった。体のあちこちが痛い。
全くあいつときたら、まともを装いやがって。絶対俺の事見て笑っている癖に。
そう思いつつも勝手に口角が上がって笑顔になっていた。
まあ仕方ない。一応親友の頼みだし、生きてやるか。
あのウサギのぬいぐるみはひっそりと病室にいて彼を見守っていた。
呪いのぬいぐるみ むーが @mu-ga
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます