第39話:謝罪と紹介

 翌日となり、マギスはエミリーとヒースを伴って青空教室へ足を運んだ。

 途中で抜けてしまったことを生徒たちに謝るためと、ヒースを紹介するためだ。


「みんな、昨日はすまなかったね。急に用事を思い出しちゃってさ」

「なんだよ、マギス兄! 俺たち、めっちゃ頑張ってたんだぞ!」

「そうだよ先生!」

「僕も見ていてほしかったなー!」


 いつも通りリック、アリサ、ティアナがマギスに絡んでいく。


「こら、三人とも。先生が困っているじゃないか」

「そ、そうだよ。どうしても外せない用事があったんだよ」

「ピピも、先生は悪くないと思うのー」


 そこへカイト、オックス、ピピがマギスを庇うように言葉を掛けてくれた。


「三人とも、ありがとう。でも、やっぱり用事を作ってしまった僕が悪いよ」


 苦笑しながらマギスはそう口にして、すぐに頭を下げた。


「本当にすまなかった」


 リックたちも冗談半分にマギスへ絡んでいたからか、素直に頭を下げられたことでたじろいでしまう。


「全く。謝られて困るなら、絡むなよな」

「う、うるせえな、カイト! ならマギス兄、次は絶対に最後まで付き合ってくれよな!」

「あぁ、もちろんだよ」


 思わずといった感じでリックがそう口にすると、マギスは顔を上げながらはっきりと答えた。


「それと、みんなにこの子を紹介したかったんだ」


 生徒たちへの謝罪が済んだマギスは、次にヒースを紹介することにした。

 ずっとマギスの後ろに隠れていたのだが隠れ切れておらず、内心ではリックたちも気になっていた。


「誰なんですか、先生?」

「この子はヒース。実は昨日の用事なんだけど、この子を迎えに行っていたんだよ」

「そうなんだ! よろしくね、ヒース君! 僕より年下かな? 何歳なのかな!」

「えっ? あの、その、えっと……」


 アリサの質問にマギスが答えると、すぐにティアナがヒースに質問をした。

 矢継ぎ早の質問にヒースが困惑していると、そこでもカイトが助け舟を出した。


「だからティアナ! ヒースが困っているだろう!」

「えぇ~? 気になるじゃ~ん!」

「気にはなっても聞き方があるだろう! ですよね、先生?」

「カイトの言う通りだね。ヒース、ゆっくりでいいからみんなと話をしておいで」


 マギスは普段通りにそう口にしたが、ヒースは勢いよく彼へ振り返ると驚愕の表情を浮かべていた。


「……マジっすか?」


 見た目がエミリーよりも幼いので、マギスは彼女と同じようにヒースにも生徒たちと交流を持つよう伝えてある。

 当初はヒースもそのつもりだったが、人間の子供がここまでがっつり絡んでくるとは予想もしていなかったのか、彼はマギスに助けを求めようとしていた。


「当然だろう。君はまだ、子供なんだからね」


 しかし、マギスは満面の笑みを浮かべながらヒースを突き放し、子供たちの方へ向かうよう口にした。


「我も助けてやろう。さっさと行くぞ、ヒースよ」

「……分かったっす、姉御」


 やや俯き加減に歩き出したヒースの背中をエミリーがポンポンと叩きながら、そのまま生徒たちの方へ歩いていった。


「ヒース君は大丈夫でしょうか?」


 残ったマギスに声を掛けたのはニアだった。


「大丈夫だよ。エミリーが仲良くなれたんだから、ヒースもきっと大丈夫」

「マギスさんがそういうなら、きっとそうなんでしょうね」

「どうしてすぐに信用してくれるんだい?」


 即答で信じてくれたニアに疑問を抱いたマギスが問い掛けると、彼女は微笑みながら頷いた。


「だって、マギスさんは私の……いいえ、私たちの命の恩人ですから」


 そう言ってくれたニアも生徒たちの方へ歩いていく。


「……ニアの魔法が原因でヒースが近づいてきていたとは、言えなくなっちゃったなぁ」


 軽く頭を掻きながら、マギスも生徒たちの輪に入っていったのだった。

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