私情の果てに
麻倉 じゅんか
本編
彼の元を訪れた時、彼女は悲痛な声をあげた。
「何を……してるの……ッ!?」
そんな悲痛な想いを伝えたくても、まともな声が出ない。
彼女はそれほどに
彼女が目にしたもの。
それは彼女にとって信じがたい光景だった
互いに一糸纏わない姿をしている、彼と、彼女にとっても大事な存在の女の姿。
彼は女に絡みつき、相手を粘液にまみれさせつつ愛おしんでいた。
声なき声で叫ぶ彼女の姿に、彼は遅れて気付く。
振り返るとそこには顔全体を赤くして激しい剣幕を見せた彼女がいた。
彼の動きが凍りつく。
こんなに怒った彼女など、出逢って今まで見た事が無い。
彼は困惑しているようだった。一体これはどうすればいいのだ、そう考えているのかも知れない。
しかしこの緊迫した状況でも、彼は女から手を離しても、相手の腰にからみつけた脚までは離さなかった。
或いは、人生で初めて知った快楽を簡単に離せないのかもしれない。溺れ過ぎてしまい離すことを忘れてしまったのかもしれない。
やがて彼は決意を固めた。
――今、抱いている女の方を守ることを。
彼は女を守ろうとでも思ったのか、がっしりとしがみつくように抱いた。
冷たく、彼女に背を向けた。
そこでとうとう、彼女の我慢も限界に達した。彼女は憤慨した。
「かーえーしーて! あたしのまーちゃん(メス熊のぬいぐるみ)かーえーしーて!!」
おねえちゃん(3)が弟(1)に飛びついたので、私は急いで駆け寄っておねえちゃんを止めた。
「いやいや、ケンカはダメよ! いい加減にしなさい!」
「なんかおかしなモノローグつけて動画撮ってた君もね」
旦那がいつの間にか帰ってきていた。
そして叱られた……。
悔しいけど、シメがないとしまらないので、もうちょっとだけ続ける。
「そして彼女は、彼の体液(ヨダレ)にまみれてしまった女を無事救い、抱きしめるのだった」
「だから、そういう物言いはやめなさいって」
私情の果てに 麻倉 じゅんか @JunkaAsakura
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