僕は、ゾンビ。

@orion23

僕は、ゾンビ。

 僕は、ゾンビ。

名前はあるけど、呼ばれたことがない。

お腹がすくから、ご飯を食べる。

食べても心がないから、満腹にならない。

だから、また食べる。

食べるためには、働かないといけない。

働いたらお腹がすいて、食べたら働かないといけない。


 僕は、薄暗い倉庫で荷物を運んでいる。

『チリン!』日が沈むとベルが鳴るので、気味悪がって誰も近寄りません。

このベルは、友達のオバケちゃん。

荷物をどこに持っていくか教えてくれる。

「何だい、オバケちゃん?」

「あら、私ちゃんと名前あるのよ!」

「だって君は、オバケだろ」

「もういいゎ、休憩の時間よ」

「わかった。休憩の後でいいから、このお手紙をあの娘に届けてくれないかい。」

「いいけど、返事は来ないわよ。だってあの娘、力持ちが好きだもの」

僕はオバケちゃんにお礼をすると、重い荷物を持ち上げてトレーニングをした。

それから、食べて働いてトレーニングをするので、力持ちになった。


 『チリン』

「オバケちゃん、あの娘から返事は来たかい?」

「もう、私にはちゃ〜んと名前があるのよ。それと返事は、来ないわよ。あの娘は、足の速い人が好きだもの」

僕はオバケちゃんにまたお礼をして、手紙を渡すと、外に出て走り出した。

それから、食べて働いてトレーニングをして走るから、誰よりも力持ちで足の速い体になった。


 『…チリン』いつもより小さな音。

「オバケちゃん?、返事は来たかい?」

「返事は来ないわよ。だって一番大切なものが無いもの」

「何だい?」

「心よ」

「それは、どうしたらいいんだい?」

「私の心をあげる。あなたには素晴らしい体があるのに、心が無いのは残念ね。私には体がないから」

「ありがとう」

僕は、しばらく目をつぶり、ゆっくり開けると、

腹ペコじゃなくなった。

嬉しくなってオバケちゃんを探しても、ぼやけてなにも見えません。

ボタボタボタ、目からどっと涙が流れ出し目ん玉がこぼれ落ちます。


 『ゔわ〜ん』その日から、ここは泣き虫倉庫。

日が沈むと、悲しくなるので誰も近寄りません。

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