第57話「2人なら」
魔力全開放の反動で1ヶ月間意識を失っていたサイは、先日ようやく意識を取り戻し、この日から学園にも復帰できた。
そんな彼にいきなり衝撃的な提案が……。
「僕が……四天王に……?」
「ええ。先日、カリバー・シイハ君が自ら四天王の地位を辞退すると私に宣告してきたので、彼はもう四天王ではなくなりました。」
生徒会室で、サイはルージュから四天王にならないかと勧誘されていた。
突然の事で戸惑う彼は、一旦気持ちを落ち着かせて、何故カリバーが四天王を辞退したのかとルージュに聞く。
「カリバー君は貴方に2度負けました。それを彼は「四天王失格」と言い、辞退する事に決めたそうです。」
「なるほど……。」
「そこで!!」
その時、元気な声を上げながらアンジュが生徒会室の扉を開く。
だが生徒会室に来たのは彼女だけでなく、四天王であるアレン、メメント、そしてジェネもそこにいた。
「僕が君を四天王にできないかとルージュ先輩に推薦したんだ。君こそ四天王に相応しい存在だと、僕は思ってるんだ。1年生が四天王になってはいけないなんてルールは無いんだしさ。」
「私もそう思う。1年で3人の四天王を倒すのはこの学園では君が初めてだと、学長が仰っていた。」
各々サイが四天王に相応しい理由を語るアレンとメメント。
それを聞いたサイは、先程から思っていた事を指摘する。
「でも……僕は武闘大会でジェネに負けたんですよ?だったらジェネの方が四天王に相応しいじゃないですか?」
「君ならそう言うと思ったよ。」
「え……?」
だが、彼の意見をジェネ本人が否定しようと理由を語る。
「だけどね、こんな見た目だが私は200年前の人間の生まれ変わりなんだ。つまりこの世界ではイレギュラーな存在って訳。魔導王の力を振りかざして四天王の座にあり着くなんて横暴な真似、私にはできない。」
「……。」
「だから君さえ良ければ、四天王になってくれないかな?四天王になれば学園での地位と名誉を得られる。そして四天王は冒険者ギルドや王国騎士団からも注目され、将来は安泰だ。」
「でもやっぱり僕には……だって僕が四天王3人に勝てたのはジェネのお陰ですし……。」
今度は「君は四天王の3人を倒した」と言う事に対して疑問を浮かべるサイだったが、それに対してジェネはある事をする。
「ならこうしよう……チェンジ!!ジェネシスタ!!」
ジェネがそう唱えた瞬間、彼女は意識を失い、その身体を隣のメメントが支える。
そしてサイのポケットに入れていたジェネシスタに、ジェネの魂が宿り、飛行魔法で飛行しながら彼女がポケットの中から出てくる。
「こうしてる間は私と君は一心同体、2人で1人だ。この状態なら、私の強さは君の強さと言ってもいいだろう。」
「そ、そうかな……。」
「それに、武闘大会でカリバーを倒したのは君の実力だろ?君の力と私の力が合わされば、まさに無敵の存在と言えるだろう!それこそ、四天王と言っても遜色ないレベルのね。」
ジェネにそう説得されたサイは、悩んだ末に腹を括って四天王になる決意をし、その意思をルージュに伝える。
「分かりました……僕、四天王になります!」
「そう言って貰えて嬉しいですわ!」
「新たな四天王の誕生だね。」
その場にいたルージュ、アンジュ、メメント、アレン、ジェネは、新たな四天王、サイ・トループの誕生を拍手で歓迎する。
「さぁ、四天王の座に着く為の正式な手続きをしましょう!」
「はい!」
そうしてサイは、ルージュと共に四天王の座に着く為の手続きを終え、その日から彼は晴れて学園のゴーレム決闘において最上位の強さを誇る4人、四天王の仲間入りを果たした。
翌日、1ヶ月に1度行われる、学園全クラスの生徒が集まって行われる朝の集会でこの件が発表され、彼が四天王になったと言う事が全生徒に知れ渡った。
「サイっち四天王になったんだって?おめでとう!ハンバーグ分けてあげる!」
「じ、じゃあ私は卵焼きを……。」
「あ、ありがとう……。」
その日の昼休み、ロッソ隊の4人と弁当を食べていたサイは、彼女らに祝福をされ、トライアから弁当のおかずであるハンバーグを、ヘレスからは卵焼きを貰い、それを彼はありがたく受け取る。
そしてそこにサイのライバルであるキーンが現れ……。
「サイ!放課後俺と決闘しろ!四天王となったお前を倒して、俺が新たな四天王になるんだ!俺はお前に勝つ為に父さんに協力してもらってメガゴーレムを作った!これで勝負だ!」
「……分かった。放課後決闘しよう!」
「おう!覚悟しとけよ!あと四天王になったの、おめでとな!」
キーンはサイに決闘の申し込みをした後、捨て台詞を吐いて帰っていった。
「男の子の世界って奴だね〜。」
「頑張ってくださいね、サイ君。」
「う、うん。」
キーンに決闘を挑まれたサイは、ロッソ隊の女子達に応援され、決闘へのやる気を出す。
その日の放課後、彼は四天王になって初めての決闘をする事になる。
「ジェネ、早速頼らせてもらうよ。」
「もちろんだ。だが操縦は君に委ねる。それで良いね?」
「うん。ジェネの事、使いこなしてみせるよ!」
決闘舞台を前にしたサイとジェネは、少し話をした後、ジェネシスタに魂を宿らせたジェネをサイが決闘舞台に置き、魔法操縦桿を出現させる。
「相手がどれだけ強くても、俺はやるぜ〜!来い!」
「うん……行くよ!」
「決闘……開始!」
そうして、事前に決闘場に呼ばれていた決闘委員会の生徒の合図によって、決闘が始まる。
サイは負ける気がしていなかった。何故なら、ジェネと組んだ事で無敵の力を手に入れた自分なら、どんな敵にでも勝てる気がしたからだ。
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