ぬいぐるみ

まるべー

第1話

「ただいま!」


我が家にはぬいぐるみがある。うちのお母さんがとってもとっても大事にしているぬいぐるみだ。お母さんいわく、もう25年もうちにいるらしい。


「おお、お帰り。咲夜さくや


あと、このぬいぐるみたまに喋る。というか、たまにじゃないくらいの頻度で喋る。しかもなかなかのダンディーボイスで。


お母さん曰く「お母さんの腹話術」らしいが、どう考えてもそうではない。現に今のようにお母さんがいない時も喋るし、お母さんが絶対に出さないような声出してるし。


「あら、おかえり〜咲夜。今日の晩ご飯はハンバーグよ!腕に寄りをかけて作るから期待しておいてね!!」


おお、ハンバーグ!うちのお母さんのハンバーグって美味しいから毎日でも食べたいんだよな〜。


「なぬ、ハンバーグとな!!」


なんかぬいぐるみ動いたんだが。そして素晴らしく機敏な動きですくっと立ち上がったんだが?いや、流石に気のせいか。


「お父さんも、久しぶりにお前の作ったハンバーグを食べたいな」


「うふふ、ぬいぐるみのあなたにはハンバーグなんて食べられないでしょ」


そ、そう。たとえ、そのぬいぐるみがテクテクと歩いて行ってうちのお母さんに話しかけたとしてもこのぬいぐるみは普通のぬいぐるみだ。


それにしてもなんでお母さんは一切動じないの?









「ねえ、お母さん。このぬいぐるみって一体何者?」


時は晩ご飯。流石に気になったぬいぐるみについてお母さんに聞いてみた。まあ、いつも聞いていていつも答えてくれないから今日も答えてくれないだろうけど。


「そうね。あなたももうこのことについて知るべきなのかもね…」


え?話してくれるの?いつも拒否してたのに?と考える私を置き去りにお母さんは話し始めた。


「実はね、このぬいぐるみ…。我が家のお父さんなのよ!」


「それは知ってる」


たまにこのぬいぐるみ自分のことお父さんとか言ってるし、お母さんもぬいぐるみのことあなたとかお父さんとか呼んでるし。


「え?なんで知って…」


「なんで、ぬいぐるみがお父さんになったの?」


本題はそっちなのだ。お母さんに「逆になんでアレで隠せてると思ったの?」と聞きたくなる気持ちを抑えながらも質問する。


「それは秘密よ」


…。


「ほ、ホントはお母さんも知らないの!…す、すごい怖かった。お母さん実の子供に命の危機感じちゃった」


なんだ、知らないのか。それなら仕方ない。


「そ、そういえば!咲夜今日帰ってきた時すごくご機嫌だったわよね。何かあったの?」


「まさか彼氏か!?」


この父親ぬいぐるみうるさいな。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ぬいぐるみ まるべー @marub

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ