美咲ちゃんのクマちゃん

あんとんぱんこ

第1話完結

「美咲ちゃん、泣かないで。ずっと一緒にいるから」

「美咲ちゃん、良かったね!頑張ったもんね。私も嬉しいよ」

「美咲ちゃん、大好きだよ。だから、ギュッて抱きしめて」

いつもそばに居る美咲ちゃんには、私の言葉は届かない。

でも、それでいいの。

どんな時でもそばに居れるのが、幸せだから。


美咲ちゃんに初めて出会ったのは、まだ美咲ちゃんが赤ちゃんの頃。

お母さんに抱っこされて、おじいちゃんとおばあちゃんと一緒に美咲ちゃんがお店に来た時。

薄い茶色の短い髪をおちょんぼにして、クリクリの大きな瞳で、私と一緒に並んでる沢山のぬいぐるみを見てたの。

お母さんがどんな子を示しても、見てるだけだった美咲ちゃんが私の時だけ手を伸ばしてくれたの。

そのまま美咲ちゃんのお家に連れて行って貰って、それからはずーっと一緒に居るの。

ご飯も寝んねも、トイレトレーニングの時も、初めて1人でお風呂に入る時も見てたわ。

ずっと「頑張れー!」って応援してたの。

小学校の入学式の日の朝はギュッてして、卒業式の日の夜も抱っこで2人で寝たわ。

恋の内緒話も、友達との喧嘩の話も、全部私に話してくれたから、私もずっと美咲ちゃんを抱きしめながら聞いてたわ。

笑顔も不安も泣いてる時も、ずっとずっと1番美咲ちゃんのそばに居るのは私だったの。

中学校の時の初めての恋に、高校受験、初めての彼氏とのお泊まりの日は、私も不安だったわ。


就職して引っ越す時も連れて行ってくれるか不安だったけど、ちゃんと今も美咲ちゃんのベッドに私の場所があるから、幸せよ。

いつか、美咲ちゃんがおばあちゃんになって私がボロボロになって、美咲ちゃんの最後の時にも一緒に居るのが私の夢なの。

だから、それまでずっとそばに置いてね。

あ、でも、たまになら美咲ちゃんの赤ちゃんができた時には、抱っこされてもいいな。

小さい時の美咲ちゃんみたいな、可愛い子だと思うから。

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