遺された

Rotten flower

第1話

トラックが揺れる。ただただ軽いものを運ぶためだけにこんなに大きいトラックを使うとは。運送料がかかるのでこちらとしては嬉しい限りなのだが。トラックにはテディベアが一つ。それ以外には何も積んでいない。受け取り側の気持ちを考えると、とても丁寧に運んでほしいのだと感じる。

軽い音がした。テディベアが倒れてしまったのだろうか。

丁寧に運ぶなら直さなければいけないのだが、高速なので止まれない。結局次のSAまでそのままということにした。

今、人を轢いたら誰かを転生させれるのだろうか。否、ただの殺人鬼である。何なら高速に歩行者はいない。

そんなことを思ううちに、テディベアが転がる音がする。またかとは、思いながらもトラックは高速を走り続ける。

俺はハンドルから手を離し、自動運転に身を任せた。別に離さなくても押した時点でハンドルは効かなくなる。


SAが見えてきた。


SAで軽油を入れる。俺が飲んだら確実に戻している色をしている。


悲しみが溢れていた。まさか私の妹が亡くなってしまうだなんて。

手元には花を持っていた。ただただ涙を流した。

妹は殺人事件でなくなった。父は人を信じられなくなった。母は自殺した。家族が壊滅状態に陥った。全てあの殺人犯の所為だ。

私達は神に捨てられたも同然な状態で泣いていた。


テディベアを戻した。

その瞬間、自分の中に何かが入ってくるとても気持ち悪い感覚がした。耐えきれずにその場で出してしまったことは秘密にしたい。

車を運転しようとし始めたとき、身体からだが動かなかった。アクセルも、何なら鍵も回せないことは勿論だ。


遺品整理をしていたが何故か妹が大切にしていたぬいぐるみ、テディベアが見つからなかった。

父がSNSで病院にあることを特定した。今日届くらしい。

特に妹の愛が詰まっているものなので人に触れてしまうと少々やばいらしい。

霊が入ってくるとか、まぁ嘘に決まっている。

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