毎日遅刻している俺、幼馴染との公開ディープキスを命じられる → 縁もゆかりも無かった美少女たちがウズウズし始めた
島尾
1.ディープキス決定~決行
第1話 うららかな春、俺の激ヤバ高校生活2年目が始まる
「ぅうん、起きちゃダメぇ……」
俺、
「もう7時なんだって」
「ダメ、寝たいぃ」
幼馴染の
春のうららかな陽光が、俺の高校生活を再び照らす。今日が高2になって初登校だから、絶対に遅刻するわけにはいかないのだが…………
「やばいって真那、もう7時2分だ」
「亮人と寝てたい!」
頑なに俺の身体にしがみついて、ベッドから解放させない。このねばねば系幼馴染が、俺の高校2年目の生活に早くも暗雲を立ち込めさせている。
「じゃあ、7時4分までな」
「うん」
*
8時5分。
「ぬああああああ!」
「亮人うるさいよぉ」
「遅刻だ遅刻、やべええええええええええええええええ!」
自転車を爆速でこいでも30分かかる俺の高校は、県内で4位の偏差値を誇る進学校だ。東京大学、京都大学、その他の名だたる大学に優秀な生徒を輩出し、過去には総理大臣や、「天災は 忘れたころに やってくる」という有名な言葉を遺した物理学者も輩出した名門。その校訓は
「遅刻厳禁」
とまあ、清々しいほど単純にして明瞭なのだ。
さてこの俺、切幡亮人は、この単純明快な校則を何度となく破っている。高校1年生の1年間で遅刻をした回数、なんと68回。すべて、幼馴染の桜真那のせいだ。この幼馴染は毎日のように俺のベッドに潜り込んで、すやすや寝ている。朝、俺が目覚めてベッドから這い出ようとすると、まるで昆虫が触覚で流体の動きを察知するかのごとく、瞬時に俺を捕獲するのである。そうやってアリジゴク的な人生を送る俺に、「遅刻厳禁」なんてハイレベルな校則を守れる
*
「んで、今日も遅刻したっつーわけか」
学校に到着してクラスの引き戸をズルズル引くと、担任の
すでに朝の会が終了していたらしく、鬼虎魚先生は教室から出るところでばったり出くわしたわけである。
あえなくお縄にかかった俺は、現在「第三職員室」という薄暗い部屋で、土下座させられながら尋問を受けている。机の上に足を組んで座った鬼虎魚先生は、上から目線で矢の先ように鋭い睨みをきかせる。申し訳ないことに、「短いスカートの中の白パンツが見えてます」と知らせるわけにはいかない状況だ。
「…………すみません」
「てめえ今まで何回遅刻したよ、言ってみろ」
「今までは、68回でした」
「正解だ。おれが毎回毎回カウントして、その度に伝えてるからなぁ。前回てめえは『もう遅刻しません』つった。で、今日は69回目をやっちまったってわけだ」
「すいませんっ」
「すいません、だと?」
薄暗い空間に一筋の光が差し、鷹のように鋭い先生の
「お前、まさかそれで済むと思ってんのか? 今日は2年生最初の日で、お前ら以外に誰一人として遅刻したやつはいねぇ。生徒の自己紹介ももう済んだ。1年のとき68回も遅刻したお前ら2人となんて誰も関わりたくなさそうだったぞ? 無理もねえよなあ、おれだって生徒の立場なら絶対関わりたくねぇよ」
「……ハイ」
「お前らなんざなぁ! もはや回復不可能な高校生なんだ! 遅刻大好きシ●クスナインカップルなんだよ! いいか、覚悟しやがれ堕落者ども。お前と桜真那には、それ相応の罰を下す」
「えっ」
その前にシ●クスなんちゃらって称号、撤回してくれ!
「亮人。お前には無期懲役レベルにヤバい刑を命ずる。もはや辛いまま生きていくのも嫌だろう。今日でお前の学校生活はお終いだ」
「ええっ! そ、そんな!」
待て待て。2年生が始まった瞬間に無期懲役レベルの刑を食らうって。どんな高校生活だよ! まだまだ楽しみたいよ、高校生! 遅刻しただけで人生どん底に落とされたくない!
「今日で69回目だ。この学校では69回を境にして遅刻回数がリセットされる仕組みになってるんだが、それはこの刑を実行した後の話。さて、罰を受けるか? 受けなかったら遅刻回数が70、71となって、お前は校則違反で退学することになるが?」
なんだよそれ。退学って。頑張って勉強して名門高校に合格したってのに。
「受け……………………」
「受け?」
「ます」
どんな罰なのかは知らない。予想するに、きっと拷問に近しいレベルの罰だ。でも、今日を逃したら退学。華の高校生活は、塵となって虚空に散る。
「どんな罰を受けるんですか? 可能な範囲でいいんで、教えてください」
知りたくもないのに、なぜか勝手に口が動く。
鬼虎魚先生はニッと笑い、腰掛けていた机からぴょん、と下りる
「キスだ」
刹那、どこからともなく風が吹き、俺の顔を撫でる。
「キ…………ス」
「桜真那とキスしろ」
ギラギラと光り輝く鬼虎魚先生の瞳。ニタァ、と口が裂け、獲物をロックオンする。
「ま…………真那とキス…………ですか」
「嫌か?」
「すごく嫌です」
「よく嫌がってくれた。ご褒美に極上のディープキスを命じる」
「は⁉」
「もしおれを満足させられなかったら、」
「ら?」
「ぐっひひひ。グヒヒヒヒヒ!」
白い歯を見せて、犯罪者のような笑みを浮かべる。第三職員室の空間が、なぜか縮んでいるような気がする。しかもさっきから俺の目に、謎の虹色の光がうねうねと見えている。幻覚……か?
「先生、俺の事情知ってますよね。どうしてキスしなきゃいけないんですか」
「遅刻回数の上限を超えたからだ。それ以上でも以下でもねえ」
1年のころから担任である鬼虎魚先生には、俺の深い事情を話してある。真那が不登校で、俺が毎日真那の世話をしているせいで遅刻しているんだ、と。真那はとある大問題を抱えていて、投げやりな態度を取ると家出をするのだ。俺が中学のときも2回あった。そのうち1回目は近所だったからすぐに見つかったけど、2回目は電車で空港まで行っていた。真那のスマホには特殊なGPSが内蔵されていて、俺と真那の親、そして真那の担任でもある鬼虎魚先生のもとに彼女の位置情報が常に送られている。
真那は自分が監視されていることに、気づいていない。
「考え直してください先生。真那は兄を失って以来、変なことになってるんです。前にも言いましたよね? 8年前に、真那の兄が失踪したこと。先生だってそれを考慮するって言ったじゃないですか。先生、もし俺と真那のキスを強要すれば、先生は裏切者ですよ」
鬼虎魚先生はポケットからタバコの箱とライターを出し、人差し指と中指で一本つまんで、ライターを鳴らし、プカプカと吸い始める。
「さっきも言ったが、限度がある。事情は分かってるさ。でも何事にも限度ってもんがあるだろ。お前らだけ例外ってわけにゃいかねぇんだよ」
「なんですか、それ」
「校則で遅刻回数69回に達したら罰則が下される。それがこの学校が設けた限度ってやつだ」
「あなたは、生徒の状態よりも校則を重視するんですかっ。それでも教師ですかっ」
「決まりに従わせる、それを破れば罰を下す。それが教師だ。できない理由を並べて嘆くのは、もう諦めろ」
くそ
くそ!
クソッタレが!
「あんた、それでも人間かよ」
「おれは人間である前に、鬼だからな」
「……またそうやって真那を裏切るんですね」
あれは、7月上旬だった。真那は毎日学校に来なかったせいで69回目の欠席をして、鬼虎魚先生は真那に一つの罰を下したんだ。真那はもう、留年が決定してしまった。出席日数が足りなくて。
「校則ってのはな、社会の縮図たる学校において、基盤となってんだ。教師であるおれが簡単に破ることもなければ、事情ゆえの甘い措置を取ることもない。無慈悲だと思ってくれて構わないが、必ず罰を下すのさ」
鬼虎魚先生はタバコを床に捨て、小さな足で踏みつぶす。
ちなみに鬼虎魚先生は、子供用のうわばきを履いている。色は、どっピンク。
「いいか切幡亮人。この世の中ってのは自由がない。日本が自由と民主主義を重んじる国だとか思ってるかもしんないがな、それはガチで間違いだ。この前だって宗教と政治が結びついてるってことが明るみになったろ。国家レベルの規模で考えるのが難しいなら、お前の身の回りで考えればいい。GPSで自分の幼馴染を監視しているお前が、自由を語る資格はないよなぁ。この学校を裏で牛耳ってるのがこのおれだってことも、すでにお前は知ってるよなぁ。いいか? この世界ってのは束縛と監視だ。権力ある者が、愚民を操る。それが自然界の掟であり、いかなる社会の掟をも破壊する力がある。切幡亮人、お前には――」
ギロリ、と睨む先生。
俺は一歩たじろぐ。
「自由なんかねぇぞ」
低い声で言い放った先生は、ス、と机から下りて、
「ちゃんと幼馴染とディープキスしろよ?」
草食動物の肉にありつける直前のような、嬉しそうな顔をする先生。
「い…………嫌だ」
「諦めろっつっただろ!」
「嫌だあああああああっ」
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