第13話

 俺とおばあちゃんは車で家まで送ってもらった。送ってくれたのはただ一人自宅退院に反対していた男だ。小太り眼鏡でなんだが隣国の偉い人に似てる。話し方はフレンドリーだが人の家庭をあれこれと詮索する感じがどうにも気に入らない。車いすのまま車に乗り込んだおばあちゃんは、車内で叫ぶことも暴れることもなく上機嫌だった。家に帰れるのがうれしいのか、この小太り男の話術が巧みなのか。あっという間に家について車から車いすごとおばあちゃんを下ろすと、この男勝手に玄関に上がり込みでかい板を玄関に運び込んだ。小太りのわりにこの男力強いな、と思っているとその装置を玄関に設置、二枚の板で玄関のいわゆる上り框を乗り越え、玄関に上がった後車いすは本体のでかい板の上に置かれた。小太りはおばあちゃんが乗っている車いすのタイヤを拭きながら、

「お母さんは?」

と俺に尋ねた。俺は咄嗟にごまかした。だがしかし小太りのメガネが何かを見通したかのように光って見えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る