人形の行進

ミンイチ

第1話

 この街では夜な夜な、人形の行列が行われている。


 行列といっても、ファンタジーなおもちゃの行列ではなく、百鬼夜行のような少し物々しい行列に分類されるものだ。


 町中の家だけでなく地下に埋まったものやゴミとして出されたもの、そして公園で作られた泥人形までもが意思を持つように動き出す。


 まずは路地裏で集まりだし、数が多くなるにつれて広い道へ、最後には駅前の商店街の道いっぱいになるまで人形たちは行列を作っていく。


 人形の先頭には絶対に泥人形たちがいて、後ろの人形が動きやすいように身を削って地面を均していく。


 泥人形の後ろには、捨てられたおもちゃたちがいて、他の人形が汚れないように泥人形が作った道から水気を吸っていく。


 その後ろから、誰かが持っている人形が続いていく。


 小さな子供用のぬいぐるみもあれば、ロボットアニメのプラモデルもあるし、大人向けのゲームとキャラクターのフィギュアもある。


 そして一番後ろにいるのは、ダンプカーやショベルカーのおもちゃと地面に埋もれていたおもちゃたちだ。


 ショベルカーは泥人形の土を拾ってダンプカーにいれ、ダンプカーが近くの公園の砂場にその土を運び込む。


 土に埋もれていた人形たちは自分の体を泥人形の土で覆い、通ったところに土が残らないようにする。



 こんなにも大規模な行列なら通りがかった人に見られることもある。


 そんな不運な人たちはその行列に組み込まれる。


 その行列の一番真ん中のあたりに人と同じくらいの大きさのおもちゃたちが集まっており、彼らの中心で歩かされ、歩くこと以外は何もできないのだ。



 そんな行列には、二つの終わり方がある。


 一つ目は、朝になることだ。


 太陽がのぼり、日光が彼らを照らしていくと、まるで光が当たったところが灰になったように崩れ落ちていく。


 二つ目は、駅のホームに入ることだ。


 駅のホームの改札付近にくると、おもちゃたちが整列して改札に並ぶ。


 そうして、前のおもちゃから一つずつ入っていく。


 改札に入ったおもちゃは光に包まれて消えていく。


 そして、全員が改札に入るか太陽がのぼって光に当たるとその行列は消えていく。


 消えた人形たちは元にあった場所に戻り、行列に巻き込まれていた人たちは自分の家に帰っている。


 戻った人形たちは一見何も変化はないが、よくよく見るとおもちゃのどこかに改札を通った回数が数字になって現れている。

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人形の行進 ミンイチ @DoTK

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