第五話~修業~




「ではデアドラよ。少し遠回りしたが、稽古を始めるとしよう」


スカーディアとデアドラ。互いの立場を認め合い、正式な師と弟子になった二人。


師であるスカーディアは休む間もなく修行の開始を宣言する。異論のないデアドラも一つ頷くことで返事を返す。


「早速組み手でお前の扱きたいところではあるが、まずお前が習得すべきはルーン魔術だ」


「魔術?アンタは俺を勇士にするんじゃなかったのかよ」


「そのつもりなのだがな…その前に一つ大事な話をしておかなければならない」


「大事な話?そんな話がまだあったのか?」


スカーディアは深い頷きを返す。スカディラビィアからスカーディア自身の事、バンシー等、様々な話を聞いたというのに、それらよりももっと重大な話だという。というよりも、スカーディアはなぜだか少し気まずげな表情すら浮かべ始末でデアドラから顔を背ける。


「スカディラビィアにはこの国特有の瘴気が漂っていてな。酸素のように匂いや目には見えないものだ。この瘴気は肉体を持たないバンシーや我には無害であるが、人間には有害でな」


「は?」


「少量であれば問題はない。しかし浴び続ければ人体には毒となる。私が見るに、持って三年ほどだろう」


つまりこうやって会話をしている最中にも、デアドラの肉体はスカディラビィアの瘴気を浴びて少しずつ蝕まれているということになる。突然の余命3年の宣言であった。


「めっちゃくちゃ大事じゃん!なんでもっと早く言わねぇんだよ!!」


「忘れておったのだ!言ったであろう我には無害だと!普段は気にしたこともなかったのだ!むしろ思い出したことを褒めるべきであろう!!」


ワーワーギャーギャー子供の様に言い合いをする二人。デアドラとスカーディア以外言葉を交わす存在のいないスカディラビィアに二人の口論が響き渡る。肩で息をし始めた頃、ようやく落ち着きを取り戻した二人は改めて話を始めた。


「はぁ…はぁ…話の流れ的にその瘴気をどうにか出来るのがだってことでいいのか?」


「うむ。ルーン魔術で瘴気を浄化してしまえば、死ぬ心配はなくなる」


その為にもまずはルーン魔術の基礎を学ばなければならない、とスカーディアは説明する。


スカーディア曰くルーン魔術とは古代文字による魔法陣で魔力を操り、様々な事象を引き起こす術らしい。


地上でも魔力を利用した事象の改変を行う術はある。


人間とは違う長命種であるエルフなどは生まれながらのマジックユーザーと呼ばれている。


彼らの多くは生まれた時から自身の中に多くの魔力を内包し、その扱いに長けている。しかしそれはエルフに限らず、地上に生きる人間たちは大なり小なり魔法と呼ばれる力を扱うことができるのは世界の常識である。


だが、デアドラにはルーン魔術などという魔法は聞き覚えがなかった。そもそも魔法と同じようなものと考えていいものかとも思う。


「ルーン魔術は古代の人類たちが使っていた魔術だ。現代人共が使用している魔法とはプロセスが違うようだな」


ルーン魔術では、いくつかの制約とプロセスを踏むことで魔術としての効果を発揮することができる。

 

その1、触媒の用意。

 ルーン魔術を使用するには、魔術の燃料となる生贄とも呼べる触媒を用意する必要がある。


 その2、刻印を刻む。

 ルーン魔術の基礎にして絶対の制約は、ルーン魔術はルーン文字によって行使することができる。用意した触媒を魔術式と利用するにはその触媒にルーン文字を刻む必要がある。


 その3、魔力供給。

 ルーン文字は古代人が扱っていた文字。それそのものに神秘が宿っている。しかし、古代の神秘をより近い形で現代にて体現するには、現代の神秘に通ずる魔力を織り込まなければならない。


 ここまでがルーン魔術を起動する為の準備段階であり、術式の構築である。魔力の供給期間が長ければ長いほど、触媒は強度を増し、魔術の汎用性や効力に関わってくる。


その4、行使

 触媒に刻んだルーン文字に対して感応するルーン文字を術者が描くことにより、ルーン魔術は初めて起動する。


 この四つのプロセスを行って初めてルーン魔術は使用することができる。


ルーン魔術は現代の魔法と比べると触媒を用いる必要があったり、多量の魔力と時間をかけなければ効果が出ないというデメリットがある。一方、一度術式が完成してしまえば、詠唱を必要とせず、自身の保有する魔力量には依存しないというメリットが存在する。

 

「つまり、ルーン魔術ってやつは触媒があってルーン文字さえ学べば誰でも簡単に使えるのか?」


「いや、それは違う。確かにルーン文字を知っていればルーン魔術を行使することはできるだろうが、それはあくまで知識の話であって技術ではない。下手に扱えば神秘は呪いとなって自分に還ることになる」


「じゃあやっぱり、俺がまともに使えるようになるにはそれなりに時間が掛かるってことか…」


「そうなるな。最も触媒に関しては心配する必要はない。ここは影の国。古代人が生まれるよりも前から存在している世界だ。そこらの石ころであろうと触媒としては逸品である」


 いかにスカディラビィアがルーン魔術と相性がいいのかを高説しているが、基礎のルーン文字をまずは覚えなくては話にならない。それでは遅効性の毒とルーン魔術の習得でイタチごっこである。



「思ったんだけど、師匠が俺に瘴気を浄化するルーン魔術を付与してくれればいいんじゃねぇの?」


「戯け。そのような甘えは許さん。死ぬ気でついて来いといったばかりであろう」


 ジト目でこちらを見つめる師匠から目を背けるデアドラ。この師匠ならそう言うと思ったがダメ元の提案だった。


「まずはルーン文字の覚えるぞ。あまり悲観することはない。覚えておいて損はないのだからな」




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早速修行開始!っと行きたかったのですが、イレギュラーにはイレギュラーな事態が続くものです。

二人の想定とは違いましたがこれも立派な修行ですので修行パート開始なのです!!


それはそうとスマホで自分の作品を見直してみましたが、少し字が詰まっていて読みにくいように見えたので少しずつ修正していく予定です。

そう言った面でも読者様方にアドバイスをいただけると大変嬉しいです!


少しでも面白い、続きが気になると思った方は応援、コメントやレビューいただけると嬉しいです!

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