幼馴染から貰ったぬいぐるみに盗聴器が付いていたんだが

橘奏多

第1話

 最近、幼馴染の様子がおかしい。

 ある日を境に突然様子がおかしくなり、特に俺に近づいてくる女子を牽制するようになった。


「……なぁ、百合ゆり。少し近くないか?」

「え〜、普通だよ? いつもと同じでしょ」


 普通とか言いつつも、思い切り腕を組んでくる。

 俺たち恋人同士ってわけでもないのに。


「なわけないだろ……はぁ」

「なに? 私と一緒だと嫌なの?」

「そういうわけじゃないけど……距離が近すぎるんだよ」

「だってりゅうを近くで感じていたいんだもん。あ、そうだ」


 百合は何かを思い出したかのようにバッグに手を伸ばした。もちろん、腕は組んだままだ。


「はいこれ、プレゼント」

「……プレゼント? 今日、なんかあったっけ?」

「特に何も無いけど、あげる」

「……えぇ? まぁ、ありがとう」


 プレゼントが入っているらしい紙袋を受け取ると、百合は満足そうに頷いた。

 その後寄り道せずに家に帰り、百合から貰ったプレゼントを開けてみることにした。


「それにしても百合の奴、なんで急にプレゼントなんか……って、ぬいぐるみ……?」


 紙袋から出てきたのは、手のひらサイズの可愛らしいクマのぬいぐるみだった。

 男子高校生にクマのぬいぐるみをプレゼントって……。


「百合め、もしかして俺の事からかってやがるのか?」


 はぁ、と深くため息をつく。

 するとそのタイミングで、百合から電話がかかってくる。


『もしもし? 気に入らなかった? ぬいぐるみ』

「百合、お前なぁ……」


 …………って、ん?

 俺、百合に対してまだ何も言ってないよな?


「竜なら喜んでくれるって思ったんだけどなぁ……」


 なわけないだろ。そんなことより……。


「てか百合、なんで俺が気に入らなかったってわかったんだ?」

「? 盗聴器付けてるから。そのぬいぐるみ」


 トウチョウキツケテルカラ……?


「……はい? トウチョウキ?」

「うん、盗聴器。だってずっと竜のこと近くで感じていたいんだもん」

「……」


 …………。

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幼馴染から貰ったぬいぐるみに盗聴器が付いていたんだが 橘奏多 @kanata151015

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