第3話 ……スライムだね?
……で、結局。顔バレを防ぐために俺は、彩花が持ってきていた狐の仮面も装着していた。どうやら昔、祭りか何かで買っていたらしい。顔面全部を隠すやつじゃなくて、目元だけ隠すやつな……もうペル○ナ5かとツッコむのも野暮だぞ。
「よし、これでバッチリだね!」
「ホントに大丈夫かよ……?」
「うん! じゃあいくよー!」
不安そうな俺のことなど気にせず、彩花はスマホを操作して……ダンジョン配信を開始させるのだった。
──
「やぁやぁ、みんなこんにちはー! 魔術師のレイだよー! 今日はなんと……ダンジョンに来ていまーす!」
『草』
『草』
『出オチ過ぎる』
『ダンジョン!?』
『行動が早すぎるんだよなぁ……』
『ダンジョンには近付くなって、テレビでやってたぞ?』
スマホから合成音声が聞こえてくる。ダンジョン探索配信で、ずっと画面が見れないだろうと思った彩花は、コメントを読み上げるソフトを追加していたみたいだ。まぁ……慣れてないようだから、かなり翻弄されているけど。
「おー、コメント早い……ってえっ? テレビで近付くなって言った? まぁ……立入禁止って言われてないなら、ギリギリ大丈夫かな?」
『草』
『セーフセーフ』
『セウト』
『炎上しないでくれよ~』
『いや、きっとこれはダンジョンに来たって体の配信だろ』
『ああ、コント的なやつ?』
『レイちゃん、ダンジョンの様子見たいです!』
「ダンジョンの様子? おっけー、外カメにするね! ……はい、これがダンジョンだよ! 何だか最近配信でやった、ゲームのステージっぽいね!」
そして彩花はダンジョンの壁や地面をカメラで映していくのだった。その様子を見た視聴者は、各々困惑の声を上げて……。
『ええ……』
『何ですかここ』
『マジのダンジョンで草』
『○ロム系?』
『セーブポイントを探すんだぞ』
『誰か隣りにいない?』
『きっとモンスターなのだ! 殺るのだ!』
「誰がモンスターだって?」
俺の言葉に反応した彩花は、カメラをこっちに向けて。視聴者に俺の紹介もしていった。
「あ、そうそう。今日は類もダンジョンに来てます! 諸事情により類はいつもの格好が出来ないので、黒魔術で人間の格好をしてもらってるよ!」
『草』
『草』
『おいwww』
『それアリ!?』
『VTuberとは……』
『お前、ついに3D化したんだな』
『ルイ、3D化おめでとう。この時をずっと待ってたよ』
『スパチャ来てて草』
『黒魔術便利過ぎるなぁw』
そんな生身の姿に歓喜? している視聴者に向かって、俺は軽く自己紹介をする。
「えーはい、どうもルイです。レイに半ば無理やり連れてこられて来たので、俺は何も悪くないです……炎上するのはレイだけで十分だと思います」
『草』
『かわいそう』
『まぁルイだし……』
『お前がレイを護るんだよ!』
『もっとお顔見せて??』
『手に持ってるのは何?』
手に持っている物を聞かれた俺は、カメラに映るようにそれを持ち上げて……。
「これはゴルフクラブ……レイから貰った武器だ。まぁ武器の攻撃力はともかく……敵とかが出るとは思えないんだけどな?」
「多分出るよ! ダンジョンだから!」
「何なんだよ、そのダンジョンに対する信頼は。それに俺、勝てそうにないモンスターが……キラー○シンとか出てきたら、余裕でレイ置いて逃げるよ?」
『草』
『ひっど』
『それはそう』
『○ラーマシンなら俺も逃げるよ』
『逃げるな卑怯者!!!!』
『長男もいます』
そんな俺の冗談(キラーマシンが出てきたら一目散に逃げるってのはマジだけど)を聞いた彩花は、全く疑う素振りも見せずに微笑んで。
「大丈夫だよ! 類は絶対に助けてくれるって信じてるから!」
「その信頼が謎なんだけどなぁ……?」
『信じられてんだよ』
『これで逃げれなくなったなw』
『レイちゃん怪我させたら許さんぞ』
『向こうで何か動かなかった?』
「え、向こう……? あっ、類、前見て!! 敵だよ!」
「はぁ? そんなアホな……」
と言ったのも束の間……正面からジェル状のうねうねした緑色の生物が、のっそりのっそりと俺らの目の前に現れたんだ……もしかしてこれは……。
「……スライムだね?」
「……いやぁ、○山先生のキャラデザって凄かったんだなぁ……」
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