幼馴染VTuberのダンジョン探索配信に一度だけ出演した結果『超神回』と話題になり、ついでに探索者のスカウトまで来た件について

道野クローバー

第1話 ダンジョンが生えてきたらしい

「ねぇ、るい! 近所にダンジョンが生えてきたんだって! 探索配信しに行かない?」


「……は?」


 俺の家に上がってくるなり、突拍子もないことを言ってきたコイツの名は羽石彩花はねいしあやかだ。この幼い顔立ちの赤髪ボブヘア少女は、俺の幼馴染であり、彼女であり……登録者40万人超えの人気VTuber『レイ・アズリル』の中の人でもある。どうして俺らが付き合ってるのかとか、どうして炎上してないのかとかは……話すと時間がかかるので割愛させてくれ。


 ……で、一方こっちは20歳フリーターの宮坂類みやさかるいだ。夢も希望も無い、非常につまらない若者……だったのが、彩花と一緒にゲームしたことがきっかけとなり、事務所にスカウトされて俺もVTuber『ルイ・アスティカ』の中の人をやることになったんだ。まぁ、俺の自己紹介はこのくらいにしておいて……。


「何だ、ダンジョンって……ゲームの話か?」


「違うよ! ニュース見てないの? 『突如として全国の各地にダンジョンが生えてきましたー』って!」


「いや、そんなタケノコが生えてきましたー、みたいなノリで言われても……」


 そもそもニュース番組が『ダンジョン』なんて単語使って良いのかよ……? 


「……」


 ……ここまで話を聞いた俺は、彩花のドッキリか何かの企画だろうと結論づけて。その疑惑を解消する為にテレビを付けたんだ……そしたら『速報』と書かれた横には、大きな赤文字で『ダンジョンが出現!!』とテロップが。


「…………ドッキリもここまで来ると笑えるなぁ……」


「だから違うって言ってるでしょ! ……そんなに疑うなら他のチャンネルも見てみたら?」


「……」


 俺は無言でチャンネルを切り替えるが、どれも似たような速報が流れていた。俺がよく見るお昼の情報番組のコメンテーターも、俺と同じように絶句して固まっていて……もう引くに引けなくった俺はスマホを手に取って、SNSの『つぶやいたー』。そして俺らの活動場所である動画サイト『YooTube』も覗いてみたが、皆一様に『ダンジョン』について情報を発信していたんだ……。うん……どうやらこれは……。


「…………信じるしかない……のか?」


「うん! 理解してくれたみたいで良かった!」


 彩花はそう言って、小さい頃と変わらない笑顔を見せてきた。


「いや、逆に何でお前はそんなすぐ順応してるんだよ……?」


「えっ? だってこんな非日常的なことが起こったら、ワクワクしてこない? それに私、よくファンタジー系のアニメ見てるし!」


「そりゃ初耳だ……」


 彩花にそんな趣味があったなんて知らなかったよ……そして彼女は続けて。


「それでね類、私が通っていた高校もダンジョンになってるんだって!」


「○ルソナ3かよ……学生は大丈夫なのか?」


「うん! 今冬休みだし、学校は無いみたいだよ!」


「いや、そういう問題じゃなくて……」


 生徒に怪我とか無かったのか? みたいなニュアンスで聞いたんだけど……まぁ無事なら良いよ。……それよりも。


「とにかく……そんな危なそうなものが出てきたのなら、俺らは近寄らないで。国とかに任せればいいだろ?」


「ダメだよ! こういう新しいことが起こったばかりの時は、法も追いついてないから……規制される前に急いで行かなきゃもったいないよ!」


「……」


 考え方が悪人のそれと同じなんですけど、彩花さんよ……。


「それに私達VTuberだし、話題の最先端に追いつく必要があるんだよ!」


「いやお前なぁ……まーたこっぴどくマネージャーに怒られるぞ?」


 彩花は過去に運営にも許可を取らず、一般の人(俺のことなんだけど)を勝手に配信に出したことで、マネージャーから怒られたことがあるのだ。それがきっかけで俺はVTuberデビューすることになるんだけど、それはまた別の話で……。


「だからまた勝手なことすると謹慎か……最悪クビだって考えられるぞ?」


「……」


 クビ、という言葉に彩花は一瞬怯んだような表情を見せた。でも、すぐに彩花は向き直って……。


「でも……それがあったから今、類はここにいるし! ……彼女になれたし! 今回も何か見つかるかもしれないじゃん! 私は後悔したくないの!」


「……!」


 俺は目を見開いた。そうか……コイツ。本当に生粋の『配信者』なんだな。面白いことが見つかれば、それを無視するなんて選択肢は無いんだ。そんな彼女に目を付けられている時点で、俺はもう逃げられないんだな。それを悟った俺は、やれやれと。


「はぁ……分かったよ。止めても一人で行きそうだし、今回だけ俺もついて行くよ」


「本当に……!? 類、ありがとう!」


「いや、マジで今回だけだからな? それにダンジョンなんて謎しかない、ヤバい場所なんだから……危険だと思ったらすぐに引き返すぞ? それでも良いんだな?」


「うん! 大丈夫!」


 彩花は元気に頷く。そして背負っていた大きなリュックを、よいしょっと両手で上げる動作を見せて、準備万端と俺にアピールをしてくるのだった。


「はぁ……じゃあ。今日予定していた『第二回、まりもカートガチタイマン配信』は中止して。ダンジョン探索配信、行くとしますか」


「うん! しゅっぱーつ!」





 ──

 ──


 これは「幼馴染のVTuber配信に一度だけ出演した結果『超神回』と話題になり、ついでにスカウトまで来た件について」の主人公と幼馴染がVTuberとして活動している最中に、ダンジョンが出現したら……というパラレルワールドのお話です。本編を読まなくても楽しめますが、気になった方はぜひ本編もどうぞ!

 https://kakuyomu.jp/works/16817139558026680015

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