業火の隠秘-帝冠任務-

恩賜芍薬/ Grace Peony(♂=

第1話 俺のはじまり

帝冠保持者という聞きなれない言葉を正良さんはまずはじめに説明した。

仕事の話じゃないの?という懐疑的な気持ちを恵の写真一枚で黙らるのだから手慣れたものだと背筋が少し冷えた。

「帝冠保持者はパスワードを持ってもらうことになるんだけどね。君はあんまり考えなくていい。グリーン、ブルー、レッドどれがいい?」

「え、えっとじゃあ、、、レッドで」

「わかった。でも大変になると思うからね、レッドは。先に言っておくよ」

「ああ、はい」

よくわらからないけれど、とりあえず頷く。

「このパスワードはうちで使えるものであって経済圏・宗教圏共通じゃないから間違えないでね。自分がレッドで相手もレッドだったからって相手も自分の仲間だなんて思っちゃだめだよ?」

「ああ、はい」

とりあえず頷くしかない。

「グリーンにもブルーにもレッドにもEscaperっていう脱出許可証持った人がいるんだけど、これについても信用しちゃだめ。下手すると財産全部ぶん取られるからね」

「えー、、、」

「帝都くんにもEscaperって脱出許可証交付されてるよね?」

「え?」

「戸籍のここ。これがその印」

「亜路村が?」

「そう。帝都くん、亜路村のこと知らないの?」

「俺や恵の故郷ですけど」

「ああ、そういう感じなのか。誰とやるって言ってたっけ?」

「三条院忠兼とジェラルド麻野と紀平智柚です」

「うーん、、なるほどねえ。卓くんとじゃないんだね、、、」

「卓のこと知ってるんですか!?なんで??!!」

「、、ということを知らなかったということが俺にとっては不安でしかないよ」

2017年、亜路村から俺は上京した。喜び勇んでというと事実を理解した今の俺には幼稚な響きに感じられる。


正良さんの言う通り、俺はある意味財産を全部ぶん取られた。放棄しなければならない状況にまで追い込まれたのだ。

ジェラルドも忠兼も智柚も亜路村と恵の関係を理解して俺をスカウトしたらしい。


「帝都は恵さんの初恋の人だから、これほど最強のジョーカーはないよな」

「しかも帝都も恵さんも呑気だからお互い普通に再会して恋愛できると思ってるんだからおめでたいっていうか」

喫煙所から聞こえてきた話に目の前が真っ白になりかけた。

「同じようにしてやるから今は少し休んでいろ」

見知らぬ声に助けられた。声の主はスカーニーだった。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る