第13話 蛇の脱皮
受刑時空旅人サイドには亜種白路を盲信していた者も少なくない。貧しさや治安の悪さはひとりの金持ちのせいであると信じて疑わないのは、その金持ちに至らしめた歴史的プロセスや経済の仕組みを知らないからであり、なぜ知らないかと言えば教育が脆弱であるからだ。
「意図的に脆弱にしたとしか思えない。そして、見過ごしてきたというのは過失であり、逆説的には故意が立証される。それぞれの役割が存在したのなら内乱罪、もしくは騒動罪か。どちらにしろ法益侵害だ」
経済の流れは難しいわけではない。神の見えざる手さえも需要と供給によって自然に発生している。亜種白路は元老院として慈善活動の名目で海外に遊びに行かせてもらえる。(元老院なんていうものはこの8月までその程度の仕事しかできていなかった。していなかったのではなく能力の話としてできなかったのだと現在各国の元老院従事者が日々直面している。震撼すべき事実であると、呆れながら。)
その際にこの神の見えざる手が働いたのは、自分たちが支援に来たからだと吹聴することで信頼を無料で獲得し、その見返りとして証券を売りつけていた。
投資家は金利の低い方に投資をする。誰でも安いものを好むからだ。
神の見えざる手の仕組みはこれだけであり人為的な何かではない。もしも人為的な何かであると言うのなら供給が需要を上回ったのだ。ただそれのみであり、慈善活動に赴いたことが起因ではない。
「俺たちが祖国のことを真剣に考えた時、貧しさと治安の悪さにどう対処すべきだったのか。いや、今ならもっと問題を限極できる亜種白路に騙されないためにはどうすべきだったのか?」
Mjustice-Law家が悪の根幹だという言い分は第二次世界大戦以前から存在しており、その最も象徴的な事件がホロコーストだった。そしてさらに神話の時代にはユダヤ人のバビロン捕囚が史実として残されている。歴史はそれ単体では意味を成さない。解釈によって意味を与えられる。亜種白路はやり方がうまかった。
BRONZE-FROzenは11名で組織再編が行われた。
スカーニーはジョセフを呼んでこう伝えた。
「あまり表に出さないように。彼らの文化や習慣、宗教と尊厳に最大限敬意を払いたい。Mjustice-Law家のことはゆっくりでいい。まずは彼らの尊厳において成功体験を与えたい」
「それでは今まで通り対象が我々になってしまう」
「ジョセフ、Mjustice-Law家のことは誰も語れない」
ジョセフは察した。RICO法である。
確かフランスなんかにも似たような法律があった気がした、結社罪だったような気がする。
「ジョセフ!!いつもありがとう。ヴァージニアにもよろしく伝えておいてくれ。あとフライドポテトのことも」
ジョセフはふっと笑った。
「あれはお前のお嬢さんの命の源だから。困ったらこれからもいつでもチャーターするよ」
次回からの大会議にはBRONZE-FROzenも参加することになるが公式には分離しての会議開催が公表される。
「BRONZE-FROzenは三閉免疫症候群でなんとかできるはずだ」
監永と捜永がアーサーにそう電話している最中にも、すでに金融連邦が動き出しているというニュースが飛び込んできた。
「うちはみんな優秀だから!」
恵はことあるごとに言う。それは三閉免疫症候群だけでなく、世界中の亜種白路の被害者をも意味していることを早く伝えたいと目を輝かせる。
構図は定まった。あとはただ動くのみだ。
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