不思議な本屋さん

篠宮玲

不思議な本屋さん

その日私は不思議な本屋さんに出会った


その日、姫華ひめかはある事で悩んでいた


いつも通る空き地の前を通り過ぎようとした時、フッと顔を上げると、少し古びた本屋さんが目の前にあった


(あれ?ここって空き地だったよね?

いつから本屋さんが…?)


姫華は導かれるように本屋さんの中へと入っていった

「えっ?」

中は外見からは想像できないくらい、素敵な造りになっていた

例えるならば、海外にある大きな洋館みたいな感じだった

違うと言えば、壁全面に本があるということだろう


すると中から1人のおばあさんが出てきた

「おやおや、珍しい…お客様だね」


「こ…こんにちは。」

姫華が恐る恐る挨拶すると

「ふふふ、そんなに緊張しないで、ゆっくりしてね」

おばあさんが優しい笑顔で姫華に言った

「あ…あの、ここは…?」

姫華はおばあさんに話しかけると

「ここに来るのは、初めてかい?」

そう聞かれた


姫華はおばあさんの質問の意味がわからなかったが

「…はい」

とそう答えると

「ここは、あなたの悩みを1つだけ叶える事が出来る本がある」

とおばあさんが言った

「…えっ?」


「ただし!ただし!だ。この本の中の1冊に秘密のカギが隠されている。それをおまえさんが見つける事が出来たら…だね。ふふふ」

そういうとおばあさんは後ろを向き

「待って!」

姫華の声にも振り返らずに去っていった


「秘密のカギってなに?本の中にあるの?」

姫華が独り言を言っていると

「ねぇ?」

と誰かに話しかけられた

「えっ?」

姫華がびっくりして振り向くと


「…」

そこには、姫華が片思いをしているクラスメイトがいた

「えっ?えっ?一樹いつきくん?」

驚いた姫華が問いかけると

一樹?は何も答えなかったが

「君の名前は?何か探しているの?」

と聞かれた

「私は…姫華。えっと…カギを探していて…」

そういうと

「ああ…」

と納得したように一樹?は答えた

「姫華には悩みがあるんだね」

と、優しく問われると、姫華は下を向き

「えっと…(本人の前で言えないよね)そ、そうなの!ちょっと悩みがあって…」

そう答えながら顔を上げると

どこか探るような一樹?の瞳と目が合った


「ふ~ん…なるほどね」

一樹?は納得したのか

「じゃあ、頑張って探さないといけないね。オレも手伝うよ」

と言い一緒に探し始めた


「ねぇ、姫華の悩みオレが当てようか?」

一樹?が言うと

「えっ?」

「姫華は好きな人がいるんだろ?」

一樹?の言葉に姫華は

「な…なんで?知って…」

と驚いていると

「やっぱりな。そんな気がしただけ。オレも好きな人がいるから」

一樹がそういうとまた姫華は驚いたような顔をした

「あ…あの…」

「ん?」

「好きな人ってどんな人?」

姫華が問うと

「…秘密」

姫華を見つめながら、一樹?はそう答えた


しばらく2人で探していると

姫華がなにかに気づき、導かれるように一冊の本に手を伸ばした

すると、その瞬間眩い光に包まれて姫華は思わず目を閉じた



「…か…姫華、起きて!昼休み終わるよ!」

と…声が聞こえ、姫華が

「ん…」

目を覚ますと教室の机に突っ伏して寝ていたらしい

(えっ?夢?本屋は?)

「姫華?大丈夫?具合悪いの?」

姫華の顔を覗き込みながら、そう問いかけたのはクラスメイトで親友の結奈ゆなだった

姫華は慌てて

「ううん!全然!大丈夫だよ!」

「そう?なら良いけど…」

「うん!ありがとう!」

姫華がそういうと結奈は怪訝そうな顔をしながらも席へ戻って行った


(あの夢?に出てきたのは、一樹?くん…だよね…)

そう思って、斜め前の席にいる一樹の方を向いてみたけど、いつもと変わった様子はなかった


姫華は不思議な感覚のまま、その日の授業を終えると

帰りに、一樹に声をかけられた

「あの、姫華さん!」

突然の事にびっくりしていると

「オレの弟が姫華さんと話したいみたいなんだけど…ちょっと良いかな?」

と聞かれ

「は、はい。」

姫華がそう答えると

「良かった!行こう」

姫華が頷くと、一樹の後を付いて行った


しばらくして、近くの公園に着くと

「えっ?」

姫華は驚きを隠せないようだった

すると、一樹が

「紹介するよ。この人は、オレの双子の弟の辰樹たつき。」

すると、辰樹と呼ばれた少年が

「初めまして!…じゃないか、オレは一樹と双子の辰樹。よろしく!」

と手を差し出してきた

姫華が恐る恐る

「…よろしくお願いします…」

と辰樹の手を握り返し握手をする

「じゃ!オレ、行くわ!」

と一樹が手をひらひらさせながら帰って行った


しばしの沈黙のあと

「あの、、、一樹くんって双子だったんですね…知らなかった…」

姫華が言うと

「うん…クラスが違うからね。気づかなかった?」

辰樹が笑いながら言うと

「全然…です…」

姫華は消えそうな声で言う

すると、辰樹が

「いつも…通学途中とか校内で見かけてて…前にさ、体育祭の時に君に声をかけたことあったじゃん?」

と辰樹が言うと

少しの沈黙の後

「あっ!えっ?うそ…」

と姫華が思い出したようだった

つまり、姫華がずっと好きだった相手は一樹ではなく、最初から辰樹だったのだ

「ずっと、君のことが気になっていて、願いが叶う本っていうのに願ったんだ。君と話がしたいって…そしたら、不思議な本屋さんに出会って、そこで君と話が出来た」

そこまで話を聞いて、姫華は納得したようだった

(あぁ…だから、あの不思議な夢を…)

「オレ、君が好きだ。」

辰樹が姫華に告げると

「あの…私も好きです。」

と姫華も答えた


「良かった…」

と辰樹がホッとした笑顔を見せると

姫華も辰樹の手を握り笑顔で辰樹の顔を見つめるのだった

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不思議な本屋さん 篠宮玲 @sora-rei

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