さくら

@mn5001

3月1日

卒業式がおわった。




図書館で彼に電話をかけた。2年ぶり。




意外にも普通に出た。




「もしもし」




今日ね、卒業式だったんよ。




「あら、結衣が?」




うん。結衣が




「卒業おめでとう」




ありがとう。




「で?どしたん。」




いや...。




「ん?」




今ね、図書館にいるの。




「うん。」




図書館好きだったんだぁ。




「そっか。」




なんか、さみしい。




「さみしいなぁ」




ずっと子供でいたかった。




「うん。」




ずっと消えたかった。




「うん。」




なのに、なんとかなっちゃった。




「うん。」




卒業できちゃった。




「うん。」




こわい




「そうだなぁ。こわいな。」




うん。また電話してもいい?




「おう。いつでもいいぞ」




きみ、まだ童貞?




「電話きるよ?」




ごめんて。




「大丈夫。結衣はやさしいから。」




ありがと。




「おう。いつでも頼れよ。」




電話を切って、席を立ち、図書館を出た。








湿った木のにおいがする美術室。




獣臭がひどい生物化学室。




最後の一年を過ごした教室。




よく夕日を撮った廊下。








すべてをまわって靴箱を出た。








まだつぼみの桜の木の奥に、みんなが待っている。




私にはとまって、待っていてくれる友達がいる。




消えたいと思いながら、毎日過ごした三年。




「結衣!はやく写真とろう!みんな待ってるよ!」




まだ、生きてる価値はあるかもなぁと思いながら、




私は、三年過ごした学校の門を後にした。

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