キャリーケース

さっき昼寝した時に見た夢だ。


出かけ先から帰ってきって疲れ切った僕は

アパートのドアの鍵とチェーンを掛けるのを忘れてた。

僕一人など世間一般から言ったら不用心というところだろうか。

そのまま万年寝床に寝てしまった。


僕は夢の中でもうたた寝していた時に

玄関の方からガチャリと誰かが扉を軽く開けた音が聞こえた。

その後声が聞こえたがボソボソ小さい声だったせいか

相手が男か女か分からない。


僕は急いで確認しなきゃと思い起き上がろうとしたが

夢の中で僕の体が30kg入りの砂糖の袋のように重く起き上がれなかった。

体が動かないなら声を出そうと思ったがいつもの地声が低い大きな声は出ない

か細い相手にも聞こえないような声しか出せなかった。


家に入ってきた誰かがガサゴソと家のものを漁りながら

「うひひひ……。」と気持ち悪い笑い声が聞こえた。

ここでやっと入ってきた人間が男だと分かった。

でも聞き覚えは全くない、誰だろう?


その声が聞こえた途端、さっきまで重かった体が軽くなり

やっと起き上がることができた。僕は声が聞こえる

リビングに向かったがそこには誰もいない。

他の部屋も確認したが誰もいなかった。


家の中も荒らされた後もない、代わりに玄関前にカーキ色の7泊8日

できそうな大きなキャリーケースが置いてあった。

家に帰ってきた時はなかったのに。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る