うそつきワンルーム
悠山 優
現実逃避の日々から…
目が痒い…、鼻水が止まらない…
それに…この部屋すごい乾燥する…。
花粉が飛散する3月のこの季節。
とある田舎から3日前に上京してきた。
豪雪地帯でもあり、森林に囲まれた田舎だったのに花粉症なんて初めてだった。
嵐矢 沢労(あらや たくろう)
24歳男、独身。
光熱費込み、風呂トイレ共同、家賃4万
の小さなアパート2階の202号室。
他の5部屋はもう住人がいるらしいが…、
挨拶回りした方がいいんだろうか…。
…こんな目やにぼろぼろで鼻水ずるずるなのに?
もうちょっと収まってからにしよう…。
引っ越し荷物の片付けが終わったこの部屋は、本当に何も無いただの部屋。
1階には風呂場とシャワールーム、個室トイレが2つ。30分刻みで風呂は時間指定出来るらしい。
まだ会ってないけど…下駄箱に女性物のブーツがあったから住人の中に女性がいる…はず。
気分転換に散歩でもしようか…。
部屋の中にいるよりは良いかも…。
階段を降りて玄関を出る。
アパートの向かいに住宅兼店舗のような古びた本屋があった。
話しに聞いたがアパートの大家さんはここの本屋の経営もいているんだとか。
本屋入り口の暖簾をくぐる。
古い檜の匂いとお線香の匂い…。
実家を思い出す。
「へぇ…結構最近のやつも売ってるんだぁ」
少年ジャンプも今週号置いてるし、
ワンピースも103巻まであるな…。
狭い通路…、カニ歩きのように身体を細くする。
小説のコーナーにきた。
10代前半の頃から電撃文庫にハマってる。
でも学校ではオタク呼ばわりされるから話す友達もいなくて本当に1人の趣味の時間だった。
"表紙に女の子のイラスト=オタク"みたいな偏見があった。
「ゼロから…ゼロから、せ行…あった」
目当ての小説を見つけ本棚に手を伸ばすと、
白い華奢な手が隣から伸びてきて、
「「あ、ごめんなさい」」
手をひっこめて同時に謝った。
顔をあげたその人は俺と同い年くらいの可愛らしい女性だった。
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