切り捨てた女
梓 中学時代
勉強は嫌いじゃないけど好きでもない。だからそれなりにはやる。
運動は好き。特に走る事が好き。だから陸上部に入っているけど…大会に出るようなほどでもないし、出たい訳でもない。
人付き合いは苦手。友人は清香だけがいればいい。家には妹もいるから…それで十分でしょう?
部活中はずっと走っていた。走るのは好き。私は部活中にグラウンドを30週くらいしている。400mを30週だから…12kmくらい?邪魔にならないように大回りしているからもっとかもしれない。
走りながらぼんやりと他の生徒達を観察する。サッカー部は元気だね。大声を出しながら走り回るとか凄いと思う。
朝練とかは自由参加。大会に出る人が調整したりするから必要なんだろうけど、私には関係ないかな。早起きして部活に行くよりジョギングでもしていたほうが気が楽だ。
それほど真面目にやっていないから同じような感じで適当にやっている三島君とは帰るタイミングとかが重なる事が多かった。
「お、小森も上がるのか。一緒に帰らないか?」
「うん。いいよ」
三島君とは家が近い。別に幼なじみって訳じゃないけど、近所の顔見知りではある。別に一緒に帰るのを断る理由も無かったからタイミングが重なる時は一緒に帰っていた。
「そろそろ部活も終わりだな」
「そうね。これからは受験勉強とかしなきゃいけないから気が重い…」
近所にある高校を狙っている。片道1時間とか私には無理だ。清香もそこ狙いって言ってたし…一緒に行きたい。
「高校ね…近所にあるところでいいや。ちょっと厳しそうだけどな」
三島君も同じ高校を狙っているみたい。
「…陸上を頑張る気は無いの?」
「あ~…無理だな。適当にやれるところじゃないと続けられない気がする」
「足…速いのに」
「…変に期待されるのが苦痛なんだよ。走る事まで嫌になりそうだし…」
三島君なりに考えているのだろう。それなら私がどうこう言う必要は無い。
「そう。三島君の好きにすればいいと思う」
「ああ。適当にやるさ」
そんな感じでいつものように他愛ない会話をして帰った。三島君は私の友人…なのかな?それほど親しくはないけど、気楽に話せる相手ではある。
家に帰ると妹の飛鳥がもう帰っていた。飛鳥は科学部。といっても幽霊部員だから帰宅部みたいなものだ。
「ただいま」
「お帰りなさい」
飛鳥とは仲が良い…とは思う。私も飛鳥もあまり自己主張しないタイプ。家ではなんとなく一緒にいる時間が多かった。
両親は共働きなので母さんは19時くらいまで帰ってこない。父さんは20時。片道1時間かけて会社に行ってる。両親が帰ってくるまでなんとなく飛鳥と一緒に過ごすのが日課だ。
「お姉ちゃんに彼氏っているの?」
「いないよ」
「そっか。今日、告白されたんだけど…興味が湧かなかったから断ったんだ」
「そう」
飛鳥は可愛い。外見だけなら男子から人気がありそうだ。内面は私に似て興味がある事以外は無関心。清香からはそっくりだって言われたなぁ…
「恋人ね。今は興味無いかな」
「そっか。お姉ちゃん、人気あるんだけどね」
そう言われても…私にはよくわからない。
恋人か…作ってみたいとは思うけど、今は別にいいかな。
学校では部活中以外はいつも清香と一緒にいる。小学校からの友人。私が学校で孤立しないでいられるのは清香のおかげだと思う。
「飛鳥が告白されたんだって」
「飛鳥ちゃん…可愛いからね。梓と同じでクールな感じするから告白する勇気のある男は珍しいかも。それで、付き合うの?」
「興味が湧かなかったから断ったって」
「本当に…アンタ達は…」
「私は告白なんかされた事無いよ」
「されても断るでしょう?」
「うん」
「だから告白されないのよ…」
好きでもない相手と付き合うなんてできない。付き合いだしたら気を使うだろうし…
「まあ…高校に入ったら覚悟しときなさい」
「ん~…清香がいればいいかな」
「そう言ってくれるのは嬉しいけどさ…誤解を招きそうだから人前ではやめてね…」
「?」
「まあ、いいけど…」
そんな感じで中学生活は過ぎていく。部活も引退して受験勉強をする日々。ずっと清香と一緒だったけど…時々暴れ出す清香を宥めながら過ごす日々はとても楽しかったと思う。
私と清香は無事に第一志望である近くの高校に合格した。推薦枠はかなり少なかったので一般入試。三島君も合格したそうだ。陸上部でまた一緒かな。
飛鳥も私と同じ高校に入りたいって言ってた。近いもんね。
合格した後、何かから解放されたような清香と一緒に遊びに行ったりした。中学の最後の思い出。すぐに高校生活が始まるけど…不安はあまりなかった。
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