第16話 契約しちゃった……
◼
「まったく、初対面でここまで無礼を働いた者を妾は知らぬな」
少女の叱責を受けて美嗣は平伏する。彼女はいきなり服を脱がされたのに、全く動じる事なく裸体のまま石の上に座る。新緑の青さと淡い木漏れ日が、まるで絵画のように少女を映えさせていた。美嗣は頭を上げて少女の尊顔を拝謁した。
宝石のように五色に光る瞳。
小柄で華奢な体に、とんがり耳。
艶のある白い髪が腰まで伸び、光に当たると色が変化した。
着ていた服は
……
レイエル レベル100
所属 なし
誕生日 12月25日
恩恵レベル ◼◼◼
加護 ◼◼◼
……
すでにレベル100!どうなっているんだろう?恩恵レベルも見られないし。それと、この子の名前ってマーシャじゃなかったっけ?レイエル?もしかしてこっちが本名?
「えっと、お名前はレイエルっていうの?」
「何故、妾の真名を知っておる!」
「へっ、レイエルじゃないの?」
「その名で呼ぶでない!」
声を荒げる少女に美嗣はたじろいでしまう。彼女の剣幕にチビり『レイ』と呼称する事を提案する。少女は美嗣の案を承諾した。
……
武器 なし
礼装 なし
装備 なし
……
体力 58257
攻撃力 12258
防御力 9684
神力 534210
加護力 128.1%
耐性力 95.4%
蓄積率 189%
練度 128.6%
運 56.5%
……
通常攻撃 レベル1
スキル 慈仁の愛 レベル1
奥義 ◼◼◼ レベル◼
……
あれ?目がおかしくなったかな?
なんか全体的に数字が一桁多いんだけど……。
体力5万8千、攻撃力1万2千、防御力9千6百、
神力…………ごっ、ごごごっ、53万っっ!えっ?なにこれ!バグった?閲覧を使いながらパニクっている美嗣。
端から見れば一人で喚いているようにしか見えない。一度目を逸らして、再度確認する。やはり、全ての数字がぶっ壊れていた。もしや彼女はラスボスなのではないかと考察してしまう。
ゲーム内で彼女は仲間になておらず、章の終わりに主人公と会話をして、意味深な事を言って去ってしまう子であった。考察ニキが様々な考察をし、その美しい容姿からプレイアブル化を待ち望まれているキャラであった。美嗣も彼女の実装を心待ちにしていた一人である。
……
スキル 慈仁の愛
◼◼◼◼◼◼◼◼◼◼。
体力、攻撃力、防御力、神力を20%上げる。体力が10000以上ある場合は蓄積率+20%、攻撃力が1000以上ある場合は練度+20%、防御力が1000以上ある場合は耐性力+20%、神力が1000以上ある場合は加護力+20%。
体力、攻撃力、防御力、神力が上記以上ある場合は1につき【0.00001%】加算される。継続時間は10秒。
……
他キャラのスキル・奥義の参照に乗る時も数値は【0.00001%】を基準とする。
……
効果多っ!何これぶっ壊れバッファーじゃん!
4つの基礎力が上がるに加えて、蓄積率・練度・耐性力・加護力が上がるとは!いくつか読み取れない部分があるし、奥義に関しては見る事ができない。スキルしか使えないという事かな?
「それで?そなた達は追い剥ぎか?それとも強姦か?」
「ふぇっ!いやいや!違うよ!ああ、服は返します!」
少女に誤認させてしまい、美嗣はすぐに服を返したが、彼女はそれを着ようとはせず、足を組んで美嗣に問い質す。
「では、何故妾を探し求め不敬を働いたのか、答えてみよ」
少女は威厳のある言葉を発し、見下ろす目は無機質で感情が読み取れない。
「えーと、その……、レ、レイ……ちゃんをうちのパーティーに入れたくて!探していまして……」
美嗣はしどろもどろに少女を勧誘する。数秒の沈黙のあと、少女は裸のまま立ち上がり美嗣の目の前に立つ。
「そなたが妾の臣子となるのなら、そなたの一団に入ろう」
「臣子?臣下ってこと?なります!なります!あなたの下僕になります!」
何も考えず即答する美嗣。だってこんな可愛い娘の下僕になれるなんて、サイコーじゃない?踏みつけられても犬扱いされてもOKなんだけど!え、なんで引いているの?
少女は手を差し出し、美嗣にも手を伸ばさせた。掌を合わせると、淡い発光が二人を包む。
「これより、血の契約を行う。妾の3つの命を遵守することを誓うのだ」
「は、はい」
「一つ、あらゆる生物の命を尊び、無暗に命を奪わないこと」
「はい……」
「それが魔族、妖族、獣族、異形であってもだ」
美嗣は首を傾げた。要は魔族を乱獲するのはダメなのかと解釈した。
「二つ、妾が殺してはならぬといったものは殺さないこと」
「はい」
「三つ……」
少女は一呼吸置いた。美嗣の琥珀色の瞳を凝視し、最後の命を下す。
「エル ハタールス モル エロヒム」
ん、なんて?
急に謎言語で問い掛けられたので、美嗣は聞き返そうとしたが、彼女は『誓え』と強制してきた。美嗣が『はい』と答えると掌に痛みが走る。
二人が合わせている掌から血が流れ、それが混ざりあって生き物のように動き、少女と美嗣の首に絡み付いた。縄のような模様をつくり肌に染み込んだそれは、刺青として二人の首を被う。
「契約は成立した。これよりは【レイ】としてそなたに追従しよう」
美嗣は惚けた顔で『はい』と答えた。
完全に彼女に心を掌握された美嗣は、武器や礼装の事など頭になかった。けど、レイのために服屋に寄って下着を買おうとは考えていた。脱がせて気付いたが、彼女はノーパンだった。
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レベル2、完。よろしければ、♥、☆やフォローをいただけると大変喜びます。よろしくお願いします!
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